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エチオピアのキリスト者から支援求める悲痛な声、アムネスティが大量虐殺を報告

2021年3月13日16時29分 記者 : 井手北斗
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関連タグ:エチオピアエチオピア正教会エリトリア
エチオピアのキリスト者から支援求める悲痛な声、アムネスティが大量虐殺を報告+
エチオピア北部ティグレ州の紛争を逃れ国境を渡ってスーダンに避難してきたエチオピア人難民(写真:国連難民高等弁務官事務所=UNHCR / Hazim Elhag)

人口の95パーセントをキリスト教徒が占めるエチオピア北部ティグレ州で紛争が続く中、隣国のエリトリア軍が、同州の住民を大量虐殺していることを示す証言や証拠が相次いでいる。

アムネスティが報告書「アクスムの虐殺」

国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は2月26日、虐殺の生存者や目撃者ら41人の証言と、大量の遺体を埋めた形跡を撮影した衛星写真などをまとめた報告書「アクスムの虐殺」(英語)を発表した。報告書によると、エリトリア軍は昨年11月28日から29日にかけて、州中部の都市アクスムを制圧後、銃を乱射したり、家々を襲撃したりするなどして、非武装の民間人数百人を組織的に殺害。国際法上の犯罪である「人道に対する罪」に相当する可能性のある大量虐殺を行ったという。

アムネスティは、スーダン東部に最近到着したエチオピア難民との対面インタビューのほか、アクスムの住民に電話でインタビューを行い、生存者や目撃者ら41人から証言を収集。さらに、事件を知る他の20人からも話を聞いた。これらの証言は一貫して、昨年11月中旬に紛争が始まって以降、超法規的な処刑や無差別砲撃、広範囲にわたる略奪があったことを示すものだった。証拠として挙げられた衛星写真は、無差別砲撃と大量略奪を裏付けるものであり、アクスムにある2つの教会近くで大量埋葬が行われた痕跡なども示している。

アムネスティの東南部アフリカ部長であるデプローズ・ムチェナ氏は、アクスムで発生した惨事について次のように語る。

「証拠は説得力があり、冷ややかな結論を示しています。エチオピアとエリトリアの軍は、アクスムを制圧するための攻撃において複数の戦争犯罪を犯しました。それ以上に、エリトリア軍は大暴れし、組織的に何百人もの民間人を冷酷に殺害したのです。この残虐行為は、この紛争でこれまでに記録された最悪のものの一つとなるでしょう。死者数の急増に加え、アクスムの住民は、暴力、追悼、大量埋葬の中で集団的なトラウマの日々に突き落とされました」

大量虐殺は、アクスムの「シオンの聖マリア教会」で11月30日に行われるエチオピア正教の年に一度の祭典の直前に行われた。

エチオピア公共放送は大量虐殺を否定

これに対しエチオピア公共放送(EBC)は今月10日の報道(英語)で、アムネスティの報告書とそれに伴う各国メディアの報道は非現実的だと否定。大量虐殺は、ティグレ州政府を率いる旧与党勢力ティグレ人民解放戦線(TPLF)のプロパガンダだとし、虐殺があったとされるアクスムの教会で行事が行われた様子や、現地のキリスト教徒へのインタビューなどを放映。虐殺があったとするなら、その直後に子どもを連れて教会に行く人々がいるだろうかと伝えた。

ティグレ州の紛争は、昨年8月に予定されていた総選挙の扱いをめぐり、TPLFとエチオピアの現政府との間で勃発。エチオピア政府がエリトリアに援軍を要請したことで、エリトリア軍が同州内に展開しているとみられるが、エリトリア軍の介入はエチオピア、エリトリアの両政府とも否定している。

ティグレ州現地からの声

ティグレ州の牧師は2月上旬、迫害下のキリスト教徒を支援する「殉教者の声・韓国」(VOMK)を通して現地の様子を語っていた。この牧師は、迫害のためエリトリアから逃れてきたキリスト教徒を長年支援する働きをしている。

牧師は、インターネットや銀行が機能せず、最近まで停電が続いていたと言い、「多くのお年寄りや子どもたちが飢えて死んでいます。私の教会では、子ども一人が亡くなりました。戦争により、若い女性たちが軍から性的な被害を受けており、多くの建物が破壊されています。私の町から10キロ離れた所では、まだ戦闘が続いています」と伝えていた。

現地の状況について、VOMKのヒョンスク・フォーリー理事は次のように述べている。

「エリトリアは、キリスト教徒や政治的反体制派に対する激しい迫害のため、長い間『アフリカの北朝鮮』と呼ばれてきました。私たちは何年もの間、この牧師と協力して、国境を越えてエチオピア北部のティグレ州に絶え間なく流出してくる大規模なエリトリア人キリスト教徒に、トラウマのカウンセリングや霊的・身体的ケアを提供してきました。しかし今、そのティグレ州から難民が出ている状態です。多くの人々が逃げ出し、国連とエチオピアの援助機関がこの地域にある多くのエリトリア難民キャンプのうち2つのキャンプへのアクセスを遮断する中、この牧師と彼の教会は、教会を唯一の助けとして頼りにしているエリトリア人キリスト教徒を心配し現地にとどまっています」

ティグレ州出身の在米エチオピア外交・安全保障専門家であるアレマエフ・ウェルデマリアム氏は1月中旬、ツイッター(英語)に、同州にあるカトリック・アディグラト司教区のテスファセラシエ・メドヒン司教の声明を投稿した。メドヒン司教は声明で、同州が人道の危機に陥っており、食料や基本的な救命用医薬品、水などが底を尽いた状態にあり、避難所や銀行、電話、インターネット、交通、医療などへのアクセスも絶たれていると訴え、「皆さんが祈るとき、どうか私たちのことを覚えてください」と求めている。

関連タグ:エチオピアエチオピア正教会エリトリア
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