Skip to main content
2021年1月27日18時09分更新
Go to homepage
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
神学書を読む

神学書を読む(53)公民権運動は果たして成功したのか?(下)【挑戦】 『ヒップホップ・レザレクション』

2019年10月25日18時11分 記者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:アメリカ青木保憲

本書『ヒップホップ・レザレクション ラップ・ミュージックとキリスト教』は、神学書としても歴史書としても読むべき価値があることは、前2回の記事から分かることだろう。最後に、著者・山下壮起氏からの【挑戦】として、本書を読むことができることを強調しておきたい。それは、第4章第2節「ヒップホップの福音(ゴスペル)」にさりげなく(?)挿入されている次の文章から始まる。

教会における音楽が聖なる音楽、宗教音楽とされ、それ以外の音楽が世俗音楽とされるのは、教会とその外の世界という二元論に立つ価値観が支配的であることを示している。そして、ブルースやヒップホップに宗教的表現が見られること、アフリカ系アメリカ人の若者が救いや実存について問う空間としての機能をそれらが有していることは、宗教性を教会の内だけに限定して考えるべきでないことを表している。(190ページ、下線は筆者による)

これはかなり挑戦的である。同時に、ここに記されていることの本質によって引き起こされた数多くの出来事を私たちは知っている。例えば、「教会の内」を「カトリックの内」と言い換えるなら、これは「宗教改革」を生み出した源流といえよう。19世紀末に聖書の中身をめぐる争いがあったとき、「聖書は聖書で解釈する」というテーゼに対して異を唱えた者たちは「教会の内」を「聖書の内」と言い換え、リベラル神学を生み出した。「教会の内」を「既存教派の内」と読み替えることで、どれほど多くの教派・教団が生み出されてきたことか。

そういった意味で、山下氏がここで訴える【挑戦】は、西洋的キリスト教のみならず、日本のキリスト教界全体、そして保守的な信仰を誇示する福音主義的キリスト教への「問題提起」的な意味合いを持つものである。

山下氏によると、ヒップホップとは、「生への徹底した正直」によって現実を描き出しながら神と対話する方法ということになる。そうなると、私たちが外的に受け止め、自らを正す働きとしての教義や教理というものは後方へ押しやられ、自分たちが現状に対して何を感じ、どう行動したいか、という観点から(自らの意志で)神を見上げることが奨励されることになる。

確かに「リベラル神学」とは、「下からの神学」といわれるように、私たちのリアルな感性と理性を土台として打ち立てられる。一方、福音主義神学に代表される聖書の直解主義、教条主義は、私たちの感覚は信頼できず、むしろ歪んでさえいるため、「正しい教え」が私たちの外部から与えられることで立ち上がれる、と考える。いわゆる「上からの神学」である。

黒人教会を例に取るなら、彼らは奴隷時代の「見えざる教会」の頃には、自分たちの感覚(苦しみ・悲しみ)に基づき、それを開放し、昇華させるために、独自の文化的背景と整合するように白人が伝える「キリスト教」を享受していった。つまり「下から」彼らはキリスト信仰を受け入れたのである。

しかし、不当な苦しみを是正する手段(公民権運動)を見いだしたことで、彼らの一部は米国キリスト教界の一角を社会的な意味においても担う存在となっていった。しかもその変化を生み出したのは、自らが受け入れた「聖なるもの」、つまり既存のキリスト教的教えや聖書的真理に恭順することであった。ややこしい表現となるが、「下から『上からの神学』を受け入れた」のである。

だが、ヒップホップ世代はそうではない。彼らが生まれた時代、彼らにとっては、「初めから『上からの神学』しかなかった」のである。しかも歴史的に見るなら、上から押し付けてくる世代は裕福になり、体制側の言動を繰り返している。一方、自分たちは親世代と同様、不当な抑圧と貧困に苦しめられている。しかも公民権運動以降、「不当な」という形容詞を使えなくさせられてしまった。だから彼らは「上からの神学」に反抗し、自らが求めるものを「下から」見いだそうともがき、ヒップホップにたどり着いたのであろう。

この構図は、決して太平洋の向こう側の特殊な事例ではない。日本の、特に福音派のキリスト教会では、世代間の乖離(かいり)が問題視されて久しい。特に教会から若者がいなくなりつつある傾向は、どの教会でも同じであるといわれている。

その主な要因は、教会で生まれ育った若者が、親たちから信仰を継承しないことにあるとされている。では彼らは宗教的な欲求がないのか? そうではない。彼らと親世代との違いは、まさに「下から『上からの神学』を受けれた」か、それとも「初めから『上からの神学』しかなかった」か、である。

そういった意味で、本書は、現代日本のキリスト教界へ問題提起を喚起する書である。山下氏もまた牧師を生業としていることからするなら、彼は米国の宗教事情ということで、識者へ問題を提起し、同時にキリスト教界、そして(私や山下氏自身を含めた)教会指導者たちに【挑戦】を投げ掛けていると捉えることができるだろう。

