少年犯罪に手を染めた過去から更生 アドラムキリスト教会(1)

2016年12月9日00時06分 記者 : 守田早生里 印刷
+少年犯罪に手を染めた過去から更生 大阪アドラムキリスト教会(1)
犯罪に手を染めてしまった少年たちの居場所作りを行う(写真左から)上野哲志さん、野田詠氏牧師、原田選主さん

大阪府東大阪市にある大きな商店街の一角に「アドラムキリスト教会」はある。昔ながらの洋品店や喫茶店、たこ焼き屋などが並び、商い魂息づく大阪の下町の雰囲気を感じるこの地域は、無機質なビジネス街とは異なる人の温かみを感じる。

毎週日曜日の午前11時から行われる礼拝には、さまざまな過去を持つ少年たちが集うが、同教会の野田詠氏(えいじ)牧師は、彼らを快く迎える。野田牧師もかつては、暴走族のリーダーとなり、少年院に1回、少年鑑別所に4回入った経験がある。少年院の中で聖書と出会い、人生をやり直した。

同教会に集う3人の青年に話を聞いた。

初めて神に祈った日 高井和さん

高井和さん(32)は、同教会のある東大阪で生まれ育った。幼い頃、両親が離婚し、母と姉との3人暮らしだった。小学校の低学年までは、勉強もよくできて、スポーツ好き、友人にも恵まれ、学校も大好きだった。母親は優しく、母子家庭だったが、人一倍かわいがられ、欲しいものは何でも買ってもらった記憶があるという。

歯車が狂いだしたのは、小学校高学年にさしかかった頃。万引き、母親の財布からお金を取るなどの行為を始めたのがきっかけだった。「優しい母親が怒るはずがない」と完全に甘えていた。学校の勉強もだんだん分からなくなっていった。

中学に入る頃には、勉強は大嫌い、学校も嫌いだった。相変わらず運動は好きだったので、卓球部に入り、学校に行った日は、部活にも顔を出していた。

しかし、学校に行って勉強や部活をするよりも、仲間と遊んでいる方が何倍も楽しかった。中学2年生でシンナーとたばこを覚えた。ひったくり、けんかはしょっちゅうだった。そのたびに母は謝りに来てくれたが、和さんを責めることはなかった。

母の謝る姿を見て、多少「悪いことをしたな・・・」とは思ったが、全くこたえてなかった。「今から思えば、母は女手1つで僕たちを育ててくれたのですが、負い目があったのでしょうね。『自分が子どもたちに寂しい思いをさせてしまった』というね・・・」と当時を振り返る。荒れた中学時代、そのまま商業系の専門学校へ行くも、3年生の時に退学。

アルバイト先で知り合った女性と付き合っている頃、20歳で覚せい剤に手を出した。シンナーも吸っていたし、周りの友人も勧めるので、あまり抵抗はなかった。その頃、1度、アドラムキリスト教会を訪れ、野田牧師にも会っていた。「教会って、なんだか分からないけど、みんなキラキラしているな」と思ったという。嫌ではないが、そこが自分の居場所とは到底思えなかった。21歳で覚せい剤所持と使用で逮捕。執行猶予3年、懲役1年6カ月の判決を受けた。

その後、執行猶予中に薬物依存更生施設ダルクを紹介されるが、入所をかたくなに拒否。通所することになったが、それも長くは続かなかった。その数カ月後には、すでに薬物を手にしていた。22歳で再逮捕。刑務所に送られることになった。27歳で出所するが、刑務所の中では、すでに「悪のネットワーク」が出来上がっていた。出所後、再び教会を訪れ、野田牧師の話を聞くが、「聖書の話は難しく、分からなかった。ただ、野田牧師はいい人だなとは思った」と話す。

受刑中にも、野田牧師は文通を通して高井さんを励ました。しかし、再び高井さんは薬に手を染めてしまった。皆が祈祷会で自分のことを祈っているのも知っていたが、薬の誘惑に勝てなかったのだ。薬物依存の精神病院にも入院した。薬物を日常的に使用していたある日、人ともめ事を起こしてしまった。刃物を手に「ぶっ殺してやる!」と叫び、手を振り上げて刺そうとした瞬間、なぜか体から力が抜けた。

周りに取り押さえられ、警察へ。しかし、薬物を使用していたにもかかわらず、薬物反応は陰性。傷害罪で半年、刑務所に入ることになるが、その他の罪には問われなかった。拘置所の中で、初めて高井さんは神に祈った。

