日本人に寄り添う福音宣教の扉(53)王道を歩みたい 広田信也

2018年8月24日19時51分 コラムニスト : 広田信也 印刷
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私が前職のトヨタ自動車に入社した1980年は、ちょうどガソリン自動車の排気ガス対策にめどが立った時期だった。採用された中核技術は、三元触媒システムだった。

この技術は、エンジンから排出される致死量を超える有毒ガスを、排気菅に装着される触媒を通すだけで、大気と同じレベルにまで浄化する画期的なものだった。今ではすべてのガソリン自動車が採用している。

現在のガソリン車は、この技術を磨き上げたおかげで、走る大気浄化装置のようになって世界中に普及した。最近話題の電気自動車や燃料電池車をじっくり開発できるのも、この技術が安定して使われているからである。

一方私は、入社以来30年以上も、ディーゼル車の排気浄化に関わる仕事に従事した。しかし、三元触媒システムのような優れた技術を最後まで開発することができなかった。技術的な言い訳はいくらでもできるが、現在のディーゼル車離れの大きな要因であることは否めず、責任を痛感している。

苦し紛れに出願した特許は千件を超え、今でも海外を含め多くの自動車会社が採用している。しかし、結局のところ、煩雑な仕事を作り出しただけで、どれも標準的な基盤技術になっていない。

最も残念なことは、提案したアイデアによって、多くの若者たちの仕事量が増え、新しい創造的な仕事をする機会が失われていったことだった。

管理職になってからは、大海原に漕ぎ出すような創造的な仕事を若者たちに勧めたが、目の前にある煩雑な仕事を置いて、先の見えないチャレンジを強いることはできなかった。

この8月で、トヨタ自動車を退職し7年が過ぎ、国内宣教師として日本宣教を志す日々になっているが、前職での苦い経験をどのように生かすべきかを考えるようになった。

日本宣教に効果的なアイデアはたくさんある。やってみればそれぞれが成果を生み、宣教はある程度拡大するだろう。しかし、日本文化に影響を与え、多くの日本人がキリストの福音に触れるための基盤となるアイデアはそれほど多くない。

標準となる仕組みを作るのに、ボタンの掛け違いをしてはならない。間違った選択は、宣教の効果を損なうだけでなく、若い力の浪費につながる。何より、後戻りができなくなる可能性がある。じっくりと狙いをすまし、すべての日本人に向けて福音を届ける仕組みを練り上げたいものだ。

私が最も重要視するのは、毎日4千人近くに及ぶ召される人々とその家族に寄り添うことである。人々が最も救いを求めて祈りたい場に、神様の器となって寄り添い、彼らの祈りをキリストの御名によって取り次ぐことが大切だ。

日頃から祈りを積む整えられた信仰者は、愛する家族との別れの場に、関わる人々の思いを束ねて祈ることができる。儀式的な宗教や哲学は何の役にも立たない。ただ純粋に神様を信頼して救いを求め、節度をもって祈れる信仰者だけが求められる。

私は、ここ数年何度かこのような場に関わらせていただき、その思いを強くしてきた。そして、召されていく方とその家族は、たとえキリスト教と疎遠であったとしても、実は祈りを導く信仰者を求めていると思うようになってきた。

未信者が召される前に牧師の訪問を求めてきた場合、そのほとんどで、召される方は信仰を持ち、病床洗礼を受け、家族の皆さんとは、牧師や教会とのつながりが続いていく。葬儀や記念会は、慰めと励ましが満ちるときになる。

最大の課題は、教会につてのない方々が、整えられた信仰者とどのように接点を持つかということである。教会で待っていても彼らに出会うことはない。さまざまなアイデアが思い浮かぶが、正しい選択は神様の備えの中にしか存在しない。

私は、神様に導かれ、信仰をもって王道を歩みたいと願っている。日本宣教を願う全国の皆さんとともに、神様の御心に沿う正しい道を選びたい。

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広田信也

広田信也(ひろた・しんや)

1956年兵庫県生まれ。80年名古屋大学工学部応用物理学科卒業、トヨタ自動車(株)入社。81年トヨタ自動車東富士研究所エンジン先行開発部署配属。2011年の定年退職まで、一貫してクリーンディーゼル新技術を先行開発。保有特許件数500件以上。恩賜発明賞、自動車技術会論文賞などを受賞。1985年キリスト教信仰に入信し、2016年まで教会学校教師を務める。1988~98年、無認可保育所園長。2011年関西聖書学院入学。14年同卒業。ブレス・ユア・ホーム(株)設立。16年国内宣教師として按手を受ける。

ブレス・ユア・ホーム

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