人と動物と自然との共生を目指して 神戸学生青年センター

2007年3月1日00時55分 印刷

米国産牛肉やクローン動物の食品化の是非、ノロウイルスによる食中毒の大流行、夏場の日照不足や暖冬といった異常気象など、食品の安全性や環境保護が消費者の身近な問題として浮き彫りとなった今年、かつて日本でさかんに注目を集めた「有機農業」をもう一度見つめ直そうという働きが起こっている。

20世紀の農業は、化学肥料や農薬など、人工的に合成された化学物質によって生産力を大きく拡大させた一方で、農薬は薬害や公害を生むことが明らかになり、また、それが本来の生態系を攪乱させることで、新たな害虫の発生や天敵による害虫抑止力の喪失などの弊害を招くことも明らかとなった。また、化学肥料についても、直接的な効果は絶大であるが、土質の悪化や土壌の生態系の破壊をもたらし、長期的にはその土地の生産力の低下や土壌の流出の原因になるとも言われるようになった。そのような反省から、化学物質の利用をやめ、旧来の天然の有機物による肥料などを用いるなど、自然のしくみに逆らわない農業を目ざす方法として提唱されたのが有機農業である。

この有機農業への理解をもっと深めてもらおうと、27日、神戸学生青年センターは『世界の有機農業事情』と題した食料環境セミナーを開催した。講師は市島町有機農業研究会の橋本慎司氏。同氏は、ドイツに本部を置く国際有機農業連盟(IFOAM)の地域組織「IFOAM JAPAN」理事でもある。同連盟には、世界102カ国800団体を超える有機農業組織が加盟している。IFOAMの中でも特に、橋本らは、有機農業という形を通じて、貧困であえぐ途上国に持続可能な社会を創ろうとする「オルタナティブマーケティング(もう一つの流通)」の実現を目指している。 セミナーには約35人が参加した。40〜50代の中高年の女性を中心に、同じ有機農業を目指している若者たちの姿もあった。

講演では、まず日本の有機農業市場の現状について紹介があった。有機というアプローチは共通の到達点と実践を共有しているが、有機農業の手法は様々ある。 合成化学肥料を使用しないことに加え、土壌を浸食や貧栄養化、物理的な崩壊から保護することや、生物多様性の保全などがそれにあたる。これらの手法を生産者が消費者とともに作り上げていこうと、日本から始まったといわれる両者による提携運動は、海外での進展や成功とは裏腹に近年国内において低迷傾向にあるという。

一方で、このCSA運動(消費者が支える農場)と呼ばれる働きは、1991年EUでの有機農業規則制定後、欧州を中心にスイス、フランス、イギリス、カナダなどで注目され、今やこれらの提携運動は世界的な広がりを見せている。

キューバでは、1990年代初頭、経済的に依存していたソ連圏の崩壊、米国からの経済制裁などによる食糧不足の中、何もかもを自前でやらなければならないようになった。そのため、93年外貨所持と使用の解禁、95年新外資法採択、97年自由貿易協定締結など、政府はさまざまな経済・財政改革措置を図った。その中で農業分野においてモノカルチャーの砂糖生産依存から脱皮を図るべく登場した有機農業は、一連の経済政策の1つとして確実にキューバ経済を支え、長年の経済沈滞からの脱却と自立に大きく貢献した。

またスイスでは、有機農家として認定された農家には行政から補助金が出るという制度を取り入れ、「安全・安心な食材」を売りとした広告宣伝など全国規模の店舗で有機作物を積極的に推進している。そのため一般のものよりも高価な有機作物も需給のバランスよく取れているのだそうだ。

しかし、生産コストの面や農薬を使わない栽培に費やされる多くの手間、また収穫の不安定さなど課題もまだまだ多い。限られた予算と時間の中で消費者に対して最大の効果をもたらすためには、『減農薬による農法』こそが現時点では最良の方法ではないだろうかとの声も聞かれている。

ではそんな中、日本の有機農業は今後どうなっていくのだろうか。昨年12月、消費者ニーズの高まりに応じて、有機農業推進法が日本でも制定された。「これによって技術や研究もさらに進んで生産農家は増えていくでしょう。しかし、ただ売れるから作るのではなく、本当の循環という意味を考えた有機農業の原点に戻るべきではないでしょうか。本当の循環とは、人間が生き残るために自然を破壊するのではなくて、食べものを作りながら環境を守ること。自然界の秩序を守りながら食料を作る。そのような姿勢で有機農業を進めていくべきではないでしょうか」と橋本氏は語った。

地球環境の未来のため、新しく生まれてくる子どもたちのために、私たちは一体何ができるのだろうか。有機農業化のテーマである「人と動物(家畜)と自然との共生」は、まさに創世記に見られる創造の世界と重なるものといえるだろう。しかし、その答えはまだ出されてはいない。この現実を知ったわれわれ一人ひとりが切迫感を持って神に祈りながら、最善の道を模索してしかなければならない。

次回3月28日の食料環境セミナーのテーマは、「韓国の有機農業事情」。隣の国・韓国の有機農業の実情や流通について、専門的に勉強を続けている神戸大学留学生の朴淳用(パク・スンヨン)氏を招いての講演。お問い合わせは、神戸学生青年センター(電話:078-851-2760)まで。

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