宣教の歴史において、最も困難とされる地域の一つが中東・北アフリカ(MENA=Middle East and North Africa)だ。イスラム教の影響が強く、キリスト教への改宗が社会的・法的なリスクを伴うこの地で、今、静かながらも力強い変化が起きている。その原動力となっているのが、現地の教会ネットワークが主体となって進める「聖書翻訳」の加速である。
これまで、多くの少数民族や地域言語の話者にとって、聖書は「外国の宗教書」であった。アラビア語などの主要な共通言語では読めても、少数民族の人々は、彼らの「心の言葉」である母語で書かれた聖書が存在しなかったからだ。しかし、UnfoldingWord などの宣教団体が現地教会と協力し、翻訳プロセスを加速させている。
その成果は劇的だ。ある翻訳プロジェクトに携わる現地リーダーはこう語る。「人々が自分たちの母語で神の言葉を聞いたとき、彼らの反応は全く違います。あるムスリムの長老は、母語で朗読された福音書を聞いて涙を流し、『神が私たちの言葉で語ってくださるとは知らなかった』と言いました」
特に注目すべきは、この翻訳作業が単なる学術的なプロジェクトではなく、伝道の最前線となっていることだ。翻訳に携わる現地信徒たちが、作業の過程で未信者の隣人や友人に「この言葉の意味はどう思う?」と尋ねることで、自然な形で福音が語られ、多くのムスリムがキリストに関心を持ち始めている。
かつては数十年かかっていた翻訳作業が、テクノロジーと現地教会の主導により、劇的に加速化しているケースも増えている。自分たちの言葉で「神の愛」を知ったとき、イスラムの壁は内側から崩れ去り、イエス・キリストを受け入れる人々が続出しているのだ。
いまだ母語で聖書を持たない言語グループのために、翻訳作業がさらに進むように祈ろう。現地教会が翻訳の主導権を持ち、そのプロセスが霊的な成長と伝道の機会となり、そして「心の言葉」で語りかける神の声を聞いた多くの中東・北アフリカの人々が、真の救い主イエスに出会うことができるように祈っていただきたい。
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