「イマドキの改憲」若手弁護士の会事務局長が緊急事態条項について講演

2016年2月20日07時17分 記者 : 行本尚史 印刷
+「イマドキの改憲」 若手弁護士の会事務局長が緊急事態条項について講演 宗教者九条の和・宗教者平和ネット集会で
「戦争法の廃止を求める宗教者祈念集会」で緊急事態条項について講演する「明日の自由を守る若手弁護士の会」(あすわか)事務局長の早田由布子氏(写真中央)=18日、東京都千代田区の参議院議員会館で

安倍政権が改憲の出発点としている緊急事態条項について考えようと、仏教者やキリスト者などが作る平和運動団体「宗教者九条の和」「平和をつくり出す宗教者ネット(宗教者平和ネット)」は18日、若手弁護士を講師に参議院議員会館(東京都千代田区)で「戦争法の廃止を求める宗教者祈念集会」を開いた。

この集会で「明日の自由を守る若手弁護士の会」(あすわか)事務局長の早田由布子氏は、「イマドキの改憲~緊急事態条項」と題して約40人の参加者を前に講演した。なお、昨年5月には、同会の若手弁護士でクリスチャンの伊藤朝日太郎氏が同じく緊急事態条項について講演し、警告を発している(本紙関連記事はこちら:2015年6月10日付「クリスチャンの若手弁護士、立憲主義の危機について警告『宗教者、教会が抵抗の拠点に』」)。

早田氏はまず改憲をめぐるこれまでの流れについて説明。「2012年4月、自民党憲法改正草案発表。緊急事態条項が盛り込まれる」「14年11月6日、衆議院憲法審査会第1回目に行う憲法改正手続きのテーマ六つが提案、その中に緊急事態条項が含まれる」「15年5月~自民党、船田憲法改正推進本部長(当時)、谷垣禎一幹事長ら党幹部より、緊急事態条項新設へ向けた発言が相次ぐ」「15年5月7日、衆議院憲法審査会、武正議員(民主)、井上議員(維新)、斉藤議員(公明)からも、緊急事態条項について前向きな発言がなされる」「16年1月1日、安倍首相、緊急事態条項の新設を憲法改正の出発点とする方針を固める」と述べた。

次に早田氏は緊急事態条項について述べ、国家緊急権は「戦争・内乱・恐慌ないし大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を取る権限」であると説明。「立憲的な憲法秩序」とは、「三権分立、国民の基本的人権の尊重」であると付け加えた。

そして早田氏は、国家緊急権は「乱用されがち」であり、「国民の権利制限を含む」とともに、「行政権の肥大化」を招き、「三権分立のバランスが極端に行政に寄る」と指摘した。

また、早田氏は、緊急事態条項で現に何が行われているかについて述べ、その例として、昨年11月のフランスにおけるパリ同時テロ後の非常事態宣言に言及。「テロを未然に防止する目的といって、無令状で168カ所の捜索差押を行い、31丁の武器を押収、23人を逮捕」という、同月16日付の毎日新聞による報道を引き合いに出した。

さらに、早田氏は、自民党憲法草案における緊急事態条項(98条と99条、全部で八つの文からなる)について、「内閣総理大臣が閣議で緊急事態を宣言」するとなっており、「宣言後、内閣は法律と同一の効力を有する政令を(内閣だけで)制定できる」となっているのは、「ナチス・ドイツ全権委任法と同じ規定」だとその危険性を指摘。そして「宣言後は、何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならない」と記されている点について、「災害対策その他を国からのトップダウンでやろうということを言っている。そうすると、自治体は自分たちの判断では何もできないということになってしまう」と述べた。

早田氏は参加者に配布したレジュメの中で、この条項が「宣言後、衆議院は解散されない」「緊急事態宣言・政令は事後に国会承認。緊急事態が100日を越えるときは事前承認」「国会承認は衆議院優先」となっていると記し、「衆議院の過半数でずっと緊急事態。与党議員主権へ」と変わってしまうと指摘した。

「イマドキの改憲」 若手弁護士の会事務局長が緊急事態条項について講演 宗教者九条の和・宗教者平和ネット集会で
「戦争法の廃止を求める宗教者祈念集会」の参加者たち

そして、緊急事態条項は必要かという点について、早田氏は一つ目に、「災害直後、国民の生命と生活を守るため?」と疑問を呈し、「災害直後、国民の生命と生活は、起きた後慌ててやっても守れない。事前準備、訓練が鉄則」だと主張。「東日本大震災の教訓を踏まえた改正は終わっている。すでに、災害対策基本法、災害救助法など、十分な法律がある」と述べ、その例として、災害時緊急布告や知事による従事命令などを挙げた。

「もし足りないなら事前に法律を改正して訓練してください。この方法でしか、国民の生命と生活は守れない」と、早田氏は述べた。

早田氏は二つ目に、「被災地の弁護士会が総反対」しており、兵庫、新潟、岩手、宮城、福島で反対の会長声明が出ていると指摘した。

そして早田氏は三つ目に、「日本国憲法になぜ緊急事態条項がないのか」という点について、「大日本帝国憲法には緊急事態条項が複数あったが、意図的に削除した」と指摘。1946年7月2日の帝国議会衆議院憲法改正委員会での、金森国務大臣の答弁の要旨を紹介し、それが「緊急事態条項は行政当局者にとりましては誠に調法なもの。調法というのは、国民の意思をある期間無視できる制度ということ。なくてよいならない方がよい。昭和21年から過去何十年の日本の歴史に照らして、間髪を待てないというほどの急務はない。そういう場合は臨機応変に対応できる。新たに緊急の措置を必要とするのは余裕のある事柄。そういうときは、臨時に国会を召集して解決。そこで憲法の緊急集会が機能する」というものであったと述べた。

