ビリー・グラハム:福音派の理想像 リチャード・D・ランド博士

2014年1月12日08時46分 印刷
+リチャード・D・ランド
リチャード・D・ランド博士(絵:ロッド・アンダーソン=クリスチャンポスト・イラストレーター)

ビリー・グラハムは、20世紀で最も、そしておそらく過去千年間で最も、有名かつ影響力のあるキリスト教伝道師だ。

特に福音派キリスト教徒にとっては、グラハムは多かれ少なかれ自分達のアイデンティティを形作っている尊敬し愛すべき存在だ。グラハムはまさに今も昔も「福音派」の原型である。

1920〜30年代の根本主義(ファンダメンタリズム)対近代主義の対立において、神学的に保守派の人々は敗者となり、彼らの多くが文化的な拠り所を失い、不安を抱えたまま、頑なな姿勢を貫き、ますます世俗化していく世界との接点を失くして行った。そんな中1940年代後半に彗星のごとく現れたのが、ビリー・グラハムだった。卓越した能力、完璧なテレビ映り、溢れるカリスマ性を備えながら、根本的でありつつ妥協を許さない福音を伝えるグラハムは、世俗的な世の中との新しい関わり方を求めるアメリカ福音派の公の顔となるに最適だった。活動を開始して10年以内に、グラハムはアメリカ史上最も人気のある伝道師となっただけでなく、歴代大統領への助言を行うなど、国際的にも有名な人物となる。

その一方、彼に対しては、主流派のプロテスタントのみならず、根本主義者からの批判もある。20世紀のほぼ全体を通し、少なくともアメリカ国内のプロテスタントにとって、いわゆる根本主義の存在は大きかった。根本主義では基本的に以下の5つの信条を掲げている。1)聖書の無誤謬性、2)イエスの処女降誕、3)代償的贖罪としてのイエスの十字架上の死、4)イエスの身体の復活、5)イエスの文字通りの再臨と死者も含めた全人類の審判。

福音派も根本主義者も共にこれらの信条を大事にするが、主流派のプロテスタントはこれらの信条の1つ以上に対して疑問を抱いている場合も多い。一方で福音派と根本主義者の間の違いも存在し、その違いは教会の内外においてこれらの信条にどう向き合うかという点に関するものだ。福音派が自分達と意見の異なる者との関わり合いを積極的に求めるのに対し、根本主義者は「妥協」を避けて教義的な純粋性を重んじ、自分達だけの社会に閉じこもる傾向にある。今日でもおそらく福音派と根本主義者を見分ける一番手っ取り早い方法は、ビリー・グラハムをどう思うかと尋ねてみることだ。グラハムが好きなら福音派、嫌いなら根本主義者だ。

少なくとも4世代に渡る福音派の牧師達がグラハムを自分達のお手本としてきた。グラハムの多大な成功、彼の聖書に対する妥協を許さない姿勢と尊敬すべき人間性のおかげで、おおっぴらに聖書を語る福音派伝道師が、アメリカ社会において再び「尊敬すべき」存在と見なされるようになった。根本主義対近代主義の対立以来の流れを変えたのである。福音派の中でビリー・グラハムに匹敵するような功績のある人物は見当たらない。

またアメリカ人全体を見ても、グラハム程の称賛を長きに渡り維持している人物もほとんどいないだろう。普通の人間がこれ程長い期間ヒーローとして崇拝されれば、悪影響を受けるものだ。その点でもグラハムの謙虚さは全くもって偉大という他ない。グラハムを個人的に知る者は誰も、「何故私なのでしょう?」と彼が心から神に問うていることを疑わない。

もっと個人的な話をすれば、私自身ビリー・グラハムには多くの恩がある。何よりもまず、彼の宣教活動のおかげで、私は敬虔なクリスチャンである父に育てられることができたのだ。私の父は元々教会に行かない人間であったのだが、1950年代初め、テキサス州ヒューストンでのグラハムのクルーセイド(伝道大会)のおかげで、新生クリスチャンとなった。私は当時6才だったが、グラハムが父に「前に出てイエス様に心を捧げなさい」と話してくれたことがきっかけで、私はクリスチャンホームでクリスチャンの父と母に囲まれて成長することができたのである。そのような贈り物にどのようにお礼をしたらよいのだろうか。私に出来ることはせいぜい、世界中の何千万というクリスチャンと共に「本当にありがとう、ビリー!」と言うことだけだ。

リチャード・D・ランド(Richard D. Land)

1946年生まれ。米プロテスタント最大教派の南部バプテスト連盟(Southern Baptist Convention)の倫理および宗教の自由委員会(Ethics & Religious Liberty Commission)委員長を1988年から2013年まで務める。米連邦政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF=United States Commission on International Religious Freedom)の委員に2001年、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領から任命され、以後約10年にわたって同委員を務めた。2007年には、客員教授を務めている南部バプテスト神学校がリチャード・ランド文化参加センター(Richard Land Center for Cultural Engagement)を設立。この他、全米放送のラジオ番組「Richard Land Live!」のホストとして2002年から2012年まで出演した。現在、米南部福音主義神学校(Southern Evangelical Seminary)校長、米クリスチャンポスト紙編集長。

※この記事はクリスチャンポストの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。一部、加筆・省略など、変更している部分があります。

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