第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」

2019年12月30日11時05分 執筆者 : 田頭真一 印刷
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最終日の朝礼拝で「驚くべき召し、へりくだった応答」と題してメッセージする韓国の梨花(イファ)女子大学医学部チャプレンであるムン・ヨンチョイ牧師

アジアキリスト教病院協会(ACHA)の第24回年次総会(11月14~16日)最終日の朝礼拝は、韓国の梨花(イファ)女子大学医学部チャプレンのムン・ヨンチョイ牧師がメッセージを取り次いだ。ムン氏は、エレミヤ書1章4~8節に記されたエレミヤの神の召しに対する献身から、「驚くべき召し、へりくだった応答」と題して語られた。歴史に刻まれ、今にまで至っているアジアにおける医療宣教は、驚くべき神の召しであり、へりくだった神のしもべたちの応答の実である。礼拝では、北米から韓国に渡ってきた医療宣教師ロゼッタ・ホール女史の働きが動画で紹介され、韓国における医学教育の先駆者の一人として尊い働きをされたことを覚えることができた。

礼拝の後すぐに、総会2つ目のシンポジウムが始まった。テーマは「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」。前半の司会は筆者が仰せつかった。最初のセッションは、筆者が理事長を務めさせていただいている沖縄のオリブ山病院と中国の貴港市人民病院との姉妹提携で、コーディネートをしてくださったシンガポールのジョシュア・タン牧師。彼は、バプテスト・グローバル・レスポンス(BGR)による災害救援と復興の働きに加え、シンガポール、中国、インドの神学校で国際開発と宣教戦略の講師として働きをしている。今回は、シンポジウムのテーマに沿って、「神の国としてのコミュニティー開発と宣教戦略」というテーマで発題した。特に地域社会を自立に導くリーダーシップを、実例をもって説明した。

第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
総会2つ目のシンポジウム「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」前半で司会を仰せつかった筆者(右)
第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
シンポジウム最初のセッションで発題するシンガポールのジョシュア・タン牧師

タン氏は、私たちは聖書を通して、貧しい者に仕えることの大切さを教えられていると述べ、現代においても1億1千万の人々が慢性的に飢え、毎年100万人の子どもたちが低栄養で亡くなっていることを語った。そして具体的な働きとして、神の国を建設するために、援助と地域開発を一体として進め、教育や技術移転が行われていることを紹介した。その中で、カンボジアやインド、フィリピンといった国々では、常に「BMW」が支援先の家庭にあることを戦略的に目指していると語った。BMWとは、自動車メーカーの名前ではなく、「Beans and Vegetables(食料)、Medical Care(医療)、Clean Drinking Water(飲料水)」を意味する。タン氏は、こうした献身的な働きを続けるとき、社会的、霊的影響を与えることができ、社会が変革され、霊的な変革が起こると強調。一粒の麦から多くの実を結ぶ(ヨハネ12:24)ことになると語った。

続くセッションでは、本総会のホスト役となったバンコクキリスト教病院の医務部長であるパンサク・ウィティワロパー医師が発題した。アジアのキリスト教病院は近年、これまでになく多くのチャレンジに直面している。しかし、多くの宣教師によって人々の健康のために始められた各キリスト教病院は、その献身的働きを、世代を継いで今日まで継続できており、祝福されている。ウィティワロパー氏は、今問われているのは、急変する社会において、厳しい競争の中、イエス・キリストにある信仰、希望、愛を担いつつ、どう生き残り、発展するかということだと語った。

第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
2つ目のセッションで発題するバンコクキリスト教病院のパンサク・ウィティワロパー医務部長

クリスチャンの医療リーダーたちは、世の光、地の塩として、この世が天の父をあがめるようになるための病院の働きを導かなければならない。ウィティワロパー氏は、イエス・キリストのリーダーシップに倣い、7つのCが必要だと語った。Calling(召し)、Competence(能力)、Conficence(確信)、Character(人格)、Collaboration(協同)、Coaching(コーチング)、Caring(配慮)である。そして何よりも大切なのは、イエス・キリストに倣う仕えるしもべとしての指導者の在り方(Servant Leadership)である。

私たちキリスト教病院のビジョンは、イエス・キリストの愛を表す卓越した医療福祉サービスの提供である。最善の治療、キリスト中心、そして温かいケアの提供である。ウィティワロパー氏は、タイキリスト教会の7つの病院、教育機関、そしてアジア各国のキリスト教病院と協力して、これからも最善の医療を提供し、福音を分かち合う働きを行っていくと語られた。最後には、たとえ困難があったとしても、バンコクキリスト教病院を過去70年間にわたり導かれたように、これからも主は恵みによって導いてくださると力を込めた。

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3つ目のセッションで発題する韓国の延世大学医療宣教センター長であるパク・チンヨン氏