山下氏はこの【挑戦】を積極的にこう語る。

ヒップホップをとおして示される実存的な問いかけは、教会の保持してきた固定的な教義の枠組みや思想を超克する可能性を秘めていると考えられる。教会でなければ救いがないのか。教会の内と外という二元論を超えて、救いを語ることができるとき、教会は大きく変わることができるはずである。(199~200ページ)

本書は、米国宗教史における前提を新たにする一冊である。特に公民権運動でフィナーレを迎えたかのような気分に浸っていた者たちに、冷や水を浴びせ掛けるような良書である。同時に、教会における次世代教育、信仰継承、若者伝道などに悩みや苦しみを抱えている人たちにこそ、本書を手に取り読み進めてもらいたいと願う。

本書でいう「ヒップホップ世代」とは、おそらく日本においては、「ジェネレーションZ」(1990年後半~2010年に生まれた世代)に該当するのであろう。彼らのことを知りたい、学びたいと願う者にとっては、必須の一冊といえるだろう。(終わり)

■ 山下壮起著『ヒップホップ・レザレクション ラップ・ミュージックとキリスト教』(新教出版社、2019年7月)

<<(中)【衝撃・その2】へ     次回へ>>

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。グレース宣教会研修牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

関連タグ:アメリカ青木保憲
  • ツイート
▼関連記事を見る  ▼クリスチャントゥデイからのお願い

関連記事

  • 神学書を読む(43)『はじめてのアメリカ音楽史』に見る、米国音楽の底流に流れるキリスト教

  • 神学書を読む(50)『ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から』

  • 神学書を読む(42)『ふしぎなキリスト教』の著者2人による新著『アメリカ』

  • 神学書を読む(39)『千年王国を夢見た革命』『ピルグリム・ファーザーズという神話』

  • 神学書を読む(45)神学的世界観の脱構築と再構築のために 『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』(上下巻)

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

新型コロナウイルス特集ページ

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • バイデン氏の大統領就任、米国のキリスト教指導者5人の反応

  • 福音「が」語れる映画(2)「ソウルフル・ワールド」

  • 核兵器は「存在自体が絶対悪」 日本の宗教者が核禁条約発効で声明、鷲尾副外相と面談

  • 世界はわが教区―ジョン・ウェスレーの生涯(9)失意のどん底に

  • 誘拐された30代のカトリック神父、遺体で発見 ナイジェリア

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(2)イエス様の愛はどんな愛?②

  • エチオピア北部紛争、教会で750人殺害 NGOが報告

  • 日本から遠く離れた地の日本人伝道最前線 駐在員家族120人に福音伝える英語教室

  • バイデン新大統領誕生、聖書の詩篇を引用し「米国の結束」呼び掛ける就任演説

  • 改宗禁止条例、インド各州で相次いで施行 迫害監視団体が危惧

  • バイデン氏の大統領就任、米国のキリスト教指導者5人の反応

  • 日本から遠く離れた地の日本人伝道最前線 駐在員家族120人に福音伝える英語教室

  • バイデン新大統領誕生、聖書の詩篇を引用し「米国の結束」呼び掛ける就任演説

  • 誘拐された30代のカトリック神父、遺体で発見 ナイジェリア

  • 改宗禁止条例、インド各州で相次いで施行 迫害監視団体が危惧

  • エチオピア北部紛争、教会で750人殺害 NGOが報告

  • 米国の大統領交代、トランプ氏の功績とは?

  • 映画「聖なる犯罪者」に見るヨーロッパ的「救い」の危うさ

  • 「海外宣教」と「ラディカル・リベラリズム神学」 第23回断食祈祷聖会2日目

  • 核兵器は「存在自体が絶対悪」 日本の宗教者が核禁条約発効で声明、鷲尾副外相と面談

  • バイデン新大統領誕生、聖書の詩篇を引用し「米国の結束」呼び掛ける就任演説

  • 米下院で「父」や「母」などの単語使用不可に フランクリン・グラハム氏「神の権威否定する」と批判

  • バイデン氏の大統領就任、米国のキリスト教指導者5人の反応

  • トランプ氏続投と「誤って預言した」 ジェレマイア・ジョンソン氏が謝罪

  • 群馬県太田市の教会クラスター、感染者78人に 県内最大規模

  • 群馬県内の教会でクラスター発生 40人が感染

  • 映画「聖なる犯罪者」に見るヨーロッパ的「救い」の危うさ

  • トランプ支持者が米議会占拠 米キリスト教指導者らが相次ぎ批判、祈り呼び掛け

  • コロナと自殺、必要なのは「絆」の再形成 精神科医の山中正雄牧師

  • 米国の大統領交代、トランプ氏の功績とは?

編集部のお勧め

  • 「開拓伝道は失われた人々への憐れみの心」 第23回断食祈祷聖会1日目

  • クリスチャン画家の山田桂子さんが姫路市美術展に入選 日米でアートミニストリー展開

  • コロナと自殺、必要なのは「絆」の再形成 精神科医の山中正雄牧師

  • 「聖書通読、回重ねるごとに喜びがある」 『1年で聖書を読破する。』の鈴木崇巨牧師

  • 「母は中絶を拒否した」 アンドレア・ボチェッリの証し

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 論説委員・編集部
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 問い合わせ・アクセス
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • Twitter
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2021 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.