国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」一般公開始まる

2018年11月24日21時31分 印刷
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国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」と、「神奈川の記憶」展の企画元となっている連載記事を担当した朝日新聞記者の渡辺延志(のぶゆき)さん=22日、横浜市歴史博物館(横浜市都筑〔つづき〕区)で
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今月19日に発表された国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」の一般公開が、23日から横浜市歴史博物館(横浜市都筑〔つづき〕区)の「神奈川の記憶」展で始まった。信仰画は、多数のキリシタン遺物を展示する澤田美喜記念館(神奈川県大磯町)が所蔵していた。展示では、記念館が所蔵する他のキリシタン遺物に加え、フィリピンで日本軍に殺害された関東学院(横浜市金沢区)元教師のジェームズ・コベル宣教師に関する資料など、キリスト教関連のものも複数展示されている。

現存する最古級の信仰画 西暦表記も?

「ご聖体の連祷と黙想の図」は、長さ320センチ、幅22センチの薄手の和紙に、墨で文字と絵が描かれた巻物。ミサで用いる聖体(パン)をたたえる連祷(ご聖体の連祷)が仮名文字で書かれ、中央部分にマリアとキリストの生涯を伝える15の場面(黙想の図)が描かれている。

末尾には「御出世以来千五百九十二年」と記載されており、イエス・キリストの誕生を基準とする西暦表記と見られる。これが本当であれば、フランシスコ・ザビエルによる日本宣教が1549年に始まってから、約40年後の1592年に制作されたことになる。放射性炭素を用いた年代測定でも、1556〜1633年という結果が出た。また「黙想の図」に描かれた男性は、日本刀と見られる刀1本を、鞘尻が上向きになるように帯刀している。江戸時代(1603年〜)であれば、大小2本の刀を鞘尻が下向きになるように帯刀しているはずだ。そうした特徴も、末尾に記載された年の正しさを示唆する。

ポルトガル語訛(なま)りのラテン語の連祷を仮名文字で

文字の部分は、カトリックの司祭などに依頼して調べたところ、ラテン語の「ご聖体の連祷」を聞き取り、それを当時使われていた変体仮名で書き留めたものであることが分かった。また、書き留められたラテン語はポルトガル語訛りで、ポルトガル人宣教師が祈った連祷を、日本人信者が直接聞き、書き留めたのではないかと考えられる。

「ご聖体の連祷」は、全文が確認されているものは国内では他に、大阪府茨木市で見つかった1例しかなく、今回で2例目。さらに記念館所蔵のものは、茨木市のものよりも正確に書き留められているという。

国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」一般公開始まる
国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」(澤田美喜記念館所蔵)。仮名文字による「ご聖体の連祷」と、15場面の絵による「黙想の図」からなる。(写真:横浜歴史博物館提供)

初の日本画風「十五幻義図」

「黙想の図」は、受胎告知やキリストの受難などを15の場面で描いた「十五幻義図」と呼ばれるもの。各場面や表紙画の上部には、イエズス会の紋章中に含まれる「IHS」の文字と十字架が描かれている。欧州では多く見られる作品だが、国内ではこれまで3例しか見つかっていない。そのうち1つは長崎の原爆で消失したため、これが通算4例目、現存するものとしては3例目となる。

しかし現存する他の2例はいずれも西洋画で、17世紀以降の江戸時代に制作されたことが分かっている。一方、「黙想の図」は墨で描かれた日本画で、それよりも古い16世紀末に制作された可能性が高い。さらに「ご聖体の連祷」と「十五幻義図」が共に記されている例はこれまでになく、貴重な資料となっている。

国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」一般公開始まる
15の場面からなる「黙想の図」(写真:同上)

博物館の井上攻(おさむ)副館長によると、1590年代は豊臣秀吉のバテレン追放令(1587年)が出た後だったが、日本の信者は逆に増えた時期だという。そのため、日本にいた宣教師が聖画などを欧州側に依頼する手紙も残っている。そうした時代背景や、日本的な画風、目の粗い和紙が使われていることなどから、「信者が増えていく中で、(信仰を)教える人や(聖画などの)教える道具も足りなくなり、自分たちで作っていったのではないか」と推測する。

新聞の連載記事から生まれた企画展 キリスト教関連も複数

「神奈川の記憶」展は、朝日新聞(神奈川版)掲載の同名の長期連載記事で紹介された資料を中心に展示するもの。この連載は2015年10月に始まり、130話を超える現在も続く。その中から選ばれた20話ほどの関連資料が展示されている。記念館も連載で取り上げられており、展示のために詳しい調査を行ったことで、所蔵する信仰画が国内最古級と判明した。

国内最古級のキリシタン信仰画「ご聖体の連祷と黙想の図」一般公開始まる
フィリピンで日本軍に殺害された関東学院元教師のジェームズ・コベル宣教師に関する展示

展示ではこの他、小さな十字架を首にかけた漁師が刻まれた日本刀の鍔(つば)など、記念館が所蔵する他のキリシタン遺物も展示されている。また、関東学院で「殉教者」として位置付けられているコベル宣教師夫妻や、牧師の平賀孟が終戦翌年に神社の境内で始めたという孤児施設「ボーイズホーム」、澤田美喜が創設した「エリザベス・サンダース・ホーム」と同じように、戦後、米兵と日本人女性の間に生まれた孤児たちを収容したカトリックの「聖母愛児園」など、キリスト教に関係する資料も展示されている。

展示は来年1月14日(月・祝)まで。期間中、ミニシンポジウムや講座など関連事業も行われる。11月25日(日)午後1時からは、「ご聖体の連祷と黙想の図」調査報告会(参加費500円、当日先着順で定員150人)が急きょ開催される。連載の担当記者である渡辺延志(のぶゆき)さん(朝日新聞横浜総局)らが参加する。来年1月6日(日)午後1時〜2時半には、渡辺さんによる講座「関東学院のコベル宣教師とその時代」も行われる。詳しくは、博物館のウェブサイトを。

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