WCCのチャン・サン議長、菅官房長官と会見

2014年8月4日21時27分 記者 : 行本尚史 印刷
+WCCのチャン・サン議長、菅官房長官と会見
4日に首相官邸で会見した世界教会協議会(WCC)のチャン・サン議長(左)と菅義偉官房長官(右)(写真:西原廉太撮影)

世界教会協議会(WCC)議長団の一人であるチャン・サン牧師・博士は4日午後2時5分、「核から解放された世界に向けて」「日本国憲法第9条の再解釈について」というWCC中央委員会の2つの声明文を携えて、首相官邸で菅義偉官房長官と会見した。会見は報道関係者に非公開で行われた。以下は、この会見に同席したWCC中央委員の西原廉太氏による報告を、本人の許諾を得て転載したもの。

本日、8月4日、WCCチャン・サン議長は、首相官邸を訪れ、菅義偉・内閣官房長官と面会し、去る7月にWCC中央委員会で採択された、「核から解放された世界に向けて」「日本国憲法第9条の再解釈について」の2声明を携え、菅官房長官に直接手渡し、世界約5億人のキリスト者を代表してその語るところを伝えた。首相官邸を訪問したのは、チャン・サンWCC議長の他、西原廉太・WCC中央委員、加藤誠・日本基督教団幹事、上田博子・前NCC総幹事代行事務取扱、そして今回の面会のアレンジの労をとってくださった、庭野平和財団の野口陽一氏の5名であった。午後2時5分から面会が始まり、名刺交換の後、チャン議長がしっかりと菅官房長官に両声明を手渡し、まずは、チャン・サン議長が、両声明の要旨を中心に加藤先生の通訳を介しながら、約15分間、WCCから日本政府へのメッセージを伝えた。

 【チャン・サン議長の発言】

WCCのチャン・サン議長、菅官房長官と会見

140カ国以上にわたる世界約5億人のキリスト者を代表して、官房長官と面会できましたことを光栄に覚えます。本日、私たちは、この7月に世界教会協議会(WCC)中央委員会で採択された2つの声明を携えてまいりました。一つは、声明「核から解放された世界に向けて」で、昨年11月に韓国、釜山で開催された世界大会から生み出されたものです。

この声明の中で、私たちは、北東アジアで生じた核の悲劇による重大な犠牲について記しています。私たちは、いわゆる「ヒバクシャ」と核実験の犠牲者たちからの、「二度と再び」という叫びを忘れることはできません。私たちは、すべての人間は、いのちを危険にさらすのではなく、いのちを守るために生きることを、求められていると確信するものです。私たちは、核兵器は、真の平和とはまったく相容れないものであることを宣言します。

宗教的指導者としての私たちの直近の関心は、津波の被害、もしくは、放射線の影響により、住み慣れた地域からの離脱を余儀なくされた、何万もの人々の健康と生活に注がれています。ことに、日本のキリスト教諸教会が、福島第一原発の悲劇による約37万人の被災者を支援してきたことは、特筆されるべきことです。それは、海外のWCC加盟諸教会の働きによっても支援されてきました。

声明は、世界の諸教会に対して、日本のキリスト教諸教会によるさらなる復興支援の働きを支援するよう、呼びかけています。私たちはまた、日本政府に対して、被災したすべての地域における人々の健康をより確実に守ると共に、すべての原子力発電所を段階的に廃止するよう、求めたいと思います。

WCC中央委員会からの2つ目の文書は、「日本国憲法第9条の再解釈についての声明」です。

この中で、世界教会協議会は、日本政府が、憲法第9条の、文言と精神の双方を誇り、尊ぶことを求めています。私たちがこの声明を採択したのは、日本の人々が、憲法第9条を強力に支持しているからであると共に、東アジア諸国においても、憲法第9条に対する深い感謝の思いがあるからでもあります。

WCCのチャン・サン議長、菅官房長官と会見

憲法第9条についての声明は、平和を愛する国としての、戦後の日本のイメージは、世界における日本の外交的資産であると記しています。声明はまた、現代社会に対する日本の数多くの非軍事的貢献が、この地球上の隅々にまで高く評価されてきたことを指摘しています。

WCCは、日本のキリスト教諸教会の倫理的誠実さとスピリチュアルな強さを認め、また感謝するものです。私たちは、WCCという世界大の交わりの中に、日本のキリスト教諸教会が与えられていることを誇りに思います。日本の教会は、少数者ではありますが、日本の人々に光と希望を灯す燈台として、日本社会における重大な諸課題に対してメッセージを発する存在であると確信しています。それゆえ、WCCは、これからも、正義と平和をめぐる諸課題について、日本のキリスト教諸教会、ならびに、日本の人々と、密接に協働してまいります。

私たちは、引き続き、日本の人々、ならびに日本政府のために祈ります。また、日本の指導者の方々が、世界の平和を推進してくださるよう期待しております。本日は、お忙しい中、私たちのためにお時間をお取りくださり、誠にありがとうございました。

これに対して、菅官房長官も以下のように応答した。

 【菅官房長官の応答要旨】

 ありがとうございました。お話の通り、日本は唯一の被爆国として、核の問題については責任を持って取り組んでまいりました。福島の状況に対しても、WCCをはじめ日本の教会の皆さんが、さまざまにご支援くださっていることに大変感謝を申し上げたいと思います。憲法9条についてですが、集団的自衛権をあくまでも限定的に行使するということでありまして、先日の閣議決定の重要な点は、あくまでも、憲法第9条の枠内で、平和主義の枠内で、ということです。世界のどこにおいても集団的自衛権は認められているものであり、またこの間、世界の情勢は大きく変わりました。国際化が進むと同時に、国家間の安全保障の問題は厳しくなりました。どこの国においても政府の重要な役割というのは、まずは国民の生活を守ることにあります。日本から海外に出て生活している人々も多くなりました。そのようなところからも、憲法9条の枠内で、集団的自衛権を限定的に考えるということになったのです。日本の世界の平和に対する思いは、まったく変わっておりません。戦後の自由と民主主義を尊ぶという思いは、変わっていません。そのことをぜひご理解いただければと思います。本日は、お越しいただきありがとうございました。

予定では面会時間は10分ということであったが、結局、倍の約20分間、面会は続いた。

菅官房長官の応答は、これまでの政府見解と変わることのないものであったが、日本のキリスト者の声も含まれた、世界のキリスト者の声が、このようにして、実質的に日本政府のナンバー2である官房長官に、直接届けられたことは歴史的なことであり、測り知れない意味を持つものである。世界約5億のキリスト者の目が、日本政府のこれからの動きに注意深く向けられていることを、少なくとも菅官房長官が明確に認識したことは、きわめて重大なことであった。オラフ・トヴェイトWCC総幹事の緊急入院により、残念ながらすべての訪日スケジュールは延期されたが、今回、チャン・サンWCC議長により、首相官邸訪問が予定通り実現できたことは感謝であった。関係諸氏のご尽力に、心より感謝申し上げたい。

(写真:西原廉太撮影)

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