シンポジウム後半最初のセッションでは、韓国の延世大学医療宣教センター長で、医師であり、牧師でもあるパク・チンヨン氏が、宣教地における医学教育を通して将来のリーダーを育てる働きを紹介した。まず、延世大学という韓国でも屈指の大学に医療宣教センターがあることが驚きである。そこでは「人を育てる」ことと「共同作業」の2つが大きな柱となっている。まず、延世医学校初代学長の名前を冠し1993年に始まった「アビソン国際フェローシップ」というプログラムは、これまでに22カ国から259人の研修生を受け入れ、母国から韓国までの旅費や月給を研修生に支払い、サポートしてきた。さらに2014年からは、アジア・キリスト教高等教育機関連合理事会(United Board for Christian Higher Education in Asia=UBCHEA)との協力で、毎年10人の研修留学生を10の発展途上国から受け入れているという。それはまさに、アビソン宣教師の足跡に従う100人の人々を育てることを主眼にしている。さらに過去10年間に韓国の70人以上の医学生、歯学生、看護学生を医療宣教地に派遣するコースを開設している。他にも、米国長老教会から発展途上国の医学教育のために教科書を送る働きに携わっている。これらはすべて、現地のリーダーを育てるための働きである。

第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
最後のセッションで発題する嘉義(かぎ)基督教医院(台湾)のヤオ・ウェイジェン院長

最後のセッションは、嘉義(チャイ)基督教医院(台湾)のヤオ・ウェイジェン院長による発題だった。将来、病院がいかに大きく変わろうとも、私たちはそれに対応することが必要である。そこでは、さらに患者中心の全人的ケアが求められる。これから何が必要とされるのかを理解し、人々に仕える熱意を持ち、組織を変える役割を担い、人々を動かし鼓舞することができ、効率的かつ良質な組織を運営することが必要である。そして、キリスト教病院のリーダーは、仕えるリーダーであり、また人々を力づける人間性が必要である。私たちは、世界を変えるために将来のクリスチャン医療リーダーを育て備える必要がある。ヤオ氏はそう力強く語り、最後はアブラハム・リンカーンの言葉、「将来を予測する最善の方法は、それを築き上げることである」で締めくくった。

第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
閉会礼拝でメッセージを伝える衣笠病院チャプレンの大野高志牧師

すべてのプログラムが、横須賀の衣笠病院チャプレン、大野高志牧師による閉会礼拝によって幕を閉じた。「私たちの弱さが結ぶ天国の実」と題したメッセージで、大野氏は、人々の弱さと関わるチャプレンが、自分自身の弱さを受け入れることの大切さを分かち合うことについて語られた。私たちの弱さを通して、病の中にいる人々に寄り添うことができる。これこそ私たちがこの世に対してもたらすことのできる変革であり、パラダイムシフトである。私たちは、誰も一人では生きることができないという当然の事実を分かち合うことが、私たちのこの世に対する使命であり課題に他ならない、と伝えられた。

第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
バンコクキリスト教病院の入り口で歓迎してくれた若手看護師たち。クリスチャンの看護師の場合、ナースキャップには Christian を表すCのマークが縫い付けられている。

総会の後、オプションとしてホスト病院であるバンコクキリスト教病院を訪問した。1949年に米国長老教会の医療宣教師によって始められ、今年70周年を迎える。その医療宣教の働きに、仏教徒であるタイ国王も協力し、病院の建物が建てられ、今に至っている。「ほほ笑みの国」といわれるように、心からの歓迎をしてくださった。職員のクリスチャン率は1割ほどしかないが、毎朝7時からの職員礼拝には院長をはじめ病院のリーダーたちが集い、キリスト教主義による全人医療の働きの土台としている。また、クリスチャン看護師のナースキャップには Christian を表すCの文字が縫い付けられており、クリスチャンとしての働きの大切さを表していた。見学の後、心を込めたあいさつを受け、これからの発展と協力を祈りつつ、来年の台湾での再会を皆心待ちにし、帰路に就いた。(終わり)

第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
バンコクキリスト教病院のチョウサク・ボングスリ院長(右)とパンサク・ウィティワロパー医務部長(左)に導かれ、歓迎を受ける淀川キリスト教病院の渡辺直也院長
第24回アジアキリスト教病院協会総会(4)「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」
バンコクキリスト教病院の入り口付近の様子。創立70周年を記念する大きな垂れ幕が掲げられていた。

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田頭真一

田頭真一(たがみ・しんいち)

1958年沖縄生まれ。関西学院大学神学部、聖書神学舎卒業。米国のフラー神学校、バイオラ大学タルボット神学校、神学大学院基金を通して英国のオックスフォード大学、また日本の国立保健医療科学院に学ぶ。教育学博士、心理学博士、名誉神学博士。日本(大阪、沖縄)の教会、米国(ロサンゼルス、ポートランド)の日系人教会を牧会し、米国、インドネシアの神学校で教鞭を執る。現在、社会医療法人葦の会オリブ山病院理事長、読谷バプテスト伝道所牧師、沖縄聖書神学校教授(宣教学、スピリチュアルケア)、神学大学院基金客員教授。著書に『天国で神様に会う前に済ませておくとよい8つのこと』(東邦出版)、『全人医療とスピリチュアルケア:聖書に基づくキリスト教主義的理論とアプローチの手引き』(オリブ山病院)などがある。

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