「受け手」の立場でキリスト教教育の意義を考える 第17回キリスト教学校伝道協議会開催

2016年5月24日15時04分 記者 : 坂本直子 印刷
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「受け手」の立場でキリスト教教育の意義を考える 第17回キリスト教学校伝道協議会開催
第17回キリスト教学校伝道協議会には、全国のキリスト教主義学校関係者が集まった=21日、東京神学大学(東京都三鷹市)で

東京神学大学(東京都三鷹市)がキリスト教学校代表者たちの協力によって実施する第17回キリスト教学校伝道協議会(伝道者・献身者奨励の会)が21日、「若者にとってのキリスト教教育の意義~受け手の視点から~」と題して、同大キャンパスで開催された。学内外から約100人のキリスト教学校関係者や学生が集まり、「担い手」の立場ではなく、「受け手」の立場に立ってキリスト教教育の意義やその役割について考える機会を持った。

協議会開催に伴って持たれた開会礼拝では、同大の芳賀力学長がマルコによる福音書10章17~22節から「あなたに欠けているものが一つある」と題してメッセージを取り次いだ。

芳賀氏は、聖書に出てくる青年の心に欠けていたのは生ける神であったと述べ、「人は、神を愛することを知ることで、隣人のために自分が持っているものをささげることができる」と語った。そして、キリスト教主義学校で伝えられることは「神の愛」についてだと話した。

また、ストレス社会に生きる現代の若者が抱える不安や苦しみに触れ、「愛による教育が大切なことは誰でも分かっている。しかし、その愛はイエス・キリストにおける神の愛でなければならない。それを教える使命が私たちにはある」と話し、世間が考える功利主義的価値観が絶対的なものではないことを教えることのできる唯一の場所がキリスト教主義学校だと励ました。

「受け手」の立場でキリスト教教育の意義を考える 第17回キリスト教学校伝道協議会開催
第17回キリスト教学校伝道協議会で特別講演を行った前国際基督教大学(ICU)高等学校キリスト教科主任で同大非常勤講師の有馬平吉氏

続く特別講演で登壇したのは、前国際基督教大学(ICU)高等学校キリスト教科主任で同大非常勤講師の有馬平吉氏。「生徒の側に座ってみれば、わかってくる成すべき授業」と題して、ICU高校におけるキリスト教教育の成功事例について1時間にわたり話した。

有馬氏は、学校現場においてICTを使った教育技術や、新しい教育方法を取り入れた能動的教育の質が高まってきていることを説明した上で、キリスト教教育は「独自の領域」を維持していると伝えた。

有馬氏は「聖書で教えているのは、生きた神との出会い。このことを教えるためには、教師と生徒の生きた人間同士が膝と膝を突き合わせて語り合わなければならない」と話し、ICU高校で行ってきた授業科目「キリスト教概論」における「対話的キリスト教教育」を紹介した。

有馬氏が受け持った「キリスト教概論」は1クラス40人で行われていた50分授業で、3年間の必修授業。「キリガイ」と呼ばれるこの授業は、教師と生徒間の双方向に加え、生徒間の「ヨコの軸」も含むような対話で行われ、生徒が「能動的」(アクティブ)に参加する。この授業に参加したことで多くの生徒がキリスト教に興味を抱いたという、ICU高校の名物授業だ。

ただ、この授業方法が軌道に乗るまでには7、8年かかったと有馬氏は話す。ICU高校は帰国子女のために作られた学校であり、有馬氏が理想とする「生徒が積極的に参加できる授業」を作りやすかったが、初めは空回りで、授業中に生徒たちが大騒ぎをしている状態だったと振り返る。

しかし、そういった中でもさまざまな工夫により、生徒たちが積極的に授業に参加するようになり、さらにはイエス・キリストの救いに導かれていった様子を語った。

有馬氏が現場での試行錯誤の中で学ばされたこととして、「静かにさせるのではなく静かになる授業」「授業には『視聴率』がある」「『ノイズ』を排除しない」といったことを挙げるが、一般的な教育方法では出てこない発想ばかりだ。

また、対話的授業には、生徒と教師だけでなく、生徒と生徒の横軸も含まれることについて「生徒は生徒の声の方を熱心に聞く。生徒同士の関係は意識的に組み入れていくことが大切」と述べた。

さらに、「若者たちは『答えのない問題』について考えたがっている」とし、「こういったことを生徒の側に座って、一緒に考えることこそがキリスト教教育の意義」と、キリスト教主義学校の責任の大きさを伝えた。

