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小菊時計

小菊時計(4)帰っておいで 星野ひかり

2022年9月15日11時55分 コラムニスト : 星野ひかり
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小菊時計 星野ひかり+

「私がお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、彼らを悪しき者から守ってくださることです。わたしが世のものでないように、彼らも世のものではありません。真理によって彼らを聖別してください。あなたのみことばは真理です」(ヨハネ17:15〜)

最後の晩餐といわれている、過ぎ越しの祭りの食事のあと、主イエスは弟子たちのためにとりなしの祈りをささげてくださいました。私たちはみことばによって守られ、この世と切り分けられた寄留者です。

私たちの父祖アブラハムも、最後まで約束の地を手にすることなく、寄留者としてこの世の人生を閉じましたが、寄留の地で神様に祭壇を築き、神様を拝し、世と己を切り分けて、聖別した道を歩みました。そして、神様と顔と顔を合わせて話したといいます。神様に ‘友’ と呼ばれるほどに、神様と親しい人であったといいます。

この世と聖別する。それはクリスチャンの人生で大きな挑戦であり、簡単なことではないでしょう。私たちはこの悪しき舌を、この悪しき目を聖別し、悪しき耳を、悪しき手を、悪しきこの肢体の一つ一つを御霊で満たし、神様にささげるものとしたいと願いながらも、懲りずに罪を犯してはうなだれて、また神様に力づけていただきながら歩んでいます。

「あなたがたのからだを、神に喜ばれる、生きた、聖なる供え物としてささげなさい。それが、あなたがたのなすべき霊的な礼拝である」(ローマ12:1)

私の肢体の一つ一つは、神様に喜ばれることのない悪しきもののとりこでありました。目はより見るに麗しいものに注がれ、舌は悪を行うのに一番早く、肢体は不義にささげられ、快楽や欲情のとりこでありました。

私は幼い頃に信仰を告白し、イエス様を心から受け入れました。それは小学校5年生の子どもキャンプの時でした。牧師先生の話を聞き、涙を流して罪を悲しみ、イエス様への信仰を告白したのです。

そうでありながら、この肢体の一つ一つを聖別し、神様にささげ続けることはできなかったのです。私の目はこの世の麗しいものに注がれ、耳は悪口やうわさ話を好み、口は罪の道具となりました。そして、大きく口を開けた黄泉(よみ)の深みに足を踏み入れ、その足は罪の深みに溺れました。

それでは、今はできていると言えるのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。この肉体は弱いものでした。イエス様は弟子たちの弱さを憐(あわ)れまれ、諭されました。「誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」(マタイ26:41)と。

私は悲しくなるほどに弱い者であります。私の仕事である介護施設の夜勤職でも、睡魔や疲れ故に、利用者さんに優しさを尽くし続けることは難しく、この罪の肉体の弱さに直面し、悲しくなるばかりでした。

今は朝の5時、夜勤もあと2時間で早番の職員さんに交代です。しかしその前に、利用者さんたちを起こして服を着替えさせ、トイレの介助をして、朝食のご飯を炊かなければなりません。

7時までにこのグループホームの利用者さんたち9人の身支度を整えてリビングに集めることは、重労働でありました。寝たきりの方もおり、私は抱き上げながら服を着がえさせ、車いすに乗せて靴下を履かせながら、情けないほどにいら立っておりました。

なんとか7時までに全員をリビングに集められ、朝のお茶を出し、寝ぐせのついた髪の毛をくしでとかしてあげていると、早番の職員さんがやってきました。申し送りを済ませれば、ようやく家に帰れます。

車に乗り込むと、エンジンをかける手が止まりました。へとへとで力が出ず、私はシートにもたれて自分の弱さに打ちひしがれました。できもしないことを無理に自分に課している気がしていました。でも仕方ありません。私にはお金も必要ですし、この仕事を選んだのですから。

日は昇っておりましたが、幸い大きな木が枝葉を広げて日陰を作ってくれており、私はそのままうつらうつらとし始めました。まぶたの裏に、小菊の花びらの散りばめられた、それは大きな小菊時計が浮かび上がってゆきました。