「神様、ごめんなさい。もう僕はこんな人生からやり直したいです。助けてください。あなたの助けが必要です」

出所してからは、教会とつながり、毎週礼拝をささげている。今後は、「神様の召しがあれば、神学校にも行ってみたい。主に仕える人生を送りたい」と話す。

サーファーから神学校へ 上野哲志さん

少年犯罪に手を染めた過去から更生 大阪アドラムキリスト教会(1)
神学校卒業後は東北での開拓伝道を目指す上野哲志さん

上野哲志さん(34)は、和歌山県和歌山市で育つ。両親は、上野さんが幼少期の頃から教育熱心。月曜から金曜まで、放課後はほぼ習い事で埋まっていたという。バスケットボールが好きな活発な少年だったが、毎日の習い事もあり、放課後、友人と遊んだ記憶はあまりない。

反抗期を迎える中学時代に、親子の関係が悪化。中学2年生の時、非行に走った。高校は地元の学校に進学したが、上野さんの非行はエスカレートしていった。

一方で、心の中では必死にもがいていた。生きている目的が分からない・・・何を目標に生きていけば良いのかも分からなかった。高校に籍を置きながら、土建のアルバイトを始めた。遊ぶお金が欲しかったのだ。暴走行為、たばこ、シンナー、けんか・・・などを繰り返し、16歳で補導された。補導されてからは、土建のバイトにも身が入らず、学校も退学。パチンコで生活をしながら、暴走族にも入った。

覚せい剤を覚えたのは、17歳の時。好奇心から、友達がやっているのを見て、手を出した。「いけないことと分かってはいましたが、周りの友達がやっているから・・・といった安易な気持ちで始めたように思います」と話す。初めは、友達と会ったときに少しやる程度だったが、そのうち自分でも打つように。自分が壊れ始めたのが分かったという。

人生、全てがむなしかった。「きっと、ろくな人間にはならないだろうな」と思っていたという。

しかし、なんとか環境を変えなければ・・・と思った。普通運転免許を22歳で取得。これが転機になった。勉強は嫌いだったので、再び学校へ戻ろうとは思わなかったが、スポーツは好きだったので、何か始めようと思った矢先、サーフィンに興味を持ち始めた。

和歌山の海でサーフィンをするようになった。この頃には、完全に覚せい剤と手を切り、プロサーファーになる目標もできた。良い波を求めて、千葉県に引っ越すことを決意。房総の海を臨む町に住み、仕事も得て、週末は海に出るという充実した時間を過ごした。

よくトレーニングに通ったプールで米国人の男性に声を掛けられ、親しくなった。千葉県に身寄りも友達もいなかった上野さんは、親しい友人ができたことをとてもうれしく思った。彼の家に食事に行くと、食前にはいつもお祈りをささげている姿を見ていた。「クリスチャンなんだな・・・と思い、こういう温かい家庭はいいな」と思った。

時を同じくして、クリスチャンのサーファーたちにも出会った。クリスチャンのイメージが、大きく変わった。そこで、米国人の友人に「自分は生きる目的を失っていた。心に穴が開いていた。薬物に手を出して、その穴を埋めようと思ったけど、埋まらなかった」と話すと、教会へ誘ってくれた。

初めて行った教会は、知らない人が握手をしてくれたり、優しく話し掛けてくれたりした。賛美をすると、自然と平安と喜びが沸き上がった。

ある日、夢を見た。過去に犯した罪が映画を見るようによみがえってきた。「両親に悪いことをしたな。たくさん友達も傷つけてしまった。心から赦(ゆる)されたい」と思った。そう思っていた瞬間、どこからか「私があなたの身代わりとなって、十字架にかかったのですよ」と声を聞いた気がした。すると、喜びに満たされ、翌朝、起きると枕は涙で濡れていた。

27歳の春。折しもイースターの朝だった。すぐに教会へと導いてくれた友人に電話。「教会に行きたい」と告げた。その日の礼拝で、招きに応答。イエス様を受け入れた。近くの教会へ毎週集い、クリスチャンサーファーらとも交わるようになり、イエス様のために全てをささげたいと思った。2011年、東日本大震災発生後は、教会を拠点にした被災地支援にも加わった。

現在は、関西聖書学院で神学を学び、来年には教会を開拓するべく、東北の地を目指す予定だ。続きはこちら>>

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