【3・11特集】今も苦しむ福島の人々と共に 「復興はゼロに近い」 いわき市五十嵐牧師

2015年3月11日16時23分 記者 : 守田早生里 印刷
+【3・11特集】今も苦しむ福島の人々と共に 「復興はゼロに近い」 いわき市五十嵐牧師
巨大な防潮堤工事が進む沿岸部。美しい海岸線を見ることはもうできない=2015年3月

福島県いわき市にあるアイラブジーザスチャーチ牧師の五十嵐義隆さんは、2011年3月11日、役員を務めていた乳製品企業の事務所で仕事をしていた。2時46分、大きな揺れがいわき市を襲った。社屋は無事だったが、公共交通機関が大混乱。市内ではほとんどの地域で停電も続いた。沿岸部では、津波の被害が大きく、多数の死者が出ていることも混乱する情報の中で続々と入ってきた。何よりも驚異だったのは、原発事故だった。どこまでの地域の人が、どこに避難すればよいのか・・・。もしかしたら、自分たちも避難しなければならないのではないか・・・。さまざまな思いが巡った。当時、五十嵐さんには妻と3人の子どもがいた。幼い子どもたちと共に逃げることもできた。しかし、神の召しは五十嵐さんをここに残し、福島県で被害に苦しむ人々の支援をすることだった。

乳製品の会社では、震災翌日の商品の手配をするのに四苦八苦していた。どこの業者からも「納品の目処が立たない」「いつ工場を再開できるか分からない」との返事が続く。五十嵐さんは、「これは大変なことになった! いわき市から食べ物が消える・・・」と直感したという。翌日から、全国の教会へ支援のお願いをした。「主にあって、兄弟姉妹たちが、こんなに心強く思ったことはなかったですね」と話す。続々と支援物資が届いた。食べ物、ガソリン、防寒具、洋服・・・。余震が続いていたが、全国から、また世界中からボランティアが到着した。その数、約2万人。世界40カ国からボランティアたちが集まった。協力教会は数えきれないほど国内外に及んだ。

震災当初から、被災した人々の声が行政に届いていないと感じていた五十嵐さん。行政と住人の間に入り、被災者の心に寄り添った支援ができるよう働き掛けた。今まで見たことのない惨劇に、目を覆いたくなったが、「神様に生かされている喜びと、主の栄光を表す最大のチャンスがやってきたと思った」と語る。ボランティアとして働くクリスチャンたちの姿を通して、主の愛に触れた人も多いだろう。つらく、悲しいことも多い大災害であったが、神は全てをご存知だった。

震災から2カ月あまりがたったある日、最愛の娘との別れが突然やってきた。生後4カ月の次女は、新生児突然死症候群によって、本当に突然、天へと召されていった。悲しみに暮れていた五十嵐夫妻だが、世界中から集まってきていた宣教師たち、牧師・信徒たちが彼らのために祈ってくれた。「悲しい別れでしたが、僕は、本当の意味で家族を失った悲しみを知ることができた。震災で突然家族との別れを経験した方々の気持ちが分かった気がしました」と五十嵐さんは当時のことを話した。

これらのことをきっかけに、いわき市長選に出馬することを決意。「本当の意味での復興をするには、誰かが行政に働き掛けなければと感じた。今まで続けてきたさまざまな活動を全て辞めることは、大きな葛藤がありましたが、全を委ねた神様がそうおっしゃるなら・・・と決意しました」と話した。結果的に落選ではあったものの、初出馬、無所属、行政の経験もなかった五十嵐さんが、3千票以上を獲得したのは、住人たちに寄り添ってきた彼の活動の結果ともいえる。

「福島の復興はどのくらい進んでいますか?」と尋ねると、「僕に言わせれば、まだまだ限りなくゼロに近いと思っています。特に原発の辺りはまだまだ。震災そのものではなく、それに続く関連死も後を断ちません。大きな意味で、福島の東日本大震災はまだまだ続いているのです」と話す。

震災から4年、福島県の今に寄り添う五十嵐さん。今も昔もこれからも、ずっと変わらず祈り、行動し続ける。

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