日本カトリック信徒宣教者会 カンボジアの水上村で活動する井手司さん、一時帰国報告会開催

2016年7月12日16時22分 記者 : 新庄れい麻 印刷
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日本のカトリック教会から、主にアジア・太平洋の貧困地域にボランティアを派遣している、日本カトリック信徒宣教者会(JLMM)。派遣されるボランティアは、信徒宣教者(レイ・ミッショナリー)と呼ばれ、これまで100人以上が派遣されてきた。その1人、井手司さんが活動するのは、カンボジアのトンレサップ湖上にあるコンポンルアン水上村だ=2日、東京都千代田区の幼きイエス会(ニコラ・バレ)本部修道院で

日本のカトリック教会から、主にアジア・太平洋の貧困地域にボランティアを派遣している、日本カトリック信徒宣教者会(JLMM)。派遣されるボランティアは、信徒宣教者(レイ・ミッショナリー)と呼ばれ、派遣地におけるさまざまな活動を通して、現地の人々と喜びや悲しみを共有し、「ともに生きる」社会の実現を目指している。また、経済的・物質的な支援だけでなく、人々と共に歩んだイエスに倣い、自分自身の生き方や活動を通して、キリストの言葉を実践しようとしている。

JLMMは1982年の派遣開始以来、100人以上の信徒宣教者を派遣してきたが、現在、カンボジアのトンレサップ湖上にあるコンポンルアン水上村で活動している井手司さんの一時帰国報告会が2日、東京都千代田区の幼きイエス会(ニコラ・バレ)本部修道院で行われた。

2年半の派遣期間を終えて、さらに1年の延長を決めたばかりという井手さんが、これまでの活動の振り返りと、これからへの新たな決意を語り、井手さんを囲んでの懇親会の時が持たれた。

アンコール・ワットなどで有名な観光都市シェムリアップにほど近いトンレサップ湖は、東南アジア最大の湖だ。多様な淡水魚が生息する世界有数の淡水湖で、古くから漁業が盛んに行われており、水上生活者の数も世界最大規模。井手さんが活動するコンポルンアン水上村では、約1500世帯6千人ほどの人々が、水に浮かべられた家に住んでいる。

日本人になじみの薄い「水上村」。その言葉からは「水上コテージのようなものかしら」と、プラスのイメージが連想されるかもしれない。

しかし、実際の水上での生活にはむしろ、マイナスな点ばかりが存在するという。まず、生活用水が全て湖に垂れ流されているために、衛生状態が非常に悪い。湖で泳ぐ子どもたちの多くが皮膚疾患を患っており、清潔な水を確保することが難しい。食べ物は、米と魚が基本のメニューで、肉や野菜が食卓に上らないため、栄養の偏りも激しい。

コンポルンアン水上村における最大の問題は、その住人の大半がベトナム人だということだ。1880年代から始まったフランス統治時代(ベトナム、カンボジア、ラオスをフランスが統治)に、より良い漁場を求めてトンレサップ湖に移り住んで来たベトナム人漁師らの子孫が、現在に至るまで水上村に住み続けている。

カンボジア語(クメール語)を話せないために、病院や学校など公共サービスにアクセスできず、カンボジア社会から孤立してしまっている彼らは、国籍を持たない非常に不安定な状況の中で生活を続けている。

井手さんの現地での活動は、浄水装置の設置、爪切り、シラミ取り、歯磨き指導、予防接種といった保健衛生プログラムから、クメール語などを教える教育プログラムまで多岐にわたる。現在、通訳をつけて住民が適切な治療を受けられるようサポートしているところを、クメール語を話せる子どもたちを育成することで、今ある言葉の壁が次世代には克服されることを目指している。

日本カトリック信徒宣教者会 カンボジアの水上村で活動する井手司さん、一時帰国報告会開催
保健衛生プログラムの一環で、子どもたちに水浴びさせている様子(写真:井手司さん提供)

湖上での生活は、降雨量の強い影響を受ける。乾期に減った水かさが、雨期に降り続く雨によって元に戻るというサイクルで一定の水量が保たれているのだが、降雨量が下がると、大変な水不足に陥り、船も動かず、魚も激減し、その日の食料を確保することすらも難しくなってしまう。

ちょうどこの1年は、数十年に1度といわれるほどの大干ばつで、数日間に10分ほどしか雨が降らないために、湖の水はひざ下ほどまでに減り、あまりの生活苦でベトナムに夜逃げする家族も少なくないという。井手さんらの運営する学校の子どももこの1年で100人から70人に減り、いかに深刻な状況であるかを物語っている。

衛生状態も悪く、干ばつで漁もできないとあっては、もはや水上で生活を続けることになんのメリットもないのだが、住民たちが他のどこかに移り住むのは非常に難しい。無国籍であるために受け入れ場所がないというのも理由の1つなのだが、常に波に揺られた場所にいる水上生活者は、陸地では長時間立っていることも難しく、地上で生活できない体になってしまっている、と井手さんは説明する。「水上村の住民は、死んで土葬されて初めて地上で眠る」と言われるほどだそう。

その逆もしかりで、地上で暮らす人にとっては、水上村に長く滞在するのは体に支障をきたすそう。そのため井手さんも、水上村からバイクで1時間ほどにある、カトリック教会運営の農業訓練試験場(CROAP)で、5カ国のボランティアスタッフと共同生活をしつつ、活動を続けてきた。

日本カトリック信徒宣教者会 カンボジアの水上村で活動する井手司さん、一時帰国報告会開催
「カンボジアに笑顔を築こう!」という思いを持った学生によって結成され、上智大学を拠点に活動する学生団体「CeeK」(シーク)のメンバーや、カンボジアのバッタンバン地区におけるイエズス会の支援活動を日本からサポートしている「バッタンバン友の会」の会員が多く参加。井手さんと共に、カンボジアへの思いを共有し、現地の情報交換を活発に行った。

2年半の任期を終えた井手さんは、さらにもう1年の期間延長を申し出た。決して楽だとはいえない環境の中で、「なぜ延長したのか自分でも分からない」と笑う井手さんだが、やっと住民たちと心を通わせて話せるようになった今、帰ってしまうのはもったいないと感じたのだという。

また、水上村の良さに気が付くきっかけとなったエピソードとして、水上村での盛大な葬儀について話した。家族の団結、他人への深い敬意、あつい信仰心に心打たれたという井手さんは、「自分の体力が続く限り活動を続けたい」と話す。

日本カトリック信徒宣教者会 カンボジアの水上村で活動する井手司さん、一時帰国報告会開催
通学船の上で、井手さんと子どもたち(写真:井手司さん提供)

会場には、井手さんの前任の信徒宣教者や、井手さんの研修を担当したシスターが駆けつけており、井手さんの新たな決意に「神様以外保証がないところで、井手さん自身が変えられてきた成長をうれしく思う。延長の申し出ほど感謝なことはない。元気に頑張ってほしい」と励ましのエールを送った。

また、「カンボジアに笑顔を築こう!」という思いを持った学生によって結成され、上智大学を拠点に活動する学生団体「CeeK」(シーク)のメンバーや、カンボジアのバッタンバン地区におけるイエズス会の支援活動を日本からサポートしている「バッタンバン友の会」の会員も多く参加。井手さんと共に、カンボジアへの思いを共有し、現地の情報交換を活発に行った。

日本カトリック信徒宣教者会(JLMM)の活動、信徒宣教者の活動報告会の詳細などは、公式ホームページ

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