インドの首都デリーは、約3200万人が暮らす世界屈指の大都市だ。街には貧富の格差と社会的階層の壁が色濃く残る。インド憲法はカースト差別を禁じているが、特に都市周辺のスラムや下層階級の人々の間では、依然として差別と貧困が根強い。そうした中で、誰も注目しない一台のスクールバスと一台のリクシャ(オート三輪タクシー)から、小さな弟子づくりのムーブメントが広がっている。
ミナは読み書きもできない最下層出身のスクールバス運転手だった。だが、聖書の物語を聞き、バイブルスタディーに参加するうちに、イエスを救い主として受け入れた。彼女の大胆な信仰は、デリー各地で10〜15人の女性からなる弟子訓練チームへと広がっていった。
ある日、ミナはカイという女性に出会う。カイは薬物依存と売春の中で破滅的な生活を送っていた。薬物の影響から彼女の夫婦関係は崩壊し、子どもたちとも引き離されていたのだ。ミナは数カ月にわたりカイと神の言葉を分かち合い続けた。すると、カイは聖書を学びながら少しずつ変えられていったのだ。
やがてカイは薬物を絶ち、売春をやめ、イエスに従う者となった。今では彼女自身が家の教会を導き、ミナの弟子づくりチームの一員として、同じように傷ついた人々に福音を宣べ伝えている。
ミナはまた、新しい生活の基盤を支援するため、カイにリクシャを購入。女性専用タクシーサービスを始めるのを手伝った。今、カイはそのリクシャで女性客を乗せながら、日々の出会いを通して福音を伝えている。車内は、ただの交通手段ではなく、神の愛と証しが分かち合われる場所となっているのだ。
インドでは、識字率の低さや女性への暴力、宗教的迫害が宣教を難しくしている。それでも、こうした小さな証しと弟子づくりの動きが、都市の片隅から国全体へと広がりつつある。デリーでは、イエスを見つけた下層階級の女性たちが、自らの弱さと過去の傷を通して、他者の心に届く福音の証人となっている。
デリーの路地裏で、スクールバスとリクシャから始まったこの小さな働きを覚え祈ろう。ミナとカイ、彼女たちのチームが聖霊に導かれ、より多くの人々に主の愛を届け続けられるよう、また社会に見捨てられた女性たちの生活の基盤が支えられ、福音によって新しい人生を歩み、多くの人々の証しとして用いられるように祈っていただきたい。
■ インドの宗教人口
ヒンズー 74・3%
プロテスタント 3・6%
カトリック 1・6%
英国教会 0・2%
イスラム 14・3%
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