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「そこには十字架がなかった」、カルト集団「摂理」の実態

2006年8月1日18時18分
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 日本でも女性信者が教祖から性的暴力を受けるなどの被害が報告されているカルト集団「摂理(JMS)」。その元信者の男性が1日、本紙の取材に応じた。大学のキャンパス内で信者に勧誘されてから、彼らと共に過ごし、脱会にまで至った自らの体験を語った。


 男性は千葉大学に入学し、遠く離れた田舎の実家から、大学近くのアパートに引っ越してすぐに勧誘された。その日はちょうど、新入生のための歓迎会がキャンパス内で行われていた。男性は、大学で友達と待ち合わせをしていた。すると、いかにも優しそうで「自分は大学院生だ」と話す男に、「友達になりませんか」「先輩の友達がいると今後何かといいよ」などと言葉巧みに誘導され、その男に自分の電話番号を教えた。まだ経験が乏しい新入生を狙った、計画的な勧誘だった。


 その後、何度か電話で連絡を取り合い、度々大学近辺の食堂で昼食を共にした。友人に事情を説明すると、友人は、その男との交際を断るよう男性に勧めたが、「やさしく声をかけてくれる先輩の好意に無視はできない」と思い、会うことをやめなかった。


 回を重ねるごとに、信頼関係も深くなった。毎週日曜日には、その男に誘われて、男の仲間とみられる男女50人ほどが集まるバレーボールの練習と試合に参加した。「少しおかしい」とは薄々感じながらも、「人間関係を壊したくない」という思いが優先し、なかなか関係を切ることができなくなっていたという。


 その日も、いつものように電話で連絡が来て、大学近くの食堂で昼食を共にしていた。すると、その男は突然、自分たちが聖書を学んでいることを男性に打ち明け、それが「人生にとても役に立つものだから、勉強会に来ないか」と、話を持ちかけてきた。


 男性は、同じ大学の先輩ということもあり、その男の人柄に引かれていた。それがどんな宗教団体なのか、名前も知らされないままだったが、「彼の中にあるよいものを勉強会で学べるかもしれない」「少なくとも害にはならないだろう」という思いで勉強会に参加することに合意した。


 勉強会は、大学近くの彼のアパート(数人が共同生活をしていた)で行われた。初めて行ったときは違和感を感じなかったが、「教会」といわれる彼らの生活場所には、「十字架」がなかった。


 男性はもともと仏教徒の家で育ち、聖書に触れたのは「摂理」での学びが初めてであったという。「摂理」の講義プログラムを進めて聖書の学びを深めながら、聖書のすばらしさを知った男性は、クリスチャンになりたいと思うようになった。しかし、男性がその思いを打ち明けると、彼らは「自分たちはクリスチャンではない」と主張。「クリスチャンを尊敬はしているが、彼らと私たちは違う」と話した。


 そこで彼らには内緒で、キリスト教の正統なプロテスタント教会に通うようになった男性は、教会の牧師に相談を持ちかけた。牧師からのアドバイスによって男性は、彼らが「教会」と呼んでいる場所に「十字架がない」こと、そして自らを「クリスチャンだと名乗らない」ことに違和感を感じ、脱会を決意した。


 しかし、脱会するという話を持ち出すことができなくなるほど、男性と「摂理」との関係はすでに強いものとなっていた。とりあえず男性は、彼らとの連絡を切った。男性の脱会の意思をすぐに察知した彼らは、何とかそれを思いとどまらせようと、一日中、何回も執拗に電話をかけたり、果ては男性の自宅のアパートで待ち伏せして、直接連れ戻そうと試みた。


 信者の一人が自宅のアパートで待ち伏せしていたときには、すでに男性は、後の母教会となる教会で、クリスチャンになるという信仰の堅い決心をしていた。アパートで待ち伏せしていたのは、勧誘のときからいつも共に生活し、聖書の学びを男性に指導していたその男であった。男性は、クリスチャンになるという自分の信仰を正直に証しし、「十字架のある」正統なプロテスタント教会でこれからの信仰生活を送ることを話した。信者の男は、最後まで納得はしなかったが、男性の決心が堅いことを知って、あきらめて帰った。「神様が私を守られた。神様の助けなしにはできなかった」と男性は当時を振り返った。


 男性は現在、都内にあるプロテスタント教会に通い、クリスチャンとしての生活を喜びをもって送っている。「教会の祈りと、牧師の的確なアドバイスがなければ、絶対に離れることはできなかった」「教会員の方が、一番苦しいときに私を守り、励ましてくれた」と、教会がカルト脱会の大きな力となったことを証しした。

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