イエメンはアラビア半島南端に位置し、紅海とアデン湾に面した国で、人口は約3300万人だ。古代から交易の要所として栄え、「幸福のアラビア」と呼ばれた時代もあった。かつてはコーヒーや香料で知られたが、近年は紛争と貧困の象徴のように語られることが多い。長年にわたる内戦、部族対立、近隣諸国による代理戦争の舞台となり、国土は荒廃してきた。現在は、国土の大部分を掌握するシーア派武装組織フーシ勢力と、追放された大統領を支持するスンニ派勢力に分断され、アルカイダやISなどの過激派も混在する複雑な情勢が続いている。
爆撃と空襲は市民生活を容赦なく破壊し、学校・病院・市場までもが攻撃の対象となってきた。多くの子どもたちは十分な食料や教育を得られず、飢餓と貧困と隣り合わせの生活を送っている。周辺諸国の干渉や欧米諸国による武器供与も事態を悪化させてきたことは否めない。まさに「地上で最も悲惨な人道危機」と言われる現実が、今もイエメンを覆っている。
しかし、この闇のただ中にあって、消えることのない希望の灯がある。厳しい迫害の中で、イエス・キリストを信じるイエメン人が確実に起こされているのである。ラジオ放送や秘密裏の聖書配布、個人的な証し、そして主が与えられる夢と幻を通して、多くの人が福音に触れている。
信徒たちは警戒を要する環境の中で、家族や文化を尊重しつつ、少人数の密かな集まりで礼拝を守り、互いに励まし合っている。この苦難の中にあっても、主は確かに働いておられる。近年、イエメン人の間では歴史上類を見ない形でキリスト者が起こされているといわれており、アラビア半島の中でも特に福音の実が見られる地域の一つとなっている。
「この深い苦難と紛争の地に、平和の君が、和平と回復をもたらしてくださるように」と祈る声が世界中に広がっている。どうか、迫害の中にあるイエメンの信徒たちが、文化と家族への尊重を保ちつつも、主に忠実に従い続けることができるように、また、飢餓と戦争に苦しむ人々に、福音が届くように心を合わせて祈っていただきたい。
■ イエメンの宗教人口
イスラム 99・9%
プロテスタント 0・02%
カトリック 0・04%
正教会関係 0・03%
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