Skip to main content
2021年1月16日20時48分更新
Go to homepage
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
神学書を読む

神学書を読む(38)ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』

2018年10月15日19時07分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:青木保憲
神学書を読む(38)ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』+
ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』(文藝春秋、2015年)

お金の話で申し訳ない。「神学書」コーナーの対極にあるようなテーマの本を紹介することをお許し願いたい。しかし、実際に教会を運営していく上で「お金の問題」は決して軽く扱えない。しかし一方で、どうしても宗教と下世話なお金の話は相いれない。

特にキリスト教は、清貧の思想が中世以来がっちりとキリスト教徒の心をつかんでしまっている。マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を発表し、経済活動と宗教性は決して相反するものではないことを示したにもかかわらず、現代に至るまでお金の話はキリスト教会では半ばタブー視されている。特に保守的なキリスト教界ではその傾向が強い。

本書『帳簿の世界史』は、そんなお金の話の底流に「キリスト教」が見え隠れする。「帳簿」という概念でキリスト教世界、つまりヨーロッパ世界(加えてアメリカ合衆国)の2千年間が描写されている。

世界史や日本史を専門としていなくても、例えば「ルネサンス」や「フランス革命」、そして「米国独立戦争」のことは聞いたことがあるだろう。本書はこれらの出来事が引き起こされた要因の一つに、「収支報告(帳簿)の正確さの有無」があると訴える。

序章「ルイ十六世はなぜ断頭台へ送られたのか」という刺激的なタイトルに始まり、ヨーロッパ世界に君臨した各国(スペイン、オランダ、フランス、英国)の隆盛を、「帳簿」という視点から面白く描いている。

面白かったのは、中世からルネサンスに至る過程で、商人たちは会計の必要性を強く感じつつも、お金を扱う仕事に対して信仰的な劣等感を抱いていた、というくだりである。彼らは自分の犯した罪を「支出」、社会や他者への善行を「収入」と捉え、会計帳簿同様に「心の帳簿」を神の前につけていたのである。(54~56ページ)

こういった「収支発想」が免罪符を生み出したのだ、と筆者は喝破(かっぱ)している。

大方のキリスト教徒にとって、善行と悔悛に加えてキリストの血の代償によって罪を帳消しにでき、死後に煉獄であまり苦しまずに済むという教えは、会計の概念と接した初めての経験だったと言えるだろう。心の会計の借方と貸方と差引残高は、救済を得るために欠かせない。(57ページ)

もし本当にそうだとすると、後に引き起こされる「宗教改革」も神学的な相違や支配体制の質的相違のみに帰せられるものではなく、会計概念の誤った浸透が改革の土壌を生み出したとも捉えることができるだろう。教皇に代表されるカトリック教会一極集中支配体制から、国家という概念が生み出され、おのおのの立場が確立する過程において、富の優劣が生まれてくることは必然である。そうであるならなおのこと、「帳簿」作成の意義をどれだけ国王や貴族たちが理解していたかが問われることになる。本書はこの一点を鋭く突いているといえよう。

「心の帳簿」とは、本来は当時の信仰者たちの誠実さを表す言葉であった。しかし同時に、国王や貴族たちが行ってきた一連の不正に対し、「自分の帳簿は神にのみ開示すればよい」という言い訳を許容する考え方としても用いられた。彼らは自身の資産を公開せず、収支報告を粉飾したり二重帳簿を作成したりすることが日常茶飯事であった。(3~5章参照)

全13章から成る本書から分かることは、「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」(334ページ)ということ。これは言い換えるなら、会計報告や収支決算をないがしろにする組織や国家は、いっときは良いように見えても、必ず弱体化するということである。

これは栄枯盛衰を繰り返す現代社会における会社や組織のみならず、キリスト教界においても同様である。だが、このことになかなか牧師や教会関係者は目を開こうとしないように思われる。

原則として「宗教法人」である以上、会計報告を教会員に開示する義務がある。しかし、これをきちんとしていない教会が多くあると聞く。確かに開拓教会(少人数で、法人資格を取得しないで開始したばかりの集団)では、このような手続きは不要であろう。しかし、人数が増えてくるに従って予算や収支結果を公開することは、本書を読むまでもなく必要なことだと分かるはずだ。

2千年間にわたり、西洋社会を良い意味でも悪い意味でも支配し、統御してきた「キリスト教」が、時としてこのような対外的な視点(帳簿作成の有無)に晒されることは必要なことだろう。教会の役員や牧師たちがこぞって本書を読み、いろいろとディスカッションする機会があるなら、本書は大いに役立つ一冊だといえるだろう。

