米南部ジョージア州で4月初め、「信教の自由回復法」(RFRA)が成立した。州政府による個人の信教の自由に対する制限を最小限にするよう定めるもので、州レベルで同法を定めるのは、これで計30州となった。
RFRAは、1993年に連邦法が成立。当初は連邦政府や州政府、地方自治体に適用されていたが、連邦最高裁が97年、連邦政府のみに適用されるとする判決を下したことで、州政府などに適用する場合は、別途州法を制定することが必要となっていた。
ジョージア州のRFRAに関する上院法案第36号(英語)は、州上院では3月4日に32対23で、州下院では同5日に96対70で可決しており、ブライアン・ケンプ知事(共和党)が4月4日に署名し、成立した。
州上院の採決は完全に党派に沿って行われ、共和党議員は全員が賛成、民主党議員は全員が反対した。州下院では、民主党議員1人が造反して賛成に回り、共和党議員2人が造反して反対した。
同様の法案は2016年にも州上下院で可決されていたが、当時のネイサン・ディール知事(共和党)が拒否権を発動し、不成立に終わっていた。当時は、LGBT(性的少数者)らの権利を侵害する内容だとして、アップルやマイクロソフト、ウォルト・ディズニーといった大手企業やナショナル・フットボール・リーグ(NFL)などが、ディール知事に対し拒否権を発動するよう圧力をかけていた。
ジョージア州のRFRAは、「州政府は、たとえその負担が一般的に適用可能な規則によるものであっても、人の宗教の実践に実質的な負担をかけてはならない」と定めている。その上で、州政府が人の宗教の実践に実質的な負担をかけることができるのは、「やむを得ない州政府の利益の促進」において、「そのようなやむを得ない州政府の利益を促進するための最も制限の少ない手段」であることを証明した場合に限るとしている。
また、信教の自由を侵害された人が法的手段に訴える機会も認めており、「宗教の実践」の範囲については、次のように定めている。
「『宗教の実践』とは、宗教的信仰体系によって強制されるか否かを問わず、あるいは宗教的信仰体系の中心的なものであるか否かを問わず、あらゆる宗教の実践を意味する。本州憲法第1条第3項および第4項、または合衆国憲法修正第1条の自由行使条項に基づく宗教の実践または遵守を含むが、これらに限定されない」
ジョージア州のRFRAで禁じられている、人の「宗教の実践」に負担をかける主体には、「州法の色彩の下に行動する、あらゆる支局、部門、機関、団体、役人、その他の人物、また、州のあらゆる政治的部署」が含まれる。
米キリスト教法曹団体「自由防衛同盟」(ADF)は声明(英語)を発表し、ジョージア州でRFRAが成立したことを、良心の権利を守る努力の勝利として歓迎した。ADFのグレッグ・チャフエン上級顧問は次のように語った。
「私たちの法律は、全ての人が信仰に従って生活し礼拝する自由を守るべきです。この法律は、ジョージア州民の信教の自由の権利を侵害する政府の政策を見直す際に、裁判所が用いるべき賢明な比較衡量を提供するものです」
「この法律は、他の29州の法律と類似しており、全ての意見の相違に誰が勝つかを決定するものではありませんが、宗教的信条や政治的権力に関係なく、政府の行動が個人の宗教的信条を貫く自由を侵害する場合に、全ての人が公平な審理を受けることを保証するものです」
RFRAなどの情報をまとめているウェブサイト(英語)によると、他に州レベルでRFRAが制定されているのは、アラバマ、アリゾナ、アーカンソー、コネチカット、フロリダ、アイダホ、イリノイ、インディアナ、アイオワ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピ、ミズーリ、モンタナ、ネブラスカ、ニューメキシコ、ノースダコタ、オクラホマ、ペンシルバニア、ロードアイランド、サウスカロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ユタ、バージニア、ウェストバージニア、ワイオミングの29州。