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脳性麻痺と共に生きる

脳性麻痺と共に生きる(26)自分たちで計画した中学の卒業旅行 有田憲一郎

2017年5月6日06時42分 コラムニスト : 有田憲一郎
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関連タグ:障がい

養護学校(現在の特別支援学校)の「PTAだより」だったと思います。卒業の季節になると、毎年、小学部から高等部までの卒業生が、それぞれの思いを書いていました。中学部の卒業を控えた僕たち同級生は、担任の先生から「今度、『PTAだより』に君たち卒業生の文章を載せてもらいます。中学部を卒業し、高等部に進学する思いを書いてきてください」と言われました。それはPTAからの依頼でした。

家に帰り、父にそのことを話しました。PTA会長を務めていた父はもちろん知っていましたが、まるで知らないふりをし「そうなんだ。じゃあ、頑張って書かないとね」と僕の話を聞いていたことを覚えています。そして「何で書かないといけないの」と書く気の起きないまま、勉強机に向かいました。

指定された文字数は、多くなく100字程度だったと思います。「できることなら書きたくない」。当時は考える力も文書力もなかった僕にとって、50字、100字の短い作文でも地獄のように感じていたことを覚えています。

「難しく考えることなんてないんだ。思ったことを思ったまま書けばいいんだから」。小学部の頃から、そんなことを父や先生方から何十回、何百回と言われ続けてきました。考える力が弱かった僕は、自分が思ったこと、感じたことを文字や言葉で表に出して表現することができないでいたのだろうと思います。

同時に父を含め、「自分は相手にどう思われてしまうんだろう。どのように見られているんだろう」と周囲の目を気にしてしまい、いつしか自分の思いや考え、気持ちなどを表に出すことが恥ずかしく、自分を押し殺してしまっていた姿もありました。

書くテーマも決まっていて、さほど長い文字数でもないにもかかわらず、僕はどのように書けばいいのか分からず、何日も机の前にいたことを覚えています。そして大騒ぎし、苦労して書いた原稿は、たった数十字でした。

養護学校の卒業式は、小学部と中学部の合同で行われ、担任の先生が卒業生一人一人の名前を呼ぶ声が体育館に響き渡ります。僕の名前が呼ばれ、先生に車いすを押してもらい、卒業証書を受け取りに行きました。

卒業証書を手渡すとき、校長先生は一人一人に言葉をかけてくれ、「『PTAだより』に『高等部には勉強をするために行きます』と書いていましたね。とても素晴らしいことだと思います。頑張って勉強してください。おめでとう」と言ってくださり、「校長先生も僕の原稿を読んでくれているんだ」と、僕はうれしくて興奮したことを今でも覚えています。

中学部を卒業した数日後、僕は同級生の仲良し3人組で卒業旅行に出掛けました。卒業を迎える数カ月前、同級生から「俺たちで卒業旅行に行ってみないか。思い出を作ろうぜ」と、自分たちだけで計画してボランティアをお願いし、旅に出ようと誘われたのです。

当時から旅行が好きだった僕は、「旅行に行こう」と言われただけで自然と笑顔になり、なんだか気持ちが興奮してしまいます。しかし僕は、それまで家族や先生、そして計画された旅行やイベントにボランティアさんと行くことはあっても、自分ですべて計画して行くことはなかったのです。

何から決めていいか分からず、計画の立て方に悩んでいると、先生が「君たちはまず、どこに行きたいの? 計画の仕方や地図の見方、宿の取り方、電車の乗り方、ボランティアの頼み方やお願いの仕方とか習ってきたよね。それを思い出して、一つ一つ実践していけばいいだけのこと。できるところは自分たちでやりなさい。できないところを先生が協力するから。それもいい社会勉強だ」と後押ししてくれたのです。

放課後も自由に仲間の家に遊びに行くことができなかった僕たちは、それぞれ役割分担を決めて家で準備し、学校の昼休みに話し合って計画を立てていきました。そして、同級生の知り合いにボランティアをお願いし、千葉県の房総半島を回る2泊3日の旅に出掛けました。

しかし、僕たちの旅行をサポートしてくれるボランティアさんとは1度もお会いしたことがなく、しかも「事前に会える日の都合がつかない」と言われ、当日にならないと会うことができなかったのです。初対面の人にサポートしてもらい旅をすることに、僕は恐怖と不安でいっぱいでした。

