Skip to main content
2025年6月16日16時38分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍

【書評】『親ガチャという病』 流行語を通して日本の趨勢を知ることができる啓蒙的一冊

2022年4月13日10時56分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
【書評】『親ガチャという病』 流行語を通して日本の趨勢を知ることができる啓蒙的一冊+
土井隆義ほか著 『親ガチャという病』(宝島社 / 宝島社新書、2022年3月)

4月に入り、新しいステージに進まれた人も多くおられるだろう。大学生となり、親元を離れて生活を始めた人、新社会人として、朝早くから満員電車に揺られることになった人など、いろいろ変化が訪れる時期である。

個人的なことながら、わが家では、末っ子の次女が高校生となった。真新しい「JK」となった娘は、今までの寝坊癖はどこへやら。最近は自分で時間通りに起きられている。

そんな次女から半年ほど前に教えてもらったネットスラングに「親ガチャ」という言葉がある。その時は意味を知って、「ますます世知辛い世の中になったな」くらいにしか思っていなかった。しかし、あれよ、あれよという間に「親ガチャ」は市民権を得、2021年の流行語大賞にノミネートされ、ベスト10にランクインする偉業(?)を達成してしまった。そして、本書のように本のタイトルとして取り上げられるほどになっている。

本書は、「親ガチャ」について、「くじを引き当てるかのように、生まれてくる子どもは親を選ぶことができない」という前提に立ち、「自らの運命をせせら笑うかのような自虐、諦めのムードが漂う」ものであり、「内に秘めたとてつもない悲しみをごまかしているかのようにさえ感じられる」言葉であるとし、閉塞感や生きづらさといった日本の病理を言い表した言葉ではないかと述べている(2~3ページ)。この言葉が流行語として人々に浸透するまでの経緯と、この言葉を使う(主に)若者たちの心情を、社会学者の土井隆義氏が詳述しているのが、第1章「親ガチャという病 生きづらさのなかで固定化されてゆく “自己像“」である。

本書は「親ガチャ」以外にも、「無敵の人」「反出生主義」「ルッキズム」「正義バカ」「ツイフェミ」「キャンセルカルチャー」といった用語についての解説とその実態が、識者たちとの対談形式でつづられている。そもそもこれらの用語自体を知らないことが多かったので、大いに勉強になった。同時に、おのおのが言い表している分野には違いがあれど、それらを生み出した背景に目を留めると、かなり共通する部分が存在することに思い至らざるを得ない。それは、現代日本にある独特な「空気」である。

日本社会はいつのことからか、互いに熱く語り合ったり、意見を異にする者同士が主張をぶつけ合ったりすることを嫌うようになってしまった。そうすると、表面上はおのおのが「平和を作る者」となり、表立った争いは生じづらい。しかし、内心はどうだろうか。葛藤を抱えながらそれを表に出せない個々人の内面は、表面的な凪(なぎ)とは裏腹に、大嵐が吹き荒れているということもあるだろう。まるで冷戦のような状態が、日本全体を空気のように覆っているのではないか。本書はそのことを赤裸々に描き出しているのである。

「平和な日常」を醸し出せば醸し出すほど、実は人々の「体内圧」は高まっている。そして、自分が他者よりも優位に立った瞬間、居丈高に相手をののしったり、完膚なきまでに相手の社会的立場を(合法的に)打ち壊したりすることに躊躇(ちゅうちょ)しない。これが「正義バカ」や「キャンセルカルチャー」として表れてくることになる。そして、その反対が「ルッキズム」や「反出生主義」となって表出してくる。本来、「出生にとらわれずに自分の才能、能力を駆使すれば、誰でも夢がかなう」という「和製アメリカンドリーム」のようなビジョンは、大いに奨励されていたはずである。しかしそれが今や、皮肉や自虐的に用いられている。このことは、教会で若者たちと関わる中で体感する現象と軌を一にしているといえよう。

いつの頃からだろう。説教で「ビジョンを持って主と共にやってみよう!」と語るよりも、「今のそのままのあなたを神様は受け入れてくださるのです」と語る方が、若者の受けがよくなってしまったのは。ともに必要な概念ではあるが、最近とみに後者へ偏ってしまう自分を発見し、愕然(がくぜん)としてしまう。

そういった意味で、本書は私たちが向き合う日本社会の現状を赤裸々に描き出している。加えて、どんな言葉が大衆の心をつかみ、そして当初の意味合いからどんな「ねじれ」が生じて流行語となるかまでを端的に解説してくれている。その変化の軌跡をたどることで、クリスチャンとして、こうした現象をどう判断し、どう向き合うべきかが見えてくるようになる。

例えば、「親ガチャ」とは、「幼少期に親から虐待を受けて育った経験を持つ若者たちが、自らの生きづらさを周囲の友人たちに語る際に使い始めた言葉」である。そこには、「いくら言葉を尽くして伝えようとしても、自分のこの気持ちはどうせ分かってなどもらえないだろう」という考えが根底にあり、「相手との相互理解の努力を放棄し、むしろ会話の相手に余計な負担をかけまいと気遣って、自分の生きづらさをぼかして相手に伝えるために工夫を凝らした結果の産物」なのである(53ページ)。しかし、これが社会に浸透していくにつれ、いつしか「親ガチャ成功」というように、裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ったという意味にも使われるようになり、経済格差を言い表す言葉へと変質してしまった。

ここに日本の「空気」が存在する。私たちが向き合うべきは、この「気遣いの言葉」を「流行語」へと変質させてしまうこの「歪み」である。これこそ、日本人を生きづらくさせ、表面的には争いを起こさないが、水面下で精神戦が常に行われているというアンビバレントな実態を生み出す根源となっている。

教会は、すべての人を救いに導くという「大宣教命令」を受けている。しかしそのためには、まず「現実」を知る必要がある。そして宣教フィールドは、時々刻々と変化している。そのことを短時間でしっかりと教えてくれる一冊である。ぜひ手に取って読んでいただきたい。

■ 土井隆義ほか著 『親ガチャという病』(宝島社 / 宝島社新書、2022年3月)

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

  • ツイート

関連記事

  • 【書評】『高校生がこれからの人生を生き抜くためのアントレプレナーシップ』『高校生に贈る7つのエール』

  • 若者2千人以上と向き合ってきた ”ドラマー牧師” が届ける31の答え 『いいんだよ、昨日までのこと全部。』

  • 神学書を読む(76)『ICU式「神学的」人生講義 この理不尽な世界で「なぜ」と問う』

  • 牧師の私に「聖なる保険屋」であることを教えてくれた『超★営業思考』

  • 神学書を読む(72)アカデミズムの幕の内弁当(豪華版)! 佐藤優氏の集中講義を忠実に再現した『「悪」の進化論』

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 自分の考えを大切に生きよう 菅野直基

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.