ゆっくりと針はさかのぼり、私を夢の中にいざなうようです。しかし、それは夢ではありませんでした。確かにこの足で歩いた私の過去が、めくるめくように眼前に開けていったのです。こんなにうちひしがれながら働くなんて、考えもしなかった頃でした。体の求めるままに喜びだけを追求していた日々でした。

*

私は夜遊びのさなかに知り合った女の子のマンションに転がり込んで暮らしておりました。彼女はいろいろな薬にとても詳しく、宝石箱の中にたくさんの種類の薬を大切にしまっておりました。それを私に分けてくれ、一緒にハイテンションになったりしながら面白おかしい毎日を暮らし続けていたのです。

彼女の実家は裕福らしく、美術の専門学校に在籍している彼女に毎月十分なお金を送ってくれているといいました。当の彼女は学校の授業に出ることなどなく、夜遊びとクスリ遊びに興じていたのです。

私たちは毎日いろいろな薬を試しては異常に楽しく、真っ暗な部屋の中、灰皿の上でティッシュを1枚1枚燃やしては、それがあっという間に赤く燃え、炎が浮かんでは消えてゆくのを見て目を輝かせました。また、服のままでお風呂場に入り、水のシャワーを掛け合ってはしゃぎました。また、一晩中繰り返し、いろいろなメイクをしてはポラロイドカメラで写真を取り合って、それを部屋に飾って満足しました。

不思議とおなかが空かないので、ご飯は1日1度きり、決まって牛丼屋さんで牛丼を買って帰り、「こんなおいしいものがこの世にあるとは」と驚きながら食べました。いつも部屋には楽しい外国の音楽が流れており、その音楽の調べに乗って、暮らし自体がリズムに揺られ、踊っているようでした。

細い体を2つ横たえるには、シングルベッドで十分でした。彼女はよく私の頬に口づけをし、「ずっと一緒だよ。トモダチだよ」と言って、私にしがみつくように眠りました。ずっとこんな暮らしを続けていたいと思いました。しかし、タイムリミットはもう間近に迫っているような気もしていて、背中が汗ばむように心地が悪かったのです。

目を覚まして、回らない頭であたりを見渡した私の目に映ったのは、真っ赤なものがポツンポツンと滴っている床でした。目を上げると、椅子に座ってカミソリを手首に当てている彼女がいました。

私は飛び起き、彼女の手からカミソリを奪いました。「どうしてこんなこと」。彼女の目から涙がぽろぽろと流れており、「寂しい」そう彼女の唇は言っていました。「大丈夫、私がいる」。私はそう言って、彼女の頬を伝う涙をぬぐいました。

「本当?ずっと一緒にいてくれる? 死ぬまでずっと、私のそばにいてくれる?」私は何度も首を縦に振りました。これが友情だと思っていました。私たちはどこかしら、お互い悲しく、行く当てもなく、わが物顔で夜の都会を闊歩(かっぽ)したところで、自分の居場所などどこにもなかったのです。いいえ、本当は聞こえていました。

「帰っておいで」
「帰っておいで」

私を探し求める父母の声、教会で祈っているであろう牧師先生、兄弟姉妹の声、そして、天のお父様の声。でも私は全く聞かないふりをしていたのです。

「あの人たちが見て見ぬふりをしている世界に私はいるんだ。この世がこんなに悲しく寂しい所なのに、どうしてあんな所に帰られようか」。私は彼女を抱きしめて、「ずっと一緒だよ」とささやきました。

そして今夜もとびっきり着飾って、夜の街に繰り出します。濃いアイメイクにつけまつげ、赤いリップを施し、今宵にふさわしいドレスを着ると、世界は一瞬にして私たちにひれ伏します。私たちは手をつなぎ、夜のネオンの中に消えてゆくのです。そこは泡のような幻の世界。朝になったら消えてしまう、泡のような夜の世界に。

*

太陽が空を昇り、車の中にまぶしい光が差し込んできてわれに返りました。私はおっくうに身を起こし、エンジンをかけました。私には帰る家がありました。そして天のお父様の家である教会もあります。

この国にはどれだけ、家のない子がいることでしょうか。見た目には立派な家に住んでいても、家のない思いで生きている子どもがあふれているのがこの国です。

「帰っておいで」

空いっぱいに、天の父の声が聞こえるようでありました。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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