柔和と自制は問題を未然に解決する 佐々木満男・国際弁護士

2014年4月22日15時08分 コラムニスト : 佐々木満男 印刷
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ある晩、東京渋谷のスターバックス2階の窓際席でコーヒーを飲みながら道行く人々を眺めていた。ふらふら歩いていたほろ酔い加減の若者が、前から来た人にドンとぶつかり、そのまま行ってしまった。

「馬鹿野郎! 人にぶつかってごめんもないのか!」

ぶつけられた人が振り返って怒鳴った。

「馬鹿野郎とはなんだ! てめえ、言葉に気をつけろ」

売り言葉に買い言葉。今度はぶつけた当人が怒り出した。かっとなった被害者は走っていって若者の胸倉をつかんで突き倒した。歩道のコンクリートに頭を打ち付けた若者の頭から血が出ている。

「この野郎!」

起き上がった血だらけの若者と相手との間で取っ組み合いの喧嘩が始まった。たちまち黒山の人だかりになった。やがて数台のパトカーで乗り付けた大勢の警官たちに二人とも逮捕されて連れていかれた。

ハラハラしながら見ていた私は、「殺人事件に発展しなくてよかった」と胸をなでおろした。ささいなことでカッとなって怒りを爆発させたため、一生を棒に振ってしまうことがよくある。何十年も築いてきた友情関係が一瞬にして壊れてしまう。夫婦がお互いに深く傷ついてしまう。自制心を失い感情に支配されて行動すると、多くの場合、思わぬ悲劇を生み出してしまう。

自制心を失わないで柔和でいるためにはどうしたらよいのか。感情的になって相手の挑発に乗らないことである。相手がいくら挑発してきても、それに乗らなければ、空振りに終わってしまう。空振りばかりしていると戦意が失われて、やがて挑発してこなくなるのである。

「どうしても相手を赦せないので裁判にしてください!」と言われて、依頼者と一緒に相手側と和解交渉をしたことがある。感情的になった依頼者がいくら大声で弱点を攻めても、相手側は困った様子ではあったが、決して怒ることなく穏やかに対応していた。何度か話し合いの場を持ったが、結局、和解に至らず、「それでは法廷でお会いしましょう!」との依頼者の最後の捨て台詞で別れた。

「あなたの気持ちはよくわかりますが、これは裁判しても勝ち目はありませんよ」

私は依頼者を説得して、無益な裁判をあきらめてもらった。相手方の自制心の勝利であった。法廷という冷静な裁きの場では、感情的になった方が負ける公算がはるかに大きい。健全な判断ができず、勇み足をしてしまうからである。

問題の解決に取り組む時も同じである。感情的な方が力で押し切って一時的には得するように思われるが、長期的には損する方が多いのである。

渋谷の路上の事件でも、ぶつけられた人が気にしなければそれで済んだことである。また、 ぶつかった若者が、「すいません」と一言謝れば喧嘩にならなかったのである。お互いに感情的に挑発し合ったことが大きな問題になってしまった原因である。

だが、どんな場合にも柔和でいよう、自制しようとしても、人間の力には限度がある。相手があまりにも不当な要求をしてきたり、根も葉もない事実無根の誹謗中傷をしているときは、つい我慢できず感情的に応酬してしまう。これはサタンの思うつぼである。

聖書によると柔和と自制は聖霊の実である。神の愛と霊に満たされて生活する中で実るものである。真の柔和と自制は決して悪の挑発に乗ることはない。復讐が必要なら、神がしてくださる。

佐々木満男

佐々木満男(ささき・みつお)

弁護士。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL. M)。インターナショナルVIPクラブ東京大学顧問。

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