老いに向かう喜び 安食弘幸

2020年9月16日07時04分 コラムニスト : 安食弘幸 印刷
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私たちは落胆しません。たとえ私たちの外なる人は衰えても、内なる人は日々新たにされています。(2コリント4:16)

100歳を迎えた老人に聞きました。「100歳になった気分はいかがですか」。老人は答えました。「そうですね、赤ん坊に戻った気分です。毛は無い、歯は無い、歩けない。そしておむつをさせられている」

一般に老いていくことに明るいイメージはありません。「老化」「老体」「老眼」「老顔」「老害」「老醜」。どの言葉も自分の身に当てはめて考えるとうれしい表現ではありません。

しかし、歳を重ねることを積極的に評価した人もいます。英国の詩人ロバート・ブラウニング(1812〜89)もそうです。彼の代表作「ラビ・ベン・エズラ」に、彼の「老い」に対する積極的な態度が忌憚(きたん)なく表現されています。

この詩は32連からなる詩ですが、その第一連を紹介します。

老いゆけよ、我と共に!
最善はこれからだ。
人生の最後、そのために最初も造られたのだ。
我らの時は、聖手の中にあり
神言い給う「全てを私が計画した。青年はただ、その半ばを示すのみ。
神に委ねよ。全てを見よ。しかして恐れるな!」と。

“Grow old along with me!
The best is yet to be.
The last of life, for which the first was made;
Our times are in his hand who saith ‘A whole I planned.
Youth shows but half; trust God; see all nor be afraid!’”

「老い行けよ、我と共に!」、「私と一緒に歳を取れ!」と命令形で書かれています。普通だったら「歳は取りたくない。老人になりたくない」と思います。しかし、人間誰でも歳を取ります。体力や記憶力などが衰えていきます。だが、魂は日増しに成長します。ですから、この地上で魂を成長させるだけ成長させてから、次の世界に行くのです。

だから詩人は言います。「最善はこれからだ。人生の最後、そのために最初も造られたのだ」。「人生の最後が最善である」というのです。素晴らしい句です。

「我らの時は聖手の中にあり」。“Our times”「時」が複数形ですから、少年期、青年期、壮年期、老年期の全てです。“His hand” “H” が大文字ですから「神の御手」のことです。つまり、私たちの人生の全てが神の御手に導かれているのです。人生は訳の分からない運命や偶然に支配されているのではありません。

ですから次に詩人は言います。「神言い給う『全てを私が計画した』」。“A whole” 一つの全体です。神が全てを完全なものとして計画されているのです。生まれてから死ぬまでが一つの全体として計画されているのです。

ですから「青年はただ、その半ばを示すのみ」。青年は ”shows but half” ほんの半分。だから「半分で全体を判断するな。現在の自分だけを見てがっかりするな」ということです。従って「神に委ねよ。全てを見よ。しかして恐るな!」。

この詩の作者ブラウニングは長い不遇の時代を過ごしました。30歳を過ぎても、彼の詩集は売れませんでした。しかし当時有名な女流詩人エリザベス・バレットの紹介で、彼の詩が一躍脚光を浴びるようになったのです。

従ってこの詩は、彼自身の人生を表しているのです。人生の途中で、断片的な知識で判断してはいけないのです。歳を重ねることは人生の完成へと向かうことなのです。

恐れず老年期に向かってまいりましょう!

安食弘幸

安食弘幸(あんじき・ひろゆき)

1951年、島根県出雲生まれ。関西学院大学社会学部卒。大学時代は硬式野球関西六大学リーグの強打者として活躍。関西聖書学院卒。セント・チャールズ大卒。哲学博士。現在、日本キリスト宣教団峰町キリスト教会主任牧師。NHK文化センター「聖書入門講座」「カウンセリング講座」講師、JTJ宣教神学院講師、とちぎテレビ「ゴスペルジェネレーション」の説教者。また、国内外の教会や一般企業、ミッションスクール、病院、福祉施設で講演活動を行っている。

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