被災地で震災関連の自死と離婚が激増 聖公会の支援センタースタッフが報告

2014年3月24日22時08分 記者 : 佐藤憲一 印刷
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写真をスクリーンに映して被災地と支援の様子を伝える松本さん=23日、東京・石神井教会で

「あれから3年 今、被災地では」と題された「東日本大震災を覚える講演会」が23日午後、石神井教会(日本基督教団)で開かれた。日本聖公会修士で「被災者支援センターしんち」スタッフの松本普さんが、福島県を中心とした支援活動と被災者の自死など厳しさを増す現状について報告した。

震災後、日本聖公会は「いっしょに歩こう! プロジェクト」を展開し、福島県新地町をはじめとする4カ所(ほかに釜石、仙台、小名浜)に拠点を築いて活発な支援を行ってきた。新地町では信徒3人が津波で亡くなり、地震による損壊で磯山聖ヨハネ教会の会堂を失った。

磯山聖ヨハネ教会の歴史は、外国人女教師がこの地に保養に訪れ、1920(大正9)年に日曜学校を始めたことから始まる。1936(昭和11)年に礼拝堂が建てられ、一時は信徒89人を数えるまでになった。住民の多くがクリスチャンになるという、農村伝道が実った稀有(けう)の地域と言われた。

被災地で震災関連の自死と離婚が激増 聖公会の支援センタースタッフが報告
雪の残るなか、丘の上から被災地と海に向かって祈るボランティアの女性たち。(写真:被災者支援センターしんち)

津波で犠牲になった3人は同教会に所属する70代の夫妻と50代の娘さんだった。海岸から50mほどの場所で旅館を営んでいたが、家屋も人も流されてしまった。1960年の南米チリ大地震の際には地震発生から22時間後に6mの津波が日本を襲い、各地に被害をもたらした。その時はこの旅館の玄関まで津波が来たそうで、それがむしろ津波への警戒を薄れさせたのかもしれないと遺族は語っている。

旅館からさらに50mほどの高台にある磯山聖ヨハネ教会は、津波の被害を免れた。被災直後は地域の避難所の役割を担っていたが、揺れによる傾きと損壊が大きかったため、使用不可の判断がなされて取り壊されている。教会員12人すべての家が全壊や流失した。現在、礼拝などは仮設住宅の信徒宅や支援センターで続けており、被災した遺族のうち2人が洗礼堅信を決断したという。

被災地で震災関連の自死と離婚が激増 聖公会の支援センタースタッフが報告
会堂を失った磯山聖ヨハネ教会の人々が、支援センターでミサを行った。(写真:被災者支援センターしんち)

「被災者支援センターしんち」は、新地町役場に近い国道に面した土地に建てられたプレハブ施設で、地域のオープンスペースとして用いられている。被災者の心身のケアと孤立防止を目的とした傾聴、お茶会、映画会、寄席、指圧マッサージボランティア、さらに、夏祭りや郷土物産祭りなどを開催してきた。スタッフは新地町内に8カ所ある仮設住宅に訪問し、自治会と情報交換しながら協働で生活支援を続けている。

「3年を過ぎて4年目に入った被災地では、その時々のニーズを見極めて対応していかなければなりません。継続するものもあれば終結するものもあり、新たに開始する必要も生まれています」と松本さんは言う。仕事を失ったままの人が多い状況を憂慮して、聖公会では介護ヘルパーの資格を取るプログラムを設け、これまで9人が国家試験に合格したという。

地域の主要産業である農業は、原発被害にともなう風評の影響で、米、野菜、牛乳、肉の多くが、市場に卸せないままだという。支援センターにおいて配布したり販売したりしてきた野菜などはすべて公的な検査を通していて、安全性は確保されている。しかし、漁業は今も試験操業しか許されておらず、見通しの立たない打撃を受けている。

公共交通機関は今も復旧していないものが多い。その不便のために就学や就労に難しい面があり、人口は減り続けている。松本さんは、いわゆる「震災関連死」についても触れ、その深刻さを訴える。「被災者の自死が増えています。いまや関連死イコール自殺。その数は3桁に上ります」

報告によれば、宮城や岩手は減る傾向が見られるが、福島の自殺者は増えているという。津波による家や家族の喪失だけでなく、原発被害によって地域のコミュニティーが崩壊し、仕事を奪われ、残された家庭も揺らいでいる。「働きを失ったために、あるいはお父さんが単身赴任したための、離婚が激増しています。悲しい現実です」と松本さん。「物質的な欠落とメンタルな苦しみ、双方を見ていかなければ」

講演後の質疑応答で、今後できることについて尋ねられた松本さんは、「投げっぱなしではない、キャッチボールが不可欠」と、それぞれの地で求められていることを正確に知り、受け止めて動くことの大切さを指摘。その上で、傾聴、指圧マッサージ、歌、ギター、手品、どんなものでも、「みなさんの持っている賜物(たまもの)を使って被災地とつながっていくことです」

「支援センターしんち」の活動を通して、地域の人のキリスト教に対する理解や受け止め方に変化はあったのでしょうか、という問いに対しては、「宣教のためにはやっていません」と言う。スタッフがキリスト教徒だということは知られているので、「結果として、やはりクリスチャンというのは違うなと思われれば結構なことだとは思います」

「大切なのは、被災者の皆さんと歩調を合わせていっしょに歩いて行くことです。そこでは宗教を越えています。仏教徒の人もいれば、無宗教の人もいます。私たちはその時にこそ『イエスさまのスタンス』で、貧しい人、飢えている人、凍えている人、涙している人に、寄り添っていくのです」

講演会の最後に祈りの時が持たれた。「私たちはいま、ここに立たされているのです」と、松本さんは旧約聖書アモス書8章9~12節を朗読した。

――その日が来ると、と主なる神は言われる。わたしは真昼に太陽を沈ませ、白昼に大地を闇とする。・・・見よ、その日が来ればと、主なる神は言われる。わたしは大地に飢えを送る。それはパンに飢えることでもなく、水に渇くことでもなく、主の言葉を聞くことのできぬ飢えと渇きだ。

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