当時、僕は他者に介助をしてもらうことに対して、ちょっとした人見知りや少しの抵抗感を持っていました。障碍(しょうがい)を持ち、多くの人のサポートを受けながら生きていかなければいけない僕は、幼い頃から父に「誰にでもサポートや介助をお願いできるようにならないと、生きていけないよ。父さんも年をとっていくから、お前を介助することができなくなってくる。そのためにも今から、いろんな人の介助をしてもらう訓練をして、誰にでも介助してもらえるように慣れておかないとダメ。嫌なんて言っていたら、この先、生きていけないぞ」と言われてきました。

そして父に、「手伝ってくれる人に文句を言ったり、細かいことを言ったりしたらダメだ。次からしてもらえなくなってしまう」と厳しく言われ続けてきた僕は、「嫌とか細かいことや文句などを言ったら、怒られる」と恐ろしくて、自分の意志や主張を言えないでいたのです。そこには苦い経験や嫌な思い出があります。

親しくなり、理解をしてくれるボランティアさんとは何でも話し、楽しい時間を過ごすものの、人付き合いというのが苦手で、どこかで壁を作ってしまう自分がいました。

そんな自分の複雑な思いを打ち明けてしまうと、父や先生や周囲から怒られると分かっていたと同時に、相手に「どう思われているのか」と不安もあった僕は、嫌なことは嫌と本当の気持ちを素直に言えずに自分を押し殺して、世に言う“良い子”を演じ、介助を受けていました。

「卒業旅行に行こう」と決めて同級生と準備をしているときは、楽しくて「早く当日にならないかな」と、その日が待ち遠しくて仕方がありません。しかし、当日が近づいて来るにつれ、気分が悪くなり「行きたくないな。行くの、辞めようかな」と思い始めていました。そんな雰囲気を感じていたと思います。父は「もうすぐ、旅行だね。準備しないとね。楽しみだね」と言っていた記憶があります。

卒業旅行の当日、父の車で送ってもらい、不機嫌そうな顔で集合場所に向かいました。「おはよう」と待つ同級生とボランティアさんが笑顔で待っていて、僕は不安と緊張のあまり胃が痛く、終始笑顔を見せることはありませんでした。「憲ちゃん。何で、楽しくなさそうにしているの。これから楽しい旅に行くんだから。楽しんで来ようね」とボランティアさんに促されながら旅に出たことを覚えています。

こうして自分たちで計画した卒業旅行が始まりました。房総半島を巡る鉄道の旅でした。インターネットもない時代に不自由な手でガイドブックと地図、時刻表のページをめくるたび、紙はぐちゃぐちゃになり、時には破れてしまいながら、調べた観光地をゆっくりと見て回りました。

同級生の2人は最初からボランティアさんと楽しそうに過ごしている雰囲気の中で、僕は1人静かに車窓を眺めていました。計画した旅行は楽しかったものの、1人だけテンションが低く、あまり会話をしないまま旅を続けました。

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◇

有田憲一郎

有田憲一郎

(ありた・けんいちろう)

1971年東京生まれ。72年脳性麻痺(まひ)と診断される。89年東京都立大泉養護学校高等部卒業。画家はらみちを氏との出会いで絵心を学び、カメラに魅力を感じ独学で写真も始める。タイプアートコンテスト東京都知事賞受賞(83年)、東京都障害者総合美術展写真の部入選(93年)。個展、写真展を仙台や東京などで開催し、2004年にはバングラデシュで障碍(しょうがい)を持つ仲間と共に展示会も開催した。05年に芸術・創作活動の場として「Zinno Art Design」設立。これまでにバングラデシュを4回訪問している。そこでテゼに出会い、最近のテゼ・アジア大会(インド07年・フィリピン10年・韓国13年)には毎回参加している。日本基督教団東北教区センター「エマオ」内の仙台青年学生センターでクラス「共に生きる~オアシス有田~」を担当(10〜14年)。著書に『有田憲一郎バングラデシュ夢紀行』(10年、自主出版)。月刊誌『スピリチュアリティー』(11年9・10月号、一麦出版社)で連載を執筆。15年から東京在住。フェイスブックやブログ「アリタワールド」でもメッセージを発信している。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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