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聖山アトス巡礼紀行

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

2017年3月18日22時21分 コラムニスト : 中西裕人
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関連タグ:中西裕人正教会日本正教会(日本ハリストス正教会)ギリシャギリシャ正教会アトス

夜中の3時。辺りは何も見えない暗闇。美しく、尖った三日月の下から、体のそれほど大きくないM司祭が大きなザックを背負い、現れた。

「おはようございます。それでは参りましょう」

もう1人F修道士も同行し、合計4人でラヴラ修道院の裏門から出て、修道院の持ち物である4WDのトラックに乗り込んだ。基本修道院は、夜間は門が閉ざされ、外に出ることができないので、それ自体も貴重な体験である。

窓の外は暗闇で、方向感覚さえ分からない中、F修道士は慣れた手つきでハンドルをさばく。ハイビームに照らされた前方の数メートルしか確認できなく、1本道をひたすら進む。そこからさらに道なき道を車が進む。

すると、横に座ったM司祭が私に「兄弟の名前をもう1度確認させてください」と話し掛けてきた。「アレクサンドル、ニコライ、ミハエルです」と答え、M司祭はそれをメモに書き写し、「ありがとうございます」と言ってポケットにしまった。

少しすると、薄暗い中でも開けた感覚があり、車が停まる。黒の中にも無限に距離を感じ、遠くの方で波が岩礁にぶつかる音が聞こえた。間違いなく海が近いのが分かった。

車を降り、スタスタと足早にM司祭とF修道士は歩きケリを目指す。暗闇の中にポツンと、ろうそくの灯が見えた。小さな小屋の中がかすかに光っている。そこから、1人の修道士が現れた。

「ようこそ、いらっしゃいました。Iです」と言い、ケリの中へ案内してくれた。

M司祭は慣れた手つきで、至聖所で準備に入る。I修道士もろうそくを照らし、次第に小さな聖堂は明るくなり始めた。そして、普段は入ることのできない至聖所の中へ、M司祭が招いてくれた。父も同じく準備を始めている。祈りの時が始まったのである。

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

ラヴラ修道院から持参してきた大きなザックの中には、パンが幾つかと祭服が入っており、M司祭は何かを小声で言いながらそのパンを切り始めた。耳を澄ますと、人の名前を言っているようであった。車の中で確認し書き残したメモ帳がすぐ横にあり、それを見ながらの作業であった。すると、「アレクサンドル、ニコライ、ミハエル・・・」と、小さく私の兄弟の名前も呼ばれたことに気付いた。

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

この時点では、祈りとはどういうものかということは、自分の中では消化できていなかった。今でもそれが正解かどうかということは、分からない。だが、この地の写真を撮る上で、あるテーマに自分を濾(こ)して落とし込む中で、ギリシャ正教のこのアトスの修道士たちの祈りとは、その本質とは、ということを考えさせてくれる、大きなきっかけになった出来事であったことには間違いなかった。

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

やがて聖歌が始まる。ここに1人で住むI修道士の声は、それは、それは素晴らしいものであった。父曰く、このラヴラ修道院管轄の中で、1、2を争うほどの美声の持ち主らしく、ラヴラ修道院の大きな祭日の時は、あの大きな主聖堂で圧倒的な響きを持つらしい。このケリに訪れていた巡礼者も3人ほど集まり、たった7人だけのひっそりとした祈りの時間が始まった。

次第に外は明るさを見せ始めた。祈りの最中であるが、暗闇の中に波音だけが聞こえ、外のことも気になっていたのは間違いない。ただ、至聖所での撮影を許されることもないので、夢中でM司祭と父のやりとりを撮っていた。また聖堂では、I修道士とF修道士の美声に圧倒されていた。

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

聖堂に力強い日が差し込んだ。外へ出てみると、そこは美しいエーゲ海の蒼(あお)の世界だった。

半島の突端にこのケリが建つ。ヒューヒューと鳴るエーゲ海からの強風に耐えながら。断崖絶壁の下には、夜中聞こえた波の音。何百年も時を重ね、変わらず受け継がれるこのケリでの祈り。後ろから聞こえるI修道士の声は、大きくこの地に轟(とどろ)き、まるで自然と一体となったように違和感無く心地良さを感じた。

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

昨日までも、そして今日も続けられていると思うと、今でもあの時の写真を見返して体がソワソワする。

人を寄せ付けないこの断崖絶壁に、ただひたすら祈りとともに生きる修道士が1人いる。ケリの裏へ回ると、さらに数軒のケリが、岩にへばりつくように建てられていた。そして、その向こうに、大きな岩山が。山頂に大きな雲がかかり、風とともに次第に現れてきた。

「アトス山だ」

聖山アトス巡礼紀行―アトスの修道士と祈り―(24)ケリの祈り1:夜明けのエーゲ海 中西裕人

次回予告(4月1日配信予定)

祈りも終盤へ。その後の朝食、そして語らいの時間・・・。お楽しみに。

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◇

中西裕人

中西裕人

(なかにし・ひろひと)

写真家。1979年生まれ。東京都杉並区出身。日本大学文理学部史学科卒。外苑スタジオ勤務後、雑誌「いきいき」(現「ハルメク」)専属フォトグラファーを経て独立、雑誌、広告、webを中心に活動中。2014年に洗礼を受ける。父は日本ハリストス正教会司祭であり、年に数回共にアトスを訪れ修道士の生活などに密着した取材を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:中西裕人正教会日本正教会(日本ハリストス正教会)ギリシャギリシャ正教会アトス
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