学生時代、伝道者を志した熱い思いは今も 聖ノア動物病院の渕上英一郎さん

2018年1月27日07時31分 記者 : 河西みのり 印刷
+学生時代、伝道者を志した熱い思いは今も 聖ノア動物病院の渕上英一郎さん
聖ノア動物病院(福岡市)を営む渕上英一郎さん

福岡市で「聖ノア動物病院」を営む渕上英一郎さんは、高校1年の時に洗礼を受けたクリスチャンだ。少年時代から動物を愛し、『シートン動物記』や椋鳩十(むく・はとじゅう)の動物童話集の世界に憧れていたという。獣医を目指して宮崎大学の獣医科に進学するが、在学中に九州KGK(キリスト者学生会)の立ち上げメンバーに加わることに。それを機に伝道者を志すようになり、東京基督神学校(現・東京基督教大学)でも学んだ。獣医として働きつつ、現在も学生伝道に熱意を注ぐ渕上さんに、これまでの歩みについて話を聞いた。

初めて教会に行ったのは4歳の頃。母に連れられて姉、弟と通うようになりました。会堂を自由に駆け回り、教会の方々にかわいがっていただいて、居心地の良い場所に感じていたと思います。

小学校中学年の頃、人は必ず死ぬということへの恐怖が大きくなりました。死んだらすべてが消えて無くなり、何も残らないなら、生きることに何の価値があるか分かりませんでした。正しく生きても、ずるいことばかりをして生きても、つかの間の泡のように消えるだけの人生であれば、善悪の基準も無益だと思い、むなしさを感じたのです。しかし、死にたくはない。心の中では死への恐怖を振り払えませんでした。

そのまま教会に足を運び続け、高校1年のクリスマスに、牧師から洗礼を受けないかと背中を押されます。信仰の自信はまったくなく、聖書に書かれていることが真実かどうかも根拠を見つけられず迷いましたが、教会という場所が好きでした。これからも教会の中で生きていく自分でありたいと思い、洗礼を受けました。

獣医を志したのは高校時代です。子どもの時に読んだ『シートン動物記』や『ジャングル・ブック』、椋鳩十の動物童話集などが、潜在的に大きな影響を与えてくれたと思います。それと、ジョン・ウェインなどの西部劇を見て、馬に憧れたことも小さな要因ではありません。

宮崎大学では念願の獣医科に入り、さっそく憧れの馬術部に入って、馬との生活に明け暮れました。しかし1年目の秋頃、「こんなに好きなことだけして、学生時代が終わって良いのか」と考えるようになりました。同級生がコンパや麻雀、クラブ活動に熱中するのを見て、「彼らに神がおられることを知ってもらいたい。彼らと一緒に生きる意味を考える何かを持たないといけないのではないか」と感じるようになり、教会の同級生とキリスト教サークルを立ち上げました。しかし、具体的に何をしたらいいのか分かりません。そんな時に、KGKを紹介していただいたのです。

早速、KGKの中四国地区と関西地区の春期学校に出てみたら、同年代のクリスチャンがたくさんいました。しかも随分真面目で、真剣に聖書を語り合っている。その姿に圧倒され、異文化体験のようなショックを受けました。そしてそこで、熊本大学と大分大学で同様に活動していた学生たちと出会ったのです。

「この場所に九州から3つの大学の学生が集まったのは、偶然でしょうか。いや、神様の計画ではないでしょうか。どうでしょうか、九州でも夏期学校を開いてみたら」

当時KGKの関西地区主事を務められていた故・片岡伸光先生からのチャレンジの言葉が、九州KGK立ち上げの始まりでした。宝石のように輝く、KGK時代です。

大学入学当初は、卒業後は獣医として外国で働きたいという夢がありました。当時はまだ日本の獣医学教育は4年制だったので、6年制を実施している諸外国で少しでも有利になるようにと大学院へ進学します。しかし、教会やKGKでメッセージを語ってくださる先生方との出会いを通じて、獣医ではなく、福音を伝える働きに仕えたいという気持ちがどんどん強くなっていきました。指導教官が留学のため不在になるのを機に、大学院1年で中退を決め、東京基督神学校への進学を決めました。

「なくなる食物のためでなく、いつまでも保ち、永遠のいのちに至る食物のために働きなさい」(ヨハネ6:27)

神学校へ行きたい、伝道者になりたいという内なる思いに突き動かされた青年時代でした。

神学校卒業後は開拓伝道を志したものの挫折。そしてさまざまな経緯を経て、1989年に動物病院を開業し、かれこれ獣医として30年近くになります。幾つもの難しい問題やトラブルに遭遇しましたが、そのたびごとに必死で祈り、支えられることがたくさんありました。神がおられることを信じ、神が正しく評価してくださることを信じているので、理解しがたい問題が生じても、よりどころを失わずに立ち続けられるのだと思います。

獣医は「動物を診ること」が仕事のようでいて、実際は飼主との関わりが大きなウエイトを占めます。飼主にはそれぞれの考えや事情があり、動物の命を助けようとしても、飼主が望まなければ、助けることはできないのです。それをわきまえた上で、要望にどれだけ応えられるか、自分たちの限界はどこまでか――常にそのことを忘れないようにしています。

多くの獣医は、自分の力だけを信じて頑張っておられると思いますが、自分の力だけしか信じるものがないというのは、本当はどんなに心細い世界かと推察せずにいられません。真実をご存じの神がおられると信じて立てるのは、心強いことです。

「福岡市で一番遅くまで診療する動物病院」を標榜(ひょうぼう)して朝9時から夜9時まで、30年近く働いてきましたが、一昨年の移転を機に「福岡市で一番早く終了する動物病院」となりました。夕方6時で閉めるようになった分、経営は苦しくなりましたが、その代わりにできた時間を、教会やKGKのお手伝いに使えたらと考えています。特に学生伝道団体のための事務所を福岡に開設し、卒業生が自由に顔を出せるような働きができたらと願っています。

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