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【書評】『親ガチャという病』 流行語を通して日本の趨勢を知ることができる啓蒙的一冊

2022年4月13日10時56分 執筆者 : 青木保憲
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【書評】『親ガチャという病』 流行語を通して日本の趨勢を知ることができる啓蒙的一冊+
土井隆義ほか著 『親ガチャという病』(宝島社 / 宝島社新書、2022年3月)

4月に入り、新しいステージに進まれた人も多くおられるだろう。大学生となり、親元を離れて生活を始めた人、新社会人として、朝早くから満員電車に揺られることになった人など、いろいろ変化が訪れる時期である。

個人的なことながら、わが家では、末っ子の次女が高校生となった。真新しい「JK」となった娘は、今までの寝坊癖はどこへやら。最近は自分で時間通りに起きられている。

そんな次女から半年ほど前に教えてもらったネットスラングに「親ガチャ」という言葉がある。その時は意味を知って、「ますます世知辛い世の中になったな」くらいにしか思っていなかった。しかし、あれよ、あれよという間に「親ガチャ」は市民権を得、2021年の流行語大賞にノミネートされ、ベスト10にランクインする偉業(?)を達成してしまった。そして、本書のように本のタイトルとして取り上げられるほどになっている。

本書は、「親ガチャ」について、「くじを引き当てるかのように、生まれてくる子どもは親を選ぶことができない」という前提に立ち、「自らの運命をせせら笑うかのような自虐、諦めのムードが漂う」ものであり、「内に秘めたとてつもない悲しみをごまかしているかのようにさえ感じられる」言葉であるとし、閉塞感や生きづらさといった日本の病理を言い表した言葉ではないかと述べている(2~3ページ)。この言葉が流行語として人々に浸透するまでの経緯と、この言葉を使う(主に)若者たちの心情を、社会学者の土井隆義氏が詳述しているのが、第1章「親ガチャという病 生きづらさのなかで固定化されてゆく “自己像“」である。

本書は「親ガチャ」以外にも、「無敵の人」「反出生主義」「ルッキズム」「正義バカ」「ツイフェミ」「キャンセルカルチャー」といった用語についての解説とその実態が、識者たちとの対談形式でつづられている。そもそもこれらの用語自体を知らないことが多かったので、大いに勉強になった。同時に、おのおのが言い表している分野には違いがあれど、それらを生み出した背景に目を留めると、かなり共通する部分が存在することに思い至らざるを得ない。それは、現代日本にある独特な「空気」である。

日本社会はいつのことからか、互いに熱く語り合ったり、意見を異にする者同士が主張をぶつけ合ったりすることを嫌うようになってしまった。そうすると、表面上はおのおのが「平和を作る者」となり、表立った争いは生じづらい。しかし、内心はどうだろうか。葛藤を抱えながらそれを表に出せない個々人の内面は、表面的な凪(なぎ)とは裏腹に、大嵐が吹き荒れているということもあるだろう。まるで冷戦のような状態が、日本全体を空気のように覆っているのではないか。本書はそのことを赤裸々に描き出しているのである。

「平和な日常」を醸し出せば醸し出すほど、実は人々の「体内圧」は高まっている。そして、自分が他者よりも優位に立った瞬間、居丈高に相手をののしったり、完膚なきまでに相手の社会的立場を(合法的に)打ち壊したりすることに躊躇(ちゅうちょ)しない。これが「正義バカ」や「キャンセルカルチャー」として表れてくることになる。そして、その反対が「ルッキズム」や「反出生主義」となって表出してくる。本来、「出生にとらわれずに自分の才能、能力を駆使すれば、誰でも夢がかなう」という「和製アメリカンドリーム」のようなビジョンは、大いに奨励されていたはずである。しかしそれが今や、皮肉や自虐的に用いられている。このことは、教会で若者たちと関わる中で体感する現象と軌を一にしているといえよう。

いつの頃からだろう。説教で「ビジョンを持って主と共にやってみよう!」と語るよりも、「今のそのままのあなたを神様は受け入れてくださるのです」と語る方が、若者の受けがよくなってしまったのは。ともに必要な概念ではあるが、最近とみに後者へ偏ってしまう自分を発見し、愕然(がくぜん)としてしまう。

そういった意味で、本書は私たちが向き合う日本社会の現状を赤裸々に描き出している。加えて、どんな言葉が大衆の心をつかみ、そして当初の意味合いからどんな「ねじれ」が生じて流行語となるかまでを端的に解説してくれている。その変化の軌跡をたどることで、クリスチャンとして、こうした現象をどう判断し、どう向き合うべきかが見えてくるようになる。

例えば、「親ガチャ」とは、「幼少期に親から虐待を受けて育った経験を持つ若者たちが、自らの生きづらさを周囲の友人たちに語る際に使い始めた言葉」である。そこには、「いくら言葉を尽くして伝えようとしても、自分のこの気持ちはどうせ分かってなどもらえないだろう」という考えが根底にあり、「相手との相互理解の努力を放棄し、むしろ会話の相手に余計な負担をかけまいと気遣って、自分の生きづらさをぼかして相手に伝えるために工夫を凝らした結果の産物」なのである(53ページ)。しかし、これが社会に浸透していくにつれ、いつしか「親ガチャ成功」というように、裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ったという意味にも使われるようになり、経済格差を言い表す言葉へと変質してしまった。

ここに日本の「空気」が存在する。私たちが向き合うべきは、この「気遣いの言葉」を「流行語」へと変質させてしまうこの「歪み」である。これこそ、日本人を生きづらくさせ、表面的には争いを起こさないが、水面下で精神戦が常に行われているというアンビバレントな実態を生み出す根源となっている。

教会は、すべての人を救いに導くという「大宣教命令」を受けている。しかしそのためには、まず「現実」を知る必要がある。そして宣教フィールドは、時々刻々と変化している。そのことを短時間でしっかりと教えてくれる一冊である。ぜひ手に取って読んでいただきたい。

■ 土井隆義ほか著 『親ガチャという病』(宝島社 / 宝島社新書、2022年3月)

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

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