日本語書き下ろしの聖書注解書刊行に向け シンポ「新約聖書学と現代の宣教」開催

2015年3月23日20時58分 記者 : 新庄れい麻 印刷
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「NTJ新約聖書注解」の監修者たちによる公開シンポジウム「新約聖書学と現代の宣教」の様子=13日、日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)で

「NTJ新約聖書注解」の監修者たちによる公開シンポジウム「新約聖書学と現代の宣教」が13日、日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)で開かれた。「NTJ新約聖書注解」は、「VTJ旧約聖書注解」と併せて、日本キリスト教団出版局から2017年に刊行開始が予定されている、日本語で書き下ろされた旧新約聖書の注解書シリーズだ。

「NTJ新約聖書注解」の監修者たちはこれまで、新約聖書学と現代の宣教に距離があるのではないかという問題提起と、その距離を何とかして埋めたいという願いのもと、聖書学と教会現場がどのようにして連帯できるのかを考える共同研究を、信濃町教会の助けを得て進めてきた。

シンポジウムは、監修者たちの発題に、教会の牧師たちが応答する形で議論が深められた。第1セッションでは、辻学氏(広島大学教授)の「歴史的批判的研究の宣教的な展開」に対して、李明生氏(日本福音ルーテル三鷹教会牧師)が、第2セッションでは伊東寿泰氏(立命館大学教授)の「物語批評と宣教―説教におけるキャラクタースタディを中心に」に対して、平野克己氏(日本基督教団代田教会牧師)が、第3セッションでは中野実氏(東京神学大学教授)の「正典は教会にとって今どんな意味を持っているかー正典批評から」に対して、高市和久氏(日本バプテスト連盟市川八幡キリスト教会牧師)が応答した。

第1セッションでは、近代に入ってから発達した聖書解釈である歴史的・批判的研究(聖書の言葉を、人間の営みである歴史の一部として捉える方法)について話が展開された。

聖書の恣意的な解釈から遠ざかり、理性によって検証するというこの研究方法は、キリスト教信仰を持っていない人たちと共通の基盤に立って聖書について語ることを可能とする。また、聖書に書かれている言葉を「理解したい」という気持ちで誠実に取り組み、イエス・キリストと聖書記者の意図への接近を重要視するこの方法は、教会的伝統が持つ解釈に批判の目を向け、特定の解釈への警鐘を鳴らすことにつながるという。

第2セッションでは、歴史的・批判的研究に対して、文学批評的研究(聖書、例えば各福音書を、一つの統合された物語として文学的に読む方法)が取り上げられた。

主要英語圏では盛んに行われているこの研究方法だが、日本での認知度は非常に低いという。歴史的・批判的研究では剥ぎ取られてしまう聖書の登場人物たちのさまざまな特徴を、この研究方法では総合化して解き明かしていく。生きた言葉である聖書を物語として読むことが、特に教会における説教に用いられることによって、「イエスと同時代に生きた人々よりも福音書を読む私たちの方が、『主をもっと完全に知る可能性を享受できる』」という。

第3セッションでは、古典中の古典である聖書が「キリスト教会の正典」であるという点にあらためて注目し、聖書正典成立史を振り返った。その歴史の中では、現代の諸信条(使徒信条など)の先駆的な「信仰の規範」が、簡潔な信仰の枠組みとして教会で語られてきたことが分かる。この規範が、初期キリスト教文書の内容の正当性を判断する一つの基準になったようで、新約聖書が正典として完成していく過程に大きく貢献したと考えられるという。

「聖書のみ」という立場を取るプロテスタント釈義家にとって、この「信仰規範」と聖書の関係は、簡単には乗り越えられない壁であり、これからの正典批評研究への課題としての提言がなされた。

司会を務めた須藤伊知郎氏(西南学院大学教授)によると、最初から日本語で書かれた学問的注解書は一部分のものはすでに存在するが、新旧約聖書全巻そろったものは実はまだないという。「NTJ新約聖書注解」の監修を務める中堅の新約聖書学者6人は、教会の宣教に役立つ聖書学を目指しており、教会の現場からもメッセージを発してほしいと願っているという。

2017年刊行に向けて働きが進められている「VTJ旧約聖書注解」「NTJ新約聖書注解」の詳細は、日本キリスト教団出版局の特設ページで公開されている。

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