Skip to main content
2025年8月17日06時59分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍

『ボクシングと大東亜』 スポーツと外交、敗戦日本とフィリピンを結んだクリスチャンボクサー

2016年10月4日00時39分 記者 : 土門稔
  • ツイート
印刷
『ボクシングと大東亜』 スポーツと外交、敗戦日本とフィリピンを結んだクリスチャンボクサー+
乗松優著『ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交』(2016年6月、忘羊社)

太平洋戦争の敗戦に打ちひしがれていた日本人に希望を与えたのは大衆スポーツだった。水泳「富士山のトビウオ」古橋広之進、プロレスの力道山、そして1952年にボクシング世界フライ級チャンピオンとなった白井義男は日本を熱狂させた。

本書は、ボクシングが戦後の日本と米国、アジアとの和解と交流の懸け橋になったことを、外交、メディア史、ボクシング史の膨大な資料を元に描き出すことで、スポーツと政治と外交について考えさせてくれる力作だ。さらに、その中で大きな役割を果たした1人がクリスチャンの金子繁治(1931~2016)というボクサーだったという物語を教えてくれる。

太平洋戦争で最大の被害を被ったフィリピン

2016年は日比国交正常化60周年に当たる。あまり知られていないが、フィリピンは日本軍が太平洋戦争で50万人以上の最大の戦没者を出した地だ。さらにマニラ攻略戦やゲリラ討伐により100万人以上のフィリピン人が亡くなり、金属生産高は戦前の4分の1に激減するなど、経済や国土も甚大な被害を被った。

このため、終戦後もフィリピンの対日感情は極めて悪かったという。1951年、日本はサンフランシスコ講和条約を結び、アジア各国への戦時賠償と国交正常化に当たるが、それは茨(いばら)の道だった。その時代、ボクシング「東洋選手権」では、多くのフィリピン人王者に日本選手が挑み、日本中が熱狂した。ボクシングは両国の交流と国民感情を結び付ける上で大きな役割を果たしていた。

ボクシング大国フィリピンと敗戦日本

世界タイトル6階級を制覇したあのマニー・パッキャオで知られるように、フィリピンでは、ボクシングは「国技」に等しいほどの人気があるボクシング大国だ。その歴史は米国の植民地時代、米軍が若い現地兵士のレクリエーションと鍛錬のために取り入れたのにさかのぼり、さらに米国の技術が導入され、アジア最高のボクシング大国となった。

一方、太平洋戦争に敗戦した日本でも柔道や剣道が「国粋主義の象徴」として禁止される中、西洋のスポーツ、ボクシングは、GHQの占領下で積極的に支持され(マッカーサーも大変なスポーツ好きだったという)、人気スポーツとなる。そしてフィリピンは、日本人ボクサーにとってアメリカ文化や本場のボクシングを知り、はるか先にある「世界」を見る窓口でもあったのだ。

スポーツと外交

よくスポーツは、政治とは関係のない中立なものであると語られるが、著者はスポーツが政治や外交と密接に関係していることを強調する。大英帝国は植民地への影響力を弱める中、英連邦11カ国で構成される「コモンウェルス・ゲームズ」という大会を開催し続けたが、これは、つながりを確認し、弱まった政治的権威を補う装置として機能した。

ボクシングに詳しくない人(私もだが)でも「東洋チャンピオン」という言葉は聞いたことがあるだろう(考えてみると「東洋」という言葉はほかにめったに使われない)。著者は、それが大東亜共栄圏を目指しながら敗北した戦後日本が、政治とは切り離された肉体をかけて戦うスポーツを通じてアジアと関係を再構築し、再編するという機能として働き、国際舞台への復帰を目指していた岸内閣の外交政策の「露払い」の役割を果たしていたとする。

そして、戦後ボクシングの興業やトレーナーの多くが、尊王攘夷主義の右翼や保守系人物を占めるのも、敗戦で挫折した「アジアへの野望」をボクシングによって再度夢見た男たちの系譜ともいえると指摘している。

テレビと格闘技

それを後押ししたのがテレビだった。日本のテレビ放送は1952年設立の日本テレビに始まるが、それを主導した正力松太郎が「テレビと原子力の父」と呼ばれていることはよく知られている。そして近年の近現代史の研究では、正力が米国のエージェントとして冷戦下の日本世論を親米向化するため、マスメディアで牽引(けんいん)する役割を演じていたことが明らかになっている。

当時極めて高価だったテレビの普及に最も貢献したのが、プロ野球や力道山のプロレス、ボクシングなどのスポーツ番組だった。世界戦でチャンピオンのフィリピン人に日本人ボクサーが挑戦者として挑む姿に、日本人は熱狂した。

1955年の白井の世界戦は視聴率96・1%(!)を記録したという。テレビで「東洋チャンピオン」「世界チャンピオン」をかけて裸で拳を正々堂々と交わし合う姿は、日本人を熱狂させ、それはまた「世界への窓口だった」と著者は指摘する。

日本とフィリピンが国交正常化するのは1956年だが、それまでボクシングが両国を結び付けるいわば「民間交流・外交」の重要な役割を果たしていたとする著者の指摘は、非常に興味深い。