有馬氏は、「最後はメソッドでも教育(テクニック)でもない。キリスト教教育者は生徒の前に何よりも信仰者として立つべき」と力を込め、「教師自身が自ら信仰者として語る、その教師自身の本気がひしひしと伝わる授業、これこそがキリスト教教育の神髄ではないか」と思いを語った。

ルカによる福音書5章でペトロが「人を漁る漁師」になった話に触れ、自身も「イエス様に漁られた者」であり、その時の感動と感謝が教師になった動機だと述べた。

「そのことを抜きにして行われるキリスト教教育ならば、いくらICT機器を駆使しても、優れたメソッドで身を固めても本当に力は持てない」と話し、「生きた人間による、生きた信仰者による、本気の授業、キリスト教教育こそ何よりも価値ある教育であることを、私たち自身がもっと自信と誇りを持って、これからも共に進んでいきましょう」と参加者に呼び掛けた。

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主題をめぐってのシンポジウムでは、金城学院中学校高等学校校長の深谷昌一氏(写真右)と遺愛女子学院中学校高等学校教諭の江間沙綾香氏(同中央)が登壇した。司会は、青山学院大学大学院宗教主任の西谷幸介氏(同左)が務めた。

午後からは、主題をめぐってのシンポジウムが行われた。発題者として、金城学院中学校高等学校校長の深谷昌一氏と、遺愛女子学院中学校高等学校教諭の江間沙綾香氏が登壇した。

深谷氏は、「若者にとってのキリスト教教育の意義~教育現場での経験を通して~」と題して、現代社会の課題、「自己意識の希薄化」「人間関係の希薄化」「社会性の希薄化」に対するキリスト教教育の役割を語った。

その上で、金城学院中高で生み出された「白百合の誓い」と「中高生のためのケータイ・スマホハンドブック」の取り組みを紹介し、同校において、キリスト教教育が示す自立や善悪の規範・自律力、連帯の必要性が生かされていることを紹介した。

「受け手」の立場でキリスト教教育の意義を考える 第17回キリスト教学校伝道協議会開催
シンポジウムでの質疑応答では、特別講演を行った有馬平吉氏も加わり、活発に意見が交わされた。

江間氏は、キリスト教学校の現場で生徒たちは、教師が自分たちに親身になってくれているかを敏感に感じていることや、「こういう先生であってほしい」という思いで見ていることを語った。

また入学当初は、キリスト教に全く興味がなくても、3年間を通して聖書の言葉が心に染み込んでいくのだという。生徒がアンケートで、宗教行事への参加を「遺愛の大事な行事だから」と答えていることに注目し、毎朝の礼拝や宗教行事などが習慣となり、徐々に変化していると話した。

「受け手」の立場でキリスト教教育の意義を考える 第17回キリスト教学校伝道協議会開催
午後に行われた分科会では、キリスト教教育について分団ごとに語り合った。

この日は、シンポジウムの前に四つの分団に分かれてワークショップ・分科会も持たれた。第一分団では、東北学院大学准教授で宗教主任の原田浩司氏が「若者たちがキリスト教と出会う意義~その経験と実践からの再確認」と題し、東北学院大学でのキリスト教教育の実践を通して、そこでの学生たちの姿から、若者たちが「キリスト教」に出会う場所は、圧倒的にキリスト教学校であることなどを報告した。

第二分団は、東京神学大学大学院生の菊池美穂子氏、第三分団は、同大修了後、現在は亀戸教会伝道師として仕えている堀川果菜氏、第四分団は、同大学部生の戸部悠世氏が発題した。キリスト教主義学校に入学し、在学中に入信、さらに伝道者として献身の決心をし、東京神学大学で学ぶという経験を持つ3人は、キリスト教主義学校で自分自身が得たことを話した。

聖書の授業が苦手だったことや、学校と教会との関係、クリスチャン教師との関係などを率直に語る一方で、学校の中で「自分は受け入れられている」と気付かされた体験や、教師たちの祈りに励まされたことなどを報告した。「ミッションスクールに進んでいなかったらどうなっていたか」という問いに対しては、「学校で先生が私のために祈ってくれたことが献身のきっかけとなっている。あの学校に行かなければ今こうしていないと思う」と答えた。

協議会には、熊本地震で被害に遭った九州ルーテル学院大学、ルーテル学院中学・高等学校、九州学院からも参加があった。閉会祈祷では、熊本地震で大きな被害を被った被災地と被災者のために一同で深い祈りをささげた。

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