教皇、アルメニアを司牧訪問

2016年6月28日13時03分 印刷

【CJC=東京】教皇フランシスコは24日、3日間の日程で、アルメニア司牧訪問に出発した。

バチカン放送(日本語電子版)によると、午前9時、教皇は特別機でローマを発ち、同日午後、アルメニアの首都エレバンのズヴァルトノッツ国際空港に到着した。空港で教皇はセルジ・サルキシャン大統領夫妻と、アルメニア使徒教会の指導者、全アルメニア人のカトリコス・ガレギン2世の歓迎を受けた。

この後、教皇は首都エレバンから西方約20キロにあるエチミアジンに向かった。エチミアジンは、アルメニア使徒教会のカトリコス座が置かれ、人口の90パーセント以上をアルメニア使徒教会の信者が占める同国の宗教的中心地。

ガレギン2世に伴われ、アルメニア使徒教会の大聖堂を訪問した教皇を、聖堂の内外で大勢の市民が迎えた。カトリコスと教皇は祭壇の前で抱擁を交わし、聖書・詩編122編「主の家に行こう、と人々が言ったとき、わたしはうれしかった」を交互に朗誦した。

ガレギン2世の歓迎の言葉に続き、教皇は到着のあいさつで、アルメニア国民の歴史と精神性を証しするこの聖なる場所を訪れたことは、神からいただいた貴重な恵み、と感動を表明、ガレギン2世の招きを友好と兄弟愛のしるしとして、感謝を述べた。

教皇はアルメニアのキリスト教信仰が同国に与えたアイデンティティーと、国家間におけるキリストのメッセンジャーとしての役割に言及した。

歴史の試練の中で同国を照らし支え続けたその信仰を、教皇はたたえるとともに、ローマ帝国がキリスト教をまだ迫害していた時代、アルメニアが301年、最初のキリスト教国となったことを神に感謝した。

アルメニアのキリスト信仰が状況や条件によって着脱する服のようなものではなく、アイデンティティーとして現実に根差し、喜びと犠牲をもって守り抜いてきたのは大きな恵みである、と述べた教皇は、1700年以上前に受けた洗礼の豊かさを、聖人や殉教者たちと共に証しし続けてきたその輝ける信仰を神が祝してくださるようにと祈った。

教皇はまた、カトリック教会とアルメニア使徒教会の、誠実で兄弟的な対話を通したエキュメニカルな歩みに触れ、「全ての人を1つにしてください」とイエスが祈った一致の実現のためにさらなる聖霊の助けを願った。

分裂と紛争、物質的・精神的貧しさ、人間の搾取に傷ついた世界において、キリスト者たちは相互の尊敬と友好的な協力を通して、キリストの復活の真理と力を輝かせる必要を教皇は説いた。

そして、キリストの全ての弟子たちが完全な一致への努力を新たにし、共通善への協力を強めることは、暗い夜の闇を照らす光となり、愛と相互理解のうちに生きることへの呼び掛けとなるだろうと話した。

エレバンに戻った教皇は大統領官邸にサルキシャン大統領を表敬訪問。大統領と個人会談を行った。

この後、アルメニア各界要人と外交団へのあいさつで教皇は、昨年バチカンのサン・ピエトロ大聖堂で、カトリコス・ガレギン2世はじめアルメニア使徒教会関係者参加のもと、100年前のアルメニア人大量殺害の犠牲者を追悼するミサを司式したことを想起した。

教皇は、残念ながら、この虐殺が前世紀の、民族やイデオロギー、宗教などを理由とする巨大な悲劇のリストの始まりとなってしまったが、悲しいことにこれらの悲劇を力のある国々は遠くから眺めていた、と語った。

教皇は、こうした歴史の悲劇においても、福音の光に照らされ、キリストの十字架と復活の中に、立ち上がる力、尊厳をもって歩む力を見いだしてきたアルメニアの人々に尊敬を示した。

前世紀の悲劇がもたらした憎しみや、偏見、支配への欲望を前に、人類がその経験から責任感と賢明さをもって、このような恐ろしい出来事が2度と繰り返されることのないよう、危険を防ぐことを学ぶ必要を教皇は強調した。

今年、アルメニアが独立25周年を迎えるに当たり、教皇は、この祝祭が海外で暮らす人も含め、全てのアルメニア人にとって、国と社会の発展に力を注ぐ特別な機会となるよう願った。

