夫の薬物依存と離婚を経て、ミリアムは子どもたちと共に新しい生活を始める。教会の支援のもと、働きながら、ムスリムから改宗した若い女性たちを支える活動にも尽力する。しかし、この奉仕の故に、やがて彼女たちの安全が脅かされることになるのだ。(第1回から読む)(人物の本名は伏せて変えてある)
ある日、ミリアムの知人が、新たにイスラム教から改宗した若い女性を、ミリアムが紹介していたアパートの一室に連れてきた。だが、その女性の出自を知った瞬間、ミリアムの心に警鐘が鳴るのを感じた。彼女は地元でも知られた人物の娘であり、両親が彼女を捜索しているのは明らかだった。
「このままでは他の子たちにも危険が及ぶ」と判断したミリアムは、その女性を自宅に引き取ることに決めた。
数日後、恐れていたことが起きたのだ。警察がミリアムの家を訪れ、例の女性を探しに来たのである。彼らはミリアムのパスポートや身分証を確認したが、その場では彼女に何の処置も取らず、女性だけを連れ戻していった。
しかし、ミリアムは直感的に悟った。「このままでは、私も子どもたちも危険だ」と。彼女はすぐに引っ越しを決め、しばらく教会からも距離を置くことにした。
しばらくして教会に戻ると、彼女をいつも助けてくれていた牧師が突然、家族と共に国外へ逃れていたことを知った。何の知らせもなく、突然の別れだった。
「孤独と絶望に押しつぶされそうでした。でも、主は常に私と共にいてくださると信じていました」とミリアムは振り返る。
さらに彼女の苦難は続いた。彼女を信仰に導いた夫が亡くなり、教会の友人たちは警察の介入を恐れてミリアムとの関係を断ってしまったのだ。
「私と子どもたちだけが取り残されました。未来は見えず、頼る人もいませんでした。もはや主だけが、私の頼ることのできる全てだったのです」
だが、その神への信仰さえも、次に起きるさらなる試みによって試されることになる。(続く)
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