384年前出版のルター訳「メリアン聖書」、ルーテル学院で原本公開

2014年9月24日17時55分 記者 : 内田周作 印刷
+384年前出版のルター訳「メリアン聖書」、ルーテル学院で原本公開
メリアン聖書(原本)や復刻版のルター訳聖書などを見る人々=23日、ルーテル学院大学・日本ルーテル神学校(東京都三鷹市)で

今から384年前の1630年に出版されたマルティン・ルター(1483~1546)訳の新旧約聖書「メリアン聖書」が23日、ルーテル学院大学・日本ルーテル神学校(東京都三鷹市)で公開された。

メリアン聖書は昨年9月、耐震工事を行なっていた同大学図書館で発見された。未整理図書として40年近く高温多湿の状態に置かれ、痛みや虫食いがあったことから、約4カ月にわたる修復作業が昨年末から今年春まで行なわれた。今年3月末に同図書館に引き渡され、5月には同大学関係者にお披露目されていた。今回は、同大学・神学校が毎年開催しているイベント「一日神学校」に合わせて、特別展を企画するなどして一般にも公開された。

メリアン聖書は、ドイツを代表する版画家・製図家であったマテウス・メリアン(1593~1650)の銅板による挿絵約230枚が差し込まれていることから、その名で呼ばれている。この日の午前には、徳善義和・同大学名誉教授が、「歴史の中のルターと聖書 『メリアン聖書』の発見から」と題して講演。メリアン聖書が発見された経緯や、ルターによるドイツ語訳聖書の略歴、またその影響などについて説明した。

徳善名誉教授によると、同大学・神学校(当時・日本ルーテル神学大学)は、岸千年(ちとせ)元学長(1898~1989)の代から、ドイツのルーテル教会と交流があり、神学書の寄贈をドイツから受けていた。今回発見されたメリアン聖書も、これらの書籍と共に日本に送られてきたものとみられている。

ルターは、ウォルムス国会後、9カ月にわたってワルトブルク城で保護されていたが、その最後の10週間に、デジデリウス・エラスムス(1466~1536)によるラテン語・ギリシア語対訳と、ウルガタ版ラテン語聖書に基づいて、新約聖書のドイツ語訳を完成させた。これは1522年9月に出版され、「9月聖書」と呼ばれている。価格は牛一頭分(約20~30万円程度)に相当するかなり高価なもので、ドイツ語であっても文字を読める人は30人に1人程度と識字率がかなり低い時代であったが、多くの需要があり、同年12月にも第2刷が出版されることになった(12月聖書)。

384年前出版のルター訳「メリアン聖書」、ルーテル学院で原本公開
午前に行なわれた講義「歴史の中のルターと聖書 『メリアン聖書』の発見から」では、徳善名誉教授が、メリアン聖書が発見された経緯や、ルターによるドイツ語訳聖書の略歴、またその影響などについて説明した。

その後、1534年には旧約聖書のドイツ語訳も終了し、ルターは亡くなるまで改訂作業を繰り返し行なう。9月聖書の出版からルターが亡くなる1546年まで、実に約430種類に及ぶ部分版や全集版など約50万部のドイツ語訳聖書が流布されたと言われている。さらに、これに刺激を受けドイツ語以外の言語での翻訳も行なわれるなど、ルターによるドイツ語訳聖書は、当時の社会に大きな影響を与えた。

ルターはこの翻訳の改訂を終生続け、結局亡くなる前年の1545年に出されたものが最終版となった。メリアン聖書は最終版の85年後に出版されたもの。欧州では15世紀中盤に活版印刷が発明されるが、改良が進み、「(メリアン聖書は)紙も活字もルターの時代よりずっと繊細になった」(徳善名誉教授)のが分かる。また、ルターの生前は、聖書への章付けは行なわれていたが、節付けは行なわれていなかった。聖書の節付けは、新約は1551年に、旧約は1553年にいずれもフランスで始まったとされているが、メリアン聖書では節付けも確認でき、聖書の記述の時代的変化を示す貴重な史料となっている。

384年前出版のルター訳「メリアン聖書」、ルーテル学院で原本公開
展示されたメリアン聖書(原本)。縦40.7センチ、横28.8センチ、厚さ10.5センチとかなりの大判。表紙は木の板に皮を貼って作られており、重さは約7キロ。

メリアン聖書の特別展では、メリアン聖書(原本)の他に、同図書館が所蔵するルターの生前に出されたルター著作全集(イエナ版、原本)や、12月聖書や1545年の新旧約聖書などの復刻版が展示された。また、メリアン聖書内の挿絵をプリントしたブックバッグやポストカードも販売され、真下弥生・同大非常勤講師(美術史)による解説も行なわれた。メリアン聖書はこの日、ルカによる福音書1章の部分が開かれた状態で展示され、真下講師は同章に挿入されている「受胎告知」の挿絵を中心に解説した。

どこでマリアが天使ガブリエルからイエスの誕生を告げられたか、聖書は詳細を明記していない。そのため、歴代の画家たちは想像を凝らしてこの場面を描いてきた。メリアン聖書の挿絵では、マリアは部屋の中にいる。マリアが家の中、あるいは屋外であっても、ガブリエルより家側にいる構図は、14世紀にロシアで描かれたイコンでも、レオナルド・ダ・ビンチ(1452~1519)の「受胎告知」でも、アルブレヒト・デューラー(1471~1528)の木版画でも、米国人画家ヘンリー・オサワ・タナー(1859~1937)による比較的最近の絵画でも同じだ。

しかし、マリアとガブリエルの位置は、これら4枚全てでマリアが右、ガブリエルが左であるのに対して、メリアン聖書の挿絵は逆。左側よりも右側により重要なものを配することから、イエス・キリストの母であるマリアを右に位置させる例が多いが、メリアンは逆に描いていることが分かる。真下講師によると、メリアン聖書以前にもこうした例は見られるという。

384年前出版のルター訳「メリアン聖書」、ルーテル学院で原本公開
メリアン聖書のルカによる福音書1章の部分に挿入された挿絵。右が天使ガブリエル、左がマリア。左奥の石板らしきものには、アラビア数字で1~10の数字が書かれているのが分かる。

また、挿絵奥に見える石板らしきものには、アラビア数字で1~10の数字が書かれており、十戒を示していると思われる。こうした場合、ヘブライ語の頭文字による表記が多くみられるが、アラビア数字が用いられているのは、テキスト部分に見られるアラビア数字との関連も考えられると、真下講師は解説した。

真下講師はこの他、挿絵部分は銅板による凹版(おうはん)印刷であるのに対し、文字の部分は活版による凸版(とっぱん)印刷と、それぞれ異なる技術により印刷されているため、挿絵部分は文字を印刷した後に貼付けられている構造などを説明した。

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