高齢化が進むキリスト教界で「任意後見制度」の可能性

2017年2月23日17時02分 記者 : 守田早生里 印刷
+高齢化が進むキリスト教界で『任意後見制度』の可能性
NPOまな市民後見セーフティネットの大畠さんと毛利さん

厚生労働省の調べによると、日本人女性の平均寿命は87・05歳、男性は80・79歳(2015年)。医学の進歩により、平均寿命は一昔前に比べると驚異的に伸びており、その数字は世界的に見てもトップクラスと言える。

一方、日本の各教会でも、戦後間もなく信仰を持ったクリスチャンが後期高齢者となる時代を迎え、高齢化が急速に進んでいる。信仰の継承、地域への伝道が急務とされる中、このような社会だからこそ、教会の役割が問われる時代になっているのではないだろうか。

先月、インターナショナルVIPクラブ船橋で、「最期まで自分らしく生きる」をテーマに集会が持たれた。講師を務めたのは、「NPOまな市民後見セーフティネット」の毛利陽子さんと大畠朋子さん。毛利さんは保健師として人々の健康、病気、老い、そして最期と向き合い、特に介護施設へのコンサルティングをする中で「終活」のお手伝いをするようになったという。

2人が「終活」の1つとして、自分らしく最後まで生きるために勧めているのが「任意後見制度」。これは、自己判断能力があるうちに自分自身で、周りにいる家族、友人、親類などから後見人を選ぶ方法だ。高齢や病気などの理由で判断がつかなくなったときに備えて、判断がつくうちに契約を交わし、公正証書を作成することになる。

「独居の高齢者が増加する現在、『子どもがいても遠方に住んでいて、年に数回しか会わない』『子どもがいない』『離婚していて、子どもとも疎遠だ』など、さまざまな理由で、万一、自分に判断能力がなくなったときの『後見人がいない』という事態は、意外と身近にあるものです。命の長さをはかる『平均寿命』と、心身ともに健康な状態をさす『健康寿命』との間には10年ほどの開きがあります。体は元気だけど認知症になって、さまざまな判断がつかないというケースも近年増加しています」と毛利さんは話す。

認知症の症状として「物忘れ」が日常的になることが考えられるが、毛利さんによると、「名前が出てこないなどは認知症の症状ではなく、むしろ『行動したことを忘れる』や『時間と場所が分からなくなる』などの症状が出始めたら要注意」だという。VIP船橋の代表で精神科医の宇田川雅彦さんは、「認知症の有無や程度の診断には慎重さを要します。高齢者ではちょっとした体調の変化などにより脳の機能が変動することが多いので、例えば昼間は判断力があるのに、夜になると急に認知症の症状が強まるように見えることがあったり、日によっても症状の軽重が変化して見えることがあったりします。このために診察した医師によって見解が異なってしまう場合すらあります。認知症の診断は時間をかけていろいろな検査を行った上で慎重に診断していくことが大切です。診察時の所見だけでは不十分なので、普段から家族や周りの人もよく観察しておく必要があると思います」と集会の中で話した。

例えば、判断力の落ちてきた高齢の両親が高額商品を訪問販売などで購入してしまった場合、一定期間内であればクーリングオフ(申し込みの撤回)が適用されるなどの法的整備はされているものの、それが本人の判断かどうかが怪しい状態では、困難な場合がある。

高齢化が進むキリスト教界で『任意後見制度』の可能性
VIP船橋で講演を行った大畠さん

そこで活用できるのが「法定後見制度」の保佐、補助だ。判断能力がなくなってから、本人やその家族などの申請によって家庭裁判所で選任されるのが「法定後見人」であり、将来、判断能力が不十分になった場合に備え、健康なうちに自ら選ぶのが「任意後見制度」である。

「自分がぼけてしまった後に、『だまされたらどうしよう』『財産を奪われて、自分の家族や親族ともめたらどうしよう』と皆さん、思われるでしょう。そこで大切なのは人間関係だと思います。『この人ならだまされてもいいや』と思えるほどに信頼できる人に後見人になってもらえば、悔いはないと思います。そういう人には本当に任せて安心ですけどね」

「後見人」は、介護などの直接ケアは行わないものの、財産の管理や施設の入居や介護サービスにおける諸手続きなどを行うことができる。本人の好みを知っていれば、それに合わせて、心地よい余生を送ることができるよう「後見」するのが務めだ。

「NPOまな市民後見セーフティネット」では、契約前の相談から契約書作りまで手伝っている。任意団体「マナクラブ」では、エンディングノート作成セミナーや介護施設視察研修ツアーなども行っている。

毛利さんはこう話す。「高齢化が進むキリスト教界でも、『任意後見制度』の可能性を探っていきたいと思っています。数十年に及ぶ教会生活の中で気心知れた教会員に『後見人』になってもらうのは、とても安心なことだと思います。礼拝に集まることで自然とみんなで『見守る』こともできるので、1人でその役目を負うよりは負担も少ないです。教会が果たせる役割は大きいと思います。今後、教会でこのようなセミナーを通して老後の備え、教会の役割を考えてもらう機会を設けていければよいなと思っています」

「あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのですから、神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕えなさい」(1ペトロ4:10)

毛利さんと大畠さんは「この御言葉を実践していきたい」と最後に話していた。講演や相談の連絡は、メール(npomananet@gmail.com)またはファクス(03・3475・5846)で。詳しくは、 ホームページを。

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