聖書や信仰に関する「前例のない」規模の意識調査の結果が4月30日、発表された。それによると、世界の多くの地域では依然として、宗教が人々の日常生活において重要な役割を果たしており、多くの人々が、神や「高次の力」の存在を信じていることが明らかになった。
調査は、英国聖書協会と聖書協会世界連盟が、世論調査大手の米ギャラップ社に依頼して、2023年から24年にかけて実施。対象者は85カ国・地域の成人(15歳以上)9万1千人余りに及び、電話や対面、オンラインで、聖書や信仰に関する見解について詳しく尋ねた。
このプロジェクトは、使徒ヨハネが流刑され、そこで新約聖書の「ヨハネの黙示録」を書いたとされるエーゲ海の小島、パトモス島にちなみ、「パトモス・イニシアティブ」(英語)と名付けられた。ヨハネの黙示録は、当時の主要な7つの教会に宛てた書簡の形式で書かれており、調査では、世界を7つの「クラスター」(宣教的文脈)に分類し、結果を分析している。
例えば、クラスター1は、「聖書との関わりに対し経済や他の障壁があり、リソースの少ない少数派のキリスト教徒を抱える、イスラム教徒が多数派の地域」とされ、アフリカのサヘル地帯の国々やパキスタンなどが該当する。対照的に、クラスター2は、「日常生活における宗教の重要度が低く、世俗的な少数派が増加し、多数派だったキリスト教徒が減少している地域」とされ、ロシアや東欧諸国が該当する。
米国や西欧諸国はクラスター5に分類され、「聖書を学ぶことへの関心が低く、キリスト教人口が低下している世俗的な文脈の地域」とされる。日本や中国、インドを含むアジアの多くの国々はクラスター6で、「聖書に対する意識が低く、キリスト教徒が少数派の多様な宗教的文脈の地域」とされる。
調査結果によると、7つのクラスターのうち5つのクラスターで、ほとんどの人が宗教は日常生活にとって重要だと回答。また、全てのクラスターで、過半数の人が神や「高次の力」を信じている。
その一方で、世界の一部の地域では、聖書とキリスト教に関して人々が持つ知識が、依然として驚くほど乏しいことも明らかになった。
アジアの一部の地域、特に東南アジアとインドでは、4人に3人が聖書について全く知らないと回答。このような地域では、半数以上が聖書の存在すら知らず、クラスター6全体では56%が聖書について耳にしたことがないと答えた。
また、世界のキリスト教徒の4分の1以上が、自身が理解できる言語で書かれた聖書を持っていないことも明らかになった。
一方、キリスト教徒であるかないかにかかわらず、多くの人が、子どもたちが聖書の物語を知ることを支持していることも明らかになった。実に全回答者の3分の2以上(70%)が、そのことに賛意を示した。
また、非キリスト教徒の10人に1人(11%)が聖書についてもっと知りたいと思っていることも分かった。これは、そのような人が世界に2億5千万人もいることを意味する。
キリスト教徒の聖書使用率は、イスラム教徒が多数派を占め、キリスト教徒が少数派の国々で最も高く、逆に世俗的な欧米で最も低い結果となった。
悲しいことに、世界のキリスト教徒の3分の1近くが、聖書と自身の間に個人的な関係があるとは考えていないことも明らかになった。この傾向は、特に欧米で顕著となっている。また、聖書を毎週読んでいると答えたキリスト教徒は、全体の半数以下(42%)だった。
パトモス・イニシアティブのプロジェクトリーダーを務めるリチャード・パウニー氏は、次のように述べている。
「このデータは、世界的な宗教の衰退に関する多くの一般的な物語を覆すものです。(中略)私たちが調査した7つの世界的な文脈のうち5つでは、大多数の人が依然として宗教を日常生活の重要な一部と考えています」
聖書協会世界連盟のディルク・ジュベール総主事は、次のように話している。
「パトモス・イニシアティブの調査結果は、人々が聖書とどのように関わっているのかについて、これまでで最も正確かつ包括的な様相を提示してくれています。この調査結果は、世界中のキリスト教徒を励まし、行動を促すものです」
「私たちの願いは、パトモス・イニシアティブが、聖書の利用と有意義な聖書との関わりを促進するために、新たで広範なコミットメントを喚起することです」