Skip to main content
2025年9月5日11時41分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
神学書を読む

神学書を読む(38)ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』

2018年10月15日19時07分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:青木保憲
神学書を読む(38)ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』+
ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』(文藝春秋、2015年)

お金の話で申し訳ない。「神学書」コーナーの対極にあるようなテーマの本を紹介することをお許し願いたい。しかし、実際に教会を運営していく上で「お金の問題」は決して軽く扱えない。しかし一方で、どうしても宗教と下世話なお金の話は相いれない。

特にキリスト教は、清貧の思想が中世以来がっちりとキリスト教徒の心をつかんでしまっている。マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を発表し、経済活動と宗教性は決して相反するものではないことを示したにもかかわらず、現代に至るまでお金の話はキリスト教会では半ばタブー視されている。特に保守的なキリスト教界ではその傾向が強い。

本書『帳簿の世界史』は、そんなお金の話の底流に「キリスト教」が見え隠れする。「帳簿」という概念でキリスト教世界、つまりヨーロッパ世界(加えてアメリカ合衆国)の2千年間が描写されている。

世界史や日本史を専門としていなくても、例えば「ルネサンス」や「フランス革命」、そして「米国独立戦争」のことは聞いたことがあるだろう。本書はこれらの出来事が引き起こされた要因の一つに、「収支報告(帳簿)の正確さの有無」があると訴える。

序章「ルイ十六世はなぜ断頭台へ送られたのか」という刺激的なタイトルに始まり、ヨーロッパ世界に君臨した各国(スペイン、オランダ、フランス、英国)の隆盛を、「帳簿」という視点から面白く描いている。

面白かったのは、中世からルネサンスに至る過程で、商人たちは会計の必要性を強く感じつつも、お金を扱う仕事に対して信仰的な劣等感を抱いていた、というくだりである。彼らは自分の犯した罪を「支出」、社会や他者への善行を「収入」と捉え、会計帳簿同様に「心の帳簿」を神の前につけていたのである。(54~56ページ)

こういった「収支発想」が免罪符を生み出したのだ、と筆者は喝破(かっぱ)している。

大方のキリスト教徒にとって、善行と悔悛に加えてキリストの血の代償によって罪を帳消しにでき、死後に煉獄であまり苦しまずに済むという教えは、会計の概念と接した初めての経験だったと言えるだろう。心の会計の借方と貸方と差引残高は、救済を得るために欠かせない。(57ページ)

もし本当にそうだとすると、後に引き起こされる「宗教改革」も神学的な相違や支配体制の質的相違のみに帰せられるものではなく、会計概念の誤った浸透が改革の土壌を生み出したとも捉えることができるだろう。教皇に代表されるカトリック教会一極集中支配体制から、国家という概念が生み出され、おのおのの立場が確立する過程において、富の優劣が生まれてくることは必然である。そうであるならなおのこと、「帳簿」作成の意義をどれだけ国王や貴族たちが理解していたかが問われることになる。本書はこの一点を鋭く突いているといえよう。

「心の帳簿」とは、本来は当時の信仰者たちの誠実さを表す言葉であった。しかし同時に、国王や貴族たちが行ってきた一連の不正に対し、「自分の帳簿は神にのみ開示すればよい」という言い訳を許容する考え方としても用いられた。彼らは自身の資産を公開せず、収支報告を粉飾したり二重帳簿を作成したりすることが日常茶飯事であった。(3~5章参照)

全13章から成る本書から分かることは、「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」(334ページ)ということ。これは言い換えるなら、会計報告や収支決算をないがしろにする組織や国家は、いっときは良いように見えても、必ず弱体化するということである。

これは栄枯盛衰を繰り返す現代社会における会社や組織のみならず、キリスト教界においても同様である。だが、このことになかなか牧師や教会関係者は目を開こうとしないように思われる。

原則として「宗教法人」である以上、会計報告を教会員に開示する義務がある。しかし、これをきちんとしていない教会が多くあると聞く。確かに開拓教会(少人数で、法人資格を取得しないで開始したばかりの集団)では、このような手続きは不要であろう。しかし、人数が増えてくるに従って予算や収支結果を公開することは、本書を読むまでもなく必要なことだと分かるはずだ。

2千年間にわたり、西洋社会を良い意味でも悪い意味でも支配し、統御してきた「キリスト教」が、時としてこのような対外的な視点(帳簿作成の有無)に晒されることは必要なことだろう。教会の役員や牧師たちがこぞって本書を読み、いろいろとディスカッションする機会があるなら、本書は大いに役立つ一冊だといえるだろう。

巻末に「帳簿の日本史」が加えられているが、こちらも大変参考になったことを付け加えておきたい。

■ ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』(文藝春秋、2015年)

<<前回へ     次回へ>>

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:青木保憲
  • ツイート

関連記事

  • 「21世紀日本宣教」を熱く語る 後藤牧人氏、8年ぶりの新刊

  • 73年目の戸田帯刀神父射殺事件を考える―「赦すこと」と「赦せないこと」 ジャーナリスト・佐々木宏人

  • 極限の苦悩の中で見いだした「人生の意味」 『夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録』

  • 「新渡戸稲造の現代的意義」 樋野興夫氏がデビュー作の新訂版出版で記念講演

  • キング牧師没後50年 感動と人生の指針与える名著『汝の敵を愛せよ』

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「信仰の実践としてのスピリチュアルケア」 オリブ山病院で第3回臨床牧会教育

  • 花嫁(32)愛というレンズで 星野ひかり

  • キリストの道 穂森幸一

  • キリストの心と思いが与えられている恵み(2)心が人生を決める 加治太郎

  • 私の名を使って(その3) マルコ福音書9章38~41節

  • ワールドミッションレポート(9月5日):アンティグア・バーブーダのために祈ろう

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(27)希望のかけらも残らずに

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(242)聖書と考える「DOCTOR PRICE」

  • ウェールズ聖公会、首座主教にレズビアンの女性主教選出 保守派からは強い批判の声

  • アフガニスタン東部地震、死者1400人超 ワールド・ビジョンが緊急支援募金開始

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • ウェールズ聖公会、首座主教にレズビアンの女性主教選出 保守派からは強い批判の声

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(前半)悪魔の起源 三谷和司

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(後半)救いの計画 三谷和司

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

  • ウクライナ、米大衆伝道者フランクリン・グラハム氏に勲章授与 人道支援を評価

  • 「信仰の実践としてのスピリチュアルケア」 オリブ山病院で第3回臨床牧会教育

  • アフガニスタン東部地震、死者1400人超 ワールド・ビジョンが緊急支援募金開始

  • 21世紀の神学(30)伊藤貫氏が提唱する古典教育とセオセントリズムの復権 山崎純二

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • ウェールズ聖公会、首座主教にレズビアンの女性主教選出 保守派からは強い批判の声

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(前半)悪魔の起源 三谷和司

  • 「信仰の実践としてのスピリチュアルケア」 オリブ山病院で第3回臨床牧会教育

  • ウクライナ、米大衆伝道者フランクリン・グラハム氏に勲章授与 人道支援を評価

  • アフガニスタン東部地震、死者1400人超 ワールド・ビジョンが緊急支援募金開始

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

  • DVを受けた人のための礼拝「やすらぎ」 第1回、東京・吉祥寺で9月28日

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(後半)救いの計画 三谷和司

編集部のおすすめ

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.