巻末に「帳簿の日本史」が加えられているが、こちらも大変参考になったことを付け加えておきたい。

■ ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』(文藝春秋、2015年)

<<前回へ     次回へ>>

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。グレース宣教会研修牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

関連タグ:青木保憲
  • ツイート
▼関連記事を見る  ▼クリスチャントゥデイからのお願い

関連記事

  • 「21世紀日本宣教」を熱く語る 後藤牧人氏、8年ぶりの新刊

  • 73年目の戸田帯刀神父射殺事件を考える―「赦すこと」と「赦せないこと」 ジャーナリスト・佐々木宏人

  • 極限の苦悩の中で見いだした「人生の意味」 『夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録』

  • 「新渡戸稲造の現代的意義」 樋野興夫氏がデビュー作の新訂版出版で記念講演

  • キング牧師没後50年 感動と人生の指針与える名著『汝の敵を愛せよ』

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

新型コロナウイルス特集ページ

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • トランプ氏続投と「誤って預言した」 ジェレマイア・ジョンソン氏が謝罪

  • 緊急事態宣言、7府県に拡大 対象地域のカトリック教区が相次いで対応方針発表

  • 群馬県内の教会でクラスター発生 40人が感染

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(112)「富」の支配を打ち砕く信仰の力 広田信也

  • 映画「聖なる犯罪者」に見るヨーロッパ的「救い」の危うさ

  • 日本聖書協会、新理事長に石田学氏を選出

  • 「開拓伝道は失われた人々への憐れみの心」 第23回断食祈祷聖会1日目

  • 国連「世界食糧計画」事務局長が警鐘、2021年に「聖書規模」の飢餓の可能性

  • 教皇フランシスコの主治医、新型コロナ合併症で死去

  • 世界宣教祈祷課題(1月16日):モロッコ

  • 群馬県内の教会でクラスター発生 40人が感染

  • 映画「聖なる犯罪者」に見るヨーロッパ的「救い」の危うさ

  • 米下院で「父」や「母」などの単語使用不可に フランクリン・グラハム氏「神の権威否定する」と批判

  • トランプ氏続投と「誤って預言した」 ジェレマイア・ジョンソン氏が謝罪

  • 2020年の人権侵害国トップ10、1位は中国 国連ウォッチが発表

  • 米NY州知事「黒人や貧困層に行き届くまでワクチン接種しない」 聖書引用しメッセージ

  • 教皇フランシスコの主治医、新型コロナ合併症で死去

  • 人のせいにしない 佐々木満男

  • 「改宗禁止条例」でキリスト教徒に初の逮捕者、貧困層への支援活動中に インド北部

  • 国連「世界食糧計画」事務局長が警鐘、2021年に「聖書規模」の飢餓の可能性

  • 米下院で「父」や「母」などの単語使用不可に フランクリン・グラハム氏「神の権威否定する」と批判

  • 群馬県内の教会でクラスター発生 40人が感染

  • トランプ支持者が米議会占拠 米キリスト教指導者らが相次ぎ批判、祈り呼び掛け

  • 榊原寛氏死去、79歳 お茶の水クリスチャン・センター顧問

  • コロナと自殺、必要なのは「絆」の再形成 精神科医の山中正雄牧師

  • イエス時代の儀式用沐浴槽、ゲツセマネで発見 地名の由来裏付けに

  • 映画「聖なる犯罪者」に見るヨーロッパ的「救い」の危うさ

  • トランプ氏続投と「誤って預言した」 ジェレマイア・ジョンソン氏が謝罪

  • 2020年の人権侵害国トップ10、1位は中国 国連ウォッチが発表

  • 1都3県に「緊急事態宣言」再発令、カトリック東京大司教区が対応方針発表

編集部のお勧め

  • クリスチャン画家の山田桂子さんが姫路市美術展に入選 日米でアートミニストリー展開

  • コロナと自殺、必要なのは「絆」の再形成 精神科医の山中正雄牧師

  • 「聖書通読、回重ねるごとに喜びがある」 『1年で聖書を読破する。』の鈴木崇巨牧師

  • “難病だからこそ生きる意味がある“ 「35歳までの命」余命宣告受けた筋ジストロフィー患者の保田広輝さん

  • 「母は中絶を拒否した」 アンドレア・ボチェッリの証し

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 論説委員・編集部
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 問い合わせ・アクセス
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • Twitter
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2021 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.