教皇は25日、エチミアジン郊外、ツィツェルナカベルトの虐殺犠牲者追悼モニュメントで祈りをささげた。

この追悼施設は、1915年のオスマン帝国下で起きたアルメニア人大量虐殺の悲劇とその犠牲者たちを記憶するもの。

アルメニア使徒教会のカトリコス・ガレギン2世に伴われてこのモニュメントを訪れた教皇は、サルキシャン大統領らに迎えられた。

教皇はモニュメントに燃える火を前に、献花した後、長い沈黙の祈りをささげた。ガレギン2世と共に教皇は「主の祈り」を唱え、聖書朗読に耳を傾け、祈りをささげた。

この後、教皇は記念の植樹をした。100年前のアルメニア人迫害の最中、当時の教皇ピオ11世によってカステルガンドルフォにかくまわれた経験を持つ市民たちが、教皇の植樹を見守った。

追悼施設訪問における記帳で教皇は、「このような悲劇が2度と起きないよう、人類が悪に対して善をもって打ち勝つことができるよう、心の苦しみと共に祈ります。記憶が風化したり、忘れられたりすることがありませんように。記憶は平和と未来の源です」と記した。

ツィツェルナカベルトの虐殺犠牲者追悼モニュメントで祈った教皇は、続いて首都エレバンから北西約90キロのギュムリに移動、市内の広場でアルメニアのカトリック信者のためにミサを行った。

アルメニアのカトリック信者は全人口の10パーセントほどを占めている。教皇ミサのために、アルメニア全土、ジョージア(グルジア)など近隣国から、およそ2万人の信者が詰め掛けた。

ミサの説教で教皇は、キリスト者としての生き方を再び堅固に築くための基礎として、「記憶」「信仰」「いつくしみの愛」の3つを信者たちに示した。

「記憶」とは、まず、神が私たちにしてくださったことへの記憶であり、次に、アルメニアのキリスト教の貴重な歴史の中で、伝統や聖人たちによって培われた、民の記憶であると教皇は述べた。

「信仰」について教皇は、信仰こそは未来の希望であり、それを過去の何かにしてはならないと警告。信仰とはイエスとの出会いの中で生まれ、人生の全ての状況を照らし続けていくものと話した。

さらに教皇は「いつくしみの愛」の必要を説きながら、慈愛の行為、具体的な愛の業は、キリスト者の生き方における「岩」であり、「名刺」であると強調した。

午後、教皇はギュムリで、アルメニア使徒教会のカテドラル、カトリック教会のカテドラルを相次ぎ訪問、歓迎を受けた。

夕方、エレバンに戻った教皇は、市内の広場で、アルメニア使徒教会とカトリック教会合同の「平和のための祈りの集い」に参加した。

教皇は、アルメニア訪問最終日26日の午前、エチミアジンでアルメニアのカトリック教会の司教らとの出会いを持ち、次いで、エチミアジン市内の広場で行われたアルメニア使徒教会の聖体礼儀に参列。カトリコス・ガレギン2世の説教に続いて、カトリコスと信者たちに向け、あいさつした。

アルメニア使徒教会の聖体礼儀は東方諸教会の伝統に基づく荘厳な様式で行われる。

教皇はあいさつの中で、詩編133編の「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び」を引用しつつ、この兄弟的出会いに大きな喜びと感謝を表した。

また、「体は一つ、霊は一つです。それは、あなたがたが、一つの希望にあずかるようにと招かれているのと同じです。主は一人、信仰は一つ、洗礼は一つ、すべてのものの父である神は唯一であって、すべてのものの上にあり、すべてのものを通して働き、すべてのものの内におられます」という使徒パウロの言葉(エフェソ4:4~6)を、私たちは喜びをもって自分たちのものとしようと呼び掛けた。

教皇は続いて、東南部のトルコ国境に近いホルヴィラップ修道院を訪問し、公式行事を全て終えた。

雄大なアララト山を望むホルヴィラップ修道院は、アルメニア使徒教会にとって最も重要な聖域の1つ。カトリコス・ガレギン2世に案内され、同修道院を訪れた教皇は、「聖グレゴリウスの井戸」の前でろうそくに火を灯した。

続いて、修道院の礼拝堂で、ガレギン2世と教皇は交互に祈りをささげた。教皇は、平和の与え主である神に、いつくしみの助けをもって、私たちを命と救いに導くように、と祈った。この後、教皇はガレギン2世と並んで修道院のテラスからアララト山を眺め、カトリコスと一緒に平和の象徴である鳩を空に放った。

教皇は、同日夕方、エレバン国際空港でサルキシャン大統領とガレギン2世の見送りを受け、ローマへの帰途についた。

※この記事はCJC通信の提供記事を一部編集して掲載したものです。

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