クリスチャンボクサー・金子繁治

本書の前半、ボクシングを取り巻く人脈の系譜は、「昭和の怪物」正力松太郎、尊王攘夷主義者や右翼、さらに美空ひばりの興業でも知られる3代目山口組組長田岡一雄など、ほとんど百鬼夜行の様相を呈している(現代史に興味がある者としてはたまらない面白さがあるのだが[笑])。

しかし、実際にリングに立ったボクサーたちの姿は、むしろ爽やかな印象を残してくれる。その1人が、フェザー級を戦った金子繁治だ。金子は姉の影響で1952年、日本基督教団碑文谷教会で洗礼を受けた熱心なクリスチャンであり、こんな言葉を語っている。

(碑文谷教会の)大石牧師は、私のために祈ってくれただけでなく、いろんなアドバイスを与えてくれた。チャンピオンの座は奪うものではなく与えられるものだと。奪い取ってざまあ見ろと相手を見下すのではないのだと。相手が一生懸命闘ってくれたことに、感謝して称えなければならないと仰った。

金子が肌身離さず持っていた手帳には「信ずる者あわてない」と題されたこんな言葉が書かれていた。

私は信仰を「待つこと」だと思います。どのような状況にあっても、どのような境遇におかれても、けっしてあわてず、騒がず、思い煩わず、主の恵みに信頼し、主の愛と真実に信頼して、その主導的導きを信じて待つ。これがキリスト教信仰の真髄だと思います。

『ボクシングと大東亜』 スポーツと外交、敗戦日本とフィリピンを結んだクリスチャンボクサー
日本基督教団碑文谷教会で賛美の練習をする金子繁治(中央)

金子が何度も死闘を交わしたフィリピン人ボクサー、フラッシュ・エロルデも敬虔なカトリック信徒で、稼いだファイトマネーで学校や教会、孤児院を建てるなど社会貢献に尽くし、死後30年たった今も親しみと尊敬をもって語られているという。金子もその姿を見て、引退後、フィリピンを訪ね、現地では敵国人として疎外されていた日系人の教育や医療支援活動を生涯続けたという。

東洋タイトルマッチの前の2人の笑顔の写真は、互いへの敬意が感じられてとても印象的だ。

『ボクシングと大東亜』 スポーツと外交、敗戦日本とフィリピンを結んだクリスチャンボクサー
東洋フェザー級タイトルマッチのため計量する金子繁治(右)とフラッシュ・エロルデ

ボクシングは、よく最もストイック(禁欲的)なスポーツといわれる。著者は、「神の御心に従いながら天職としてのボクシング競技に励む金子に禁欲的プロテスタンティズムの思想性を読み込むことができる、ボクサーとしての生き方は天が彼に与えた召命であった」と書いている。

著者は、彼らの生涯を紹介しながら「かつて、帝国の名の下にアジア諸国を再編しようとした日本人の思惑や葛藤を易々と飛び越えて、その身一つで交流の懸け橋を築いたボクサーの存在は、知られざる戦後史の扉を開くとともに、ある種の爽快感を私たちに感じさせるのである」と感慨と敬意をもって評価している。

膨大な資料を元に、スポーツと外交という視点から、見落とされていた戦後史を深く爽やかに掘り尽くした力作である本書が、より広く読まれることを願ってやまない。

乗松優著『ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交』(2016年6月、忘羊社)

  • ツイート

関連記事

  • 冤罪で失われた48年の時を経て、人間を取り戻す「袴田巌 夢の間の世の中」

  • “ひとを殴るクリスチャン” ボクサーたちの信仰 フィリピンの英雄マニー・パッキャオ、日本の金子繁治 そしてロッキー

  • シドニー五輪銅メダリスト、岡本依子さんがリオ報告会

  • 薬物中毒、ホームレスからリオ五輪へ 信仰が変えたオーストラリアの水泳選手ダニエル・スミスの人生

  • 世界新でリオ五輪陸上男子400M金 ウェード・ファンニーケルク「イエスがしてくださった」

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 米韓政府の政策で対北朝鮮ラジオ放送が80%減少、キリスト教迫害監視団体が懸念

  • 嫌いと無関心 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(8月17日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(1)

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 立ち向かう勇気 佐々木満男

  • ヨハネの黙示録(6)スミルナ教会の御使いへ 岡田昌弘

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

  • キリストの心と思いが与えられている恵み(1)思い煩いを主に委ねる 加治太郎

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(10)「苦しみ」から「苦しみ」へ 三谷和司

  • 立ち向かう勇気 佐々木満男

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(228)宣教は聖霊の働きによって拡大する 広田信也

  • 主キリストの選びに生きよう 万代栄嗣

  • 根田祥一氏の敗訴確定、最高裁が上告棄却 本紙に対する名誉毀損で賠償命令

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(10)「苦しみ」から「苦しみ」へ 三谷和司

  • 日本基督教団、戦後80年で「平和を求める祈り」 在日大韓基督教会と平和メッセージも

  • コンゴで教会襲撃、子ども含む43人死亡 徹夜の祈祷会中に

  • 日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

  • メディアに取り上げられるキリスト教のイメージを改善する4つの方法

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

編集部のおすすめ

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.