現役牧師が心を込めてつづった「子育て本」ならぬ「親育ち本」! 『世界に通用する「個性」の育て方』

2018年12月19日19時20分 執筆者 : 青木保憲 印刷
+現役牧師が心を込めてつづった「子育て本」ならぬ「親育ち本」! 『世界に通用する「個性」の育て方』
後藤哲哉著『世界に通用する「個性」の育て方 聖書に学ぶ「自己肯定感と自立心」を高める子育て』(日本実業出版社、2018年11月)

キリスト教の牧師をしていると、教会内で聖書だけを語っていればいいと思われがちだが、実はそうではない。教会に来られる方からの相談に乗ったり、教会で過ごしている子どもたちやその親御さんたちと触れ合ったりする。その中で聖書の原則や世界観を分かりやすくかみ砕いて、目の前にいる方々に適用させていくことがどうしても必要になってくる。

そのようなニーズに対し、今回取り上げる後藤哲哉先生の著書『世界に通用する「個性」の育て方 聖書に学ぶ「自己肯定感と自立心」を高める子育て』は大いに役立つことであろう。肩書にも書かれているが、自身が現役の牧師(クロスロードチャーチ岡山)であると同時に、心理カウンセラーとして活躍されている。ちなみにアマゾンや各有名書店でも本書がフューチャーリングされていると聞く。「牧師の書いた本が世の中で受け入れられている」という事実は、とても励まされる。後藤先生とは直接の面識はないが、本書を手に取って大いに励まされた。心から御礼申し上げたい。

さて、本書は200ページ足らずのとても読みやすい内容である。テーマはタイトルからも分かるように「子育て」。そして子育ての世界観を聖書に負っている。

しかしページをめくりながら思わされたのは、第1章、2章までは「子育て」本というよりも、「夫婦関係」本ではないかということ。ここに他の子育て本とは異なる本書の魅力がある。つまり、子育てとは夫婦の在り方から始まっていて、単に親が個人でどれだけ子どものためにしてやれるか、という問題ではないということである。だから本書の序盤は、子どものことを語る形式を取りながらも、実は「夫婦が愛し合っているか」「まず夫婦が良き家庭を作り上げようとしているか」という、親の在り方を問うているのである。

そういった意味で本書は、「子育て本」というよりも「親育ち本」に加えてもいいだろう。その根拠は明白である。創世記の有名な箇所が底流にある。

こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。(創世記2:24〜25)

日本式の子育ての特異性をあえて際立たせるためか、本書では「西洋では」という言い方で、聖書に基づいた夫婦観、そこから引き出される子育て観が丁寧にしたためられている。とはいえ、あくまでも「一般書」としての体を大切にするためか、キリスト教的な色合いは多少薄められている。聖書の言葉を土台としながらも、決して押し付けがましくない語りにしようと著者の気配りが隅々にまで行き届いていると感じられた。本書を読むことが想定される若夫婦(だとは限らないが・・・)の心情をしっかりとおもんぱかった作りになっているとも言えよう。

第3章から子どもにフォーカスした流れになっているが、やはり根底に親である読み手のリアリティーを意識させることを忘れていない。副題にある「自己肯定感と自立心」は、子どもに与えることができるとしたら、それは与え手である親もこれらをすでに体得していることが理想とされているのだろう。この論調は、私も3人の子どもと向き合っている者であるため、大いに教えられ、自らの足りないところを優しく指摘されたような気がする。

ただ、多少気になったこともここで述べさせていただきたい。それは、どうしても本書の前提が「夫婦」単位であるため、シングルマザーやシングルファーザーである方が読むときに、違和感を拭い去れないのではないかという危惧である。

子どもに自己肯定感を与えるためには、夫婦で仲の良い家庭を築かなければならない、というのは正論である。しかし、その家庭が破綻してもなお子どもを養育しなければならない状況が、日本では次第に増えつつある。そのような方にとっても、子どもは「正しく育ってもらいたい」と願うことだろう。

その前提となる状態(婚姻関係によって生まれた家庭)にたどり着けない、またはその前提をすでに壊してしまった、という方々がどうしたら本書で書かれているような親子関係を生み出せるようになるか、にまで踏み込んでいただけたらもっとよかったように思う。事実、教会の中で受ける相談には、そういった状態からどうしましょうか、という類のものが多くなってきている。

教会が「父の日」や「母の日」をお祝いしづらいとよく聞く。実はその現状を変革するためにも本書はとても有益である。しかし、聖書的な価値観に基づいた素晴らしい主張に耳を傾けてもらうためにも、段階的にステップアップできる道筋を示すことができたらなおよかったように思う。

とはいえ、本書は教会の勉強会のみならず、一般の教育相談や学び会で輪読して、各々が率直な思いを語り合うのに最も適したテキストだと言えよう。ぜひ一人でも多くの方に手に取って読んでもらいたい。そして、私も含めて「子育て世代」にある者は、一緒に実践していきたいものである。

■ 後藤哲哉著『世界に通用する「個性」の育て方 聖書に学ぶ「自己肯定感と自立心」を高める子育て』(日本実業出版社、2018年11月)

青木保憲

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

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