さらに早田氏は緊急事態条項のデメリットについて、「乱用の恐れ」があることや、「事後の混乱」、そして「災害対策にとっての弊害」を指摘。災害の「現場が動けなくなる。現場から遠くて情報が入らない永田町と霞ヶ関で全てが決められる。反対意見を聞かずに決める」ことになると述べた。

最後に早田氏は、緊急事態条項における国会議員の任期延長について、「そもそも必要か」「それを誰がどのような要件のもとで決定し、何日間延長でき、延長期間の更新はできるのか、事後的な司法審査は及ぶのか」と疑問点を挙げるとともに、その弊害について、「緊急事態を口実にいつまでたっても選挙が行われず、いつまでたっても議会の構成が変わらない、ということもあり得る」と述べた。

この集会で、真宗大谷派僧侶の石川勇吉氏は「何としても野党共闘を実現させて、彼ら(与党)を少数派に追い込む。そして安倍政権を退陣に追い込むために、皆さんの一層のご奮闘をよろしくお願いします」と訴えた。

また、「平和を実現するキリスト者ネット」副代表の村瀬俊夫氏(日本長老教会引退牧師)は、「安倍政権を早く退陣させてくださいと毎朝神様にお祈りしている」などと語り、かつて軍国少年だった自らの半生を振り返るとともに、戦争反対のために宗教者の協力を呼び掛けた。

そして村瀬氏が毎朝出ている地域の体操会の人たちはこういう問題にあまり関心がなかったが、そういう中で長く続けていると、村瀬氏がこういう運動をやっていることがだんだん分かってきて、「国会行かれたんですか?」などと関心を持ってくれるようになったと語った。「人間関係を結んで、とにかく憲法改悪に反対しようという動きをいっそう高めていきたい」と村瀬氏は結んだ。

また、日本キリスト教協議会(NCC)の小橋孝一議長は、閉会のあいさつで、「私は、宗教というものは人間をねばり強くするものだというふうに思っている。最後に成果が上がればいいわけだから、ねばり強くあせらないでやっていきましょう」と呼び掛けた。

そして、この集会後に、参加者たちは参議院議員会館前で祈念行動を行い、平和を求めるシュプレヒコールを上げるとともに、各教派・宗派による平和の祈りをささげた。

「イマドキの改憲」 若手弁護士の会事務局長が緊急事態条項について講演 宗教者九条の和・宗教者平和ネット集会で
集会後に参議院議員会館前で祈念行動を行う参加者たち=18日、東京都千代田区の参議院議員会館前で

ここで、日本カトリック正義と平和協議会事務局長の大倉一美神父は、ルカによる福音書11章11~13節「あなたがたの中に、魚を欲しがる子供に、魚の代わりに蛇を与える父親がいるだろうか。また、卵を欲しがるのに、さそりを与える父親がいるだろうか。このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして天の父は求める者に聖霊を与えてくださる」に触れ、「あなたを愛し、あなたを知り、あなたに従うことによって、平和の人となることができますように。聖霊を遣わし、平和への努力をさらに強めてください」などと祈った。

明日の自由を守る若手弁護士の会は、「自由民主党の『日本国憲法改正草案』の内容とその怖さを、広く知らせること」を目的としており、パンフレットや紙芝居を使った講演を行っている。書籍『これでわかった!超訳 特定秘密保護法』(岩波書店、2014年6月)を出している。フェイスブックやツイッターでも情報を発信しているほか、3月12日(土)午後1時から3時まで、専修大学神田キャンパス5号館7階571教室で若手弁護士を主な出演者に、元最高裁判事・政治学の大学教授をゲストに招いて、「緊急事態条項がヤバすぎるのでフェスで叫ぶことにしました。」と題した集会を開く。参加費など詳しくはこちら

「宗教者九条の和」事務局の武田隆雄氏によると、3月17日に参議院議員会館で行われる予定の次回の同団体と宗教者平和ネットの集会に間に合うように、緊急事態条項の新設に反対する宗教者の緊急アピールを出すという。また、5月31日には、全国集会を開く。また、「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」による「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」を集めている。

同委員会は、安保法制案が可決された9月19日の後も、毎月19日の夕方に国会周辺で「戦争法廃止」を求めるデモを続けている。2月21日(日)午後2時から3時半まで、「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会と共に、沖縄の辺野古基地建設に反対する「止めよう!辺野古埋め立て 2・21首都圏アクション国会大包囲」を国会周辺で予定しており、宗教者は国会図書館の前に集まるという。さらに、憲法記念日の5月3日(火)、有明防災公園(東京臨界広域防災公園)で大規模な5・3憲法集会を予定している。

さらに、2月24日(水)午後1時半より、上智大学の中野晃一教授(政治学)を講師に緊急講演会「戦争する国にさせないために 安倍政権にいかに抗うか」が、9条フェスタ市民ネットの主催により、衆議院第1議員会館・大会議室で行われる予定。詳しくはこちら

3月12日(土)午後1時から3時までは、カトリック麹町教会メルキゼデクの会の主催により、聖イグナチオ教会アルペホールで、森一弘司教(真生会館理事長)を迎えての学習会「いま『くにの安全保障』とは―キリスト者の責任と覚悟を考える―」が行われる。

3月26日(土)には、東京の代々木公園で「原発のない未来へ!3・26全国大集会」も予定されている。詳しくはこちら

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