前回のコラムにおいて、トヨタ自動車を例に、規模の大きな共同体における人材活性化の取り組みをお伝えしましたが、50~100人を超える比較的大きな規模の地域教会においても同じような取り組み(下記)がなされ、教勢が維持されている例が見られます。
取り組み例
- 教会の中に複数の小グループが存在し、グループリーダーを中心に比較的自由な独自の活動が行われる。
- グループリーダーは、教会全体のリーダー(牧師)に、グループの活動状況やメンバーの様子を報告し、牧師はそれらの情報を基に、的確な指示を与える仕組みを持つ。
- グループの中には、地域社会との交流を大切にする集まりが存在し、おのずと新しい人材が加わるようになる。また、グループ間を横断する人材や、特定のグループに属さない人材などが存在し、共同体の閉塞化を防ぐ役割を担う。
- 心身の弱さを抱える人に寄り添える、福祉観の高い人材が教会内に存在し、牧師、グループリーダーと連携し、教会内を横断して活動する。
以上のように、比較的大きな規模の教会においては、タテ社会構造を持つ共同体でありながら、共同体(教会)の閉鎖性を防ぐ取り組みが行われ、教勢が維持されているように思います。
小規模単立教会の人材活性化
このような事例に対し、小規模の単立教会の場合、人材が不足し、上記のような取り組みが難しくなります。おのずと絆の強い人間関係が目立ち、新たに地域住民が集いにくい閉鎖的な環境が育っていきます。(参考:日本人に寄り添う福音宣教の扉(243)絆の強過ぎる共同体(教会)を訪ねるのは難しい)
教会のウチとソトが区別され、教会の外から教会の中に入りにくい環境となり、宣教は滞ります。一般の日本人にとって、教会はいつも同じ人たちが集まる(怪しい)宗教団体ですから、関心はあっても教会の中に入るには、相当の勇気が必要になります。
新しい人材が増えない教会は一層閉鎖的になり、宣教熱心な信徒ほどつらさを感じるようになります。教会の活力は次第に損なわれてしまいます。
大胆な対策が求められる
小規模単立教会の多い日本のプロテスタント教会は、上記のようなリスクを抱えながら、懸命に教勢を維持しようと努めているように思います。
対策の方針は、絆の強い教会の良さを維持しつつ、教会内に新しい人材を招き入れることですが、以下のような対策があると考えています。前述した比較的規模の大きな教会においても有効な対策です。
これらの対策は、一般社会と競合する内容が多く、中途半端な対応は逆効果になるかもしれません。また、本来の信仰に基づく教会活動が疎かになる危険もあり、長期にわたるビジョンと計画性を持って行うことが重要です。
・一般の日本人が誰でも、またいつでも教会堂に入り、祈れる場を設ける
教会は共同体ですが、その中に入ることを意識させない工夫です。普段、神社などで祈る習慣のある日本人にとって、有効な教会への入り口になります。
・勉強会、研究会、福祉活動、教育活動、サークル活動などテーマを絞って集える場を設定する
教会(共同体)に加わるのではなく、教会で行う活動に参加することだけを勧めるなら、比較的容易に人が集まります。教会(共同体)に加えられる以前の、入り口の働きに成り得ます。
・事業活動の実施
教会活動と親和性の高い事業を行うことで、地域住民との関わりを増すことができます。競合する一般事業者の活動より品質を上げる知恵が求められます。
・地域の冠婚葬祭場になる
冠婚葬祭など、日本人が祈りたい局面で祈りを導けるのは、訓練を受けた信徒や牧師だけです。日常的に存在する冠婚葬祭の拠点として教会堂が用いられるなら、日本宣教は大きく進むでしょう。特に地域住民のエンディングに寄り添い、葬儀や記念会を日本文化に寄り添って行うことは極めて有効です。
・観光などの名所になる
観光地や記念の場所に立地する教会は、その地域にふさわしい名所を提供することで、多くの日本人が訪れるようになります。日本で最も多くの人が集う教会は、長崎県の大浦天主堂ですが、観光と礼拝を兼ね、多くの人が教会を訪れています。
・博物館、展示場になる
日本におけるキリスト教の歴史や、日本文化に与えた影響をまとめ、教会内で展示案内することは、日本人が改めてキリスト教を理解する助けになると思います。
キリスト教を学びたいと願う多くの日本人に対し、地域教会が地域に根差したキリスト教の歴史を独自の視点で紹介する場になることで、多くの人が訪れるようになるでしょう。
以上のようなことは、信仰によってつながる絆の強い教会(共同体)をあえて表現しない活動です。これまで軽視されてきたことかもしれません。しかし、キリスト教信仰に好感を持ちながら、絆の強い共同体には近づけない日本人の気持ちに寄り添い、教会への入り口として検討する価値は十分にあると考えています。
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