世界自転車旅行記(17)タスマニア 木下滋雄

2016年1月6日14時03分 コラムニスト : 木下滋雄 印刷
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世界自転車旅行記(17)タスマニア 木下滋雄

50カ国以上走ったうち、一番良かった所はどこかとよく聞かれるが、どこもそれぞれ良かったので答えるのは難しい。でも、住んでみたい所はというと、オーストラリアの南に浮かぶ島、タスマニアだ。

北海道より少し小さいこの島に初めて行ったのは27年前、3度目のオーストラリアに大陸横断をしようと行ったときだった。この時はどこかでピッキングでもできたらいいかなと思ってワーキングホリデーのビザを持ち、シドニーからメルボルンへ来てちょっと寄り道してみようと島に渡った。

北側のローンセストンという町に降り立って時計回りに走り始めてみると、ほとんど平らだった本土と比べ、山だらけの島は走りにくいが、東海岸の風景は特にきれいだ。町並みは、この島はイギリスの流刑地として入植が始まったため、その頃のものが残っている所もあり、後に行ったイギリスでは、その雰囲気を良く似せていると思った。

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刑務所の町だったポートアーサー

途中で野宿した場所で知り合った、南部にある州都ホバートの近くに住む人の家に寄せてもらったりもした。

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紅葉に見えたが実は山火事の後。原生樹は紅葉しないそうだ。
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夕陽を浴びる枯れ木

島の西側は地勢が変わり、山と森が続く。その中にある川と湖が美しい。ゴードンリバーという川でのクルーズは、鏡のような水面を船で進んで行くとても素晴らしいものだった。

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クルーズをしたゴードンリバー
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事務所近くの入り江の風景

島に着いて走り出す前、ちょうどイースターで教会に行き、建築事務所で働いているという人と知り合いになったのだが、島を一周した後、その方の事務所で図面を描く仕事を手伝わせてもらうことにした。

ここでの2カ月間の生活はとても思い出深い体験となった。事務所にドイツからの移民の方がいたが、彼が言うには、オーストラリアが平らな本土だけだったら住まなかったろうが、ここには四季も山もあるので住むことにしたと言っていたが、僕もそうしたいと思ったものだ。

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建築事務所にいたとき、2カ月ぶりの雨は洪水となった。

その土地に昨年3人の子どもたちと走りに行くことにした。島の北のローンセストンにあった事務所のそばには、共同経営者の一人、レズさんが、もう一人のクリスさんは引退して、島の南州都ホバートの近くにいる。最短距離で走れば200キロくらいだが、とてもきれいな東海岸を走っていくことにした。

ローンセストンの空港には3月21日朝に到着し、レズさんが迎えに来てくれた。午後に街の中をレズさんも一緒に走ってみたが、27年ぶりの街はあまり変わっていない。当時の建築事務所の建物も色が変わっているだけで同じ、住んでいた家もそのままだった。

翌日の日曜日は、レズさんが設計した教会に礼拝に行った。レズさんは僕と別れた後キリストを信じた。その知らせを受けたときはとてもうれしかった。

事務所にいたときに、この辺りの典型的な家はどんな感じかとレズさんに聞いたことがある。その時、典型的などというものはない、建物はその土地や住む人のことを考えて設計するのだから、全部違うのだと言われた。教会の建物はそんなレズさんらしい個性的なものだった。

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事務所のボスの一人レズさん設計の教会での礼拝風景

午後は北岸にあるレズさんの別荘へ。途中娘さんに会った。当時小学生だった子は2児の母になっていた。海岸の砂浜は水が薄い膜となっていて、鏡のようできれいだった。夜散歩に行くと、ワラビーやウォンバットが見られた。

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北側の海岸にて

天気予報ではこの後ずっと雨ばかりと気がめいる予報。翌日は自転車で出発する予定だが、予報通り雨。おまけにローンセストンに戻る途中、レズさんの車が故障してしまった。こんな時にもレズさんは、トラブルも楽しもうという感じで、とても気持ちがいい。遅れてしまったので、予定よりずっと遠く峠の上までレズさんは車で送ってくれた。

その日は30キロほど走って山小屋のようなホテルへ。山の上はもう寒く、暖炉には火が入っていた。

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山の上の湖での朝日

天気予報に反して翌日から2日間は晴れて、気持ちが良かった。山を下りて東海岸へ。27年前はスルーしてしまったフレイシネット国立公園へ向かう。子どもたちが公園の上で遊覧飛行をしたいというので、ちょっと奮発。泊まりはキャンプ場のキャビン。飛行機から見た公園の中も歩いてみる。オーストラリアはどこへ行っても海がきれいだ。日没に着いた街で見た夕焼けは、とても美しかった。

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子どもたちと東海岸で
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子どもたちの走行風景

日本では夕焼けのきれいな次の日は晴れというのが普通だが、ここではそうはいかない。天気予報通り雨。ここまでは観光地なので宿の予約をしていたが、この日は宿を予約していない。着いた所で泊まればいいと思い、雨がやんだのでゆっくり出発。一台の自転車の調子が悪くペースが上がらない。それでも日没に宿のある町に着いたのだが、宿はいっぱいだった。

テントか、せめてシュラフがあれば泊まれるが、今回は持って来ていない。雨が降り出して暗くなる中、峠を越えて36キロ先の次の町へ仕方なく走ることにした。

幸い雨は止み、町に着き、お店が閉まる10分前に滑り込み、夕食を確保した。しかしホテルが見つからないか、あっても満室。さらに10キロ先の空港のモーテルまで、結局この日は120キロも走って、夜中11時半にやっと安住の地に。こんな大変な目に遭わせてしまったのに、子どもたちは文句一つ言わず、逆にがんばろうと声を掛け合っていたのはうれしかった。

翌朝はまた雨。クリスさんに連絡したら、車で迎えに来てくれるという。そういう訳で、全行程は360キロと大した距離を走らずに自転車旅行は終了。トレーラーに自転車を乗せて、リッチモンドという、この国が流刑時代であったときからの町を観光して、クリスさんの家へ。事務所にいた昔、夫妻とは教会に一緒に行った。奥さんのバーバラさんにもとても良くしていただいたので懐かしい。

ここでは子どもたちのリクエストで、森の木々の上を歩けるエアウォークという所へ。タスマニア西部は原始の森が残っているが、数十メートルの高さのあるその木々の上の方を見て歩くことができる。

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エアウォーク

たくさん自然の残るこの島を1週間ではとても物足りないが、僕の人生で濃密な2カ月を過ごした人たちに、子どもたちと自転車旅行で再会できたことは、とても感謝なことだった。

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木下滋雄

木下滋雄(きのした・しげお)

1964年横浜生まれ。フォト・サイクリスト。高校時代に自転車旅行と写真を開始し、30歳で五大陸走破を達成。これまでに60カ国延べ6万3千キロを走破している。現在はパラグライダーも楽しむ。ぺトラ建築設計一級建築士事務所主宰。

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