「ヘイトスピーチをのりこえ、共生の天幕をひろげよう!」第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議、共同声明を発表

2015年11月30日16時01分 記者 : 行本尚史 印刷
「ヘイトスピーチをのりこえ、共生の天幕をひろげよう!」第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議、共同声明を発表
共同声明の最終版を発表する、第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議の関係者たちによる記者会見=21日、在日本韓国YMCA9階国際ホールで

「ヘイトスピーチをのりこえ、共生の天幕をひろげよう!」と、第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議が、在日大韓基督教会が日本と海外の諸教会に呼び掛け、18日から4日間にわたって在日本韓国YMCA(東京都千代田区)で開催された。

「共に生き共に生かしあう日本社会に向けて―日本と世界の連帯でめざす日本社会の正義と共生」を主題に行われたこの会議では、青年を含む参加者133人(うち海外から56人、日本から77人)が21日、ヘイトスピーチを乗り越えて共生するための行動を呼び掛ける声明文の草案を起草委員会に付託し、同委員会が同日の記者会見でその最終版(PDF:声明文全文)を発表した。声明文の全文は同教会の公式サイトなどにも後日掲載される予定。

新約聖書のマタイによる福音書25章40節「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」の引用で始まっているこの声明について、同会議の実行委員である佐藤信行氏(在日大韓基督教会・在日韓国人問題研究所長)は、「1ページから2ページにかけては私たちが国際会議で議論した中身が集約されている。3ページ目10のパラグラフ『私たちは、日本政府に対して、日本社会に対して、日本の諸教会に対して、そして世界の諸教会に対して、以下のことを提案します』というところ以降が、昨日から今日にかけて私たちが議論したアクション・プラン(行動計画)だ」と、21日の記者会見でその概略を説明した。

「11のパラグラフは日本政府に対しての私たちの要求事項だ。12のパラグラフが日本の市民に呼び掛けます、となっている。そして13の段落が日本の諸教会に呼び掛けます、ということで、それぞれ日本社会における正義を示す者として周辺化され排除された人々が経験する痛みを認識し共有すること等々のそれぞれの課題を挙げている。この中の13.3のところで、在日大韓基督教会が呼び掛けている『マイノリティ宣教センター』の設置を目指して、諸教派による協議を続けていくことを確認した」と佐藤氏は述べた。

「14のパラグラフにおいては、世界の諸教会に対して呼び掛けます、というふうになっている」と佐藤氏は述べ、その段落を読み上げた。「今回の国際会議に参加した日本および世界の各教団の名前を挙げて、その連名で出すということになった」と佐藤氏は結んだ。

14のパラグラフには、「14.1 世界的なネットワークを活用して、諸教会がマイノリティへの差別を乗り越えた経験や共生コミュニティを形成した物語、およびその効果的手法を共有すること。14.2 マイノリティに関する諸課題に取り組むための青年プログラムを積極的に支援すること。14.3 世界のエキュメニカル団体に呼び掛け、世界各地における人種差別をはじめとする様々な差別の再発に抗(あらが)い、周辺化された人々の命と尊厳を守るための、新たな取り組みを進めること。14.4 3月21日国連人種差別撤廃デーにあわせ、世界のマイノリティを憶えて祈ること」と書かれている。

「ヘイトスピーチをのりこえ、共生の天幕をひろげよう!」第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議、共同声明を発表
閉会礼拝の締めくくりに参加者を前に語る金性済牧師

在日大韓基督教会の総会長でこの会議の実行委員長を務めた金性済牧師は、21日の全体会で、共同声明で言及されている「マイノリティ宣教センター」が持つ使命は、「1.人種主義との闘い、すなわち人権・共生・平和の実現、2.青年宣教、すなわち宣教課題を担う青年リーダーの育成、3.和解と平和のスピリチュアリティ開発」であると説明した。

同会議では、初日の午後に開会のあいさつ、DVD「ヘイトスピーチの現場」上映、開会礼拝、主題講演(1)、交流会が行われた。2日目以降は聖書研究(1)、主題講演(2)、言語別グループ討論、午後はテーマ別ワークショップ、午後は全体会(1)で「日本におけるマイノリティとヘイトスピーチ」について話し合われたほか、この会議に先立って15日から3日間行われたユース・プログラムの青年たちによるメッセージとして、そのプログラムの分かち合いが持たれた。そして20日(金)は聖書研究(2)、全体会(2)の「差別に立ち向かう教会」で海外教会の経験が話された。その日の午後からは具体的な行動計画を含めて議論する場が持たれ、最終日は全体会(3)で共同声明が作成された。

この会議の配布資料には、同会議の開催目的として「① 日本と世界のキリスト者たちが、人種差別と不正義に対して、はっきりとした姿勢を示し、不正を名指しする。人種差別に対する教会の姿勢を確認し、日本の人種差別の状況を世に知らせる。② 日本政府に、国連人権機関の勧告を尊重して人種差別に関する立法を行うように迫り、立法のためのアドヴォカシーをおこなう。③ 教育と形成:日本社会の新しいビジョン、社会形成のための新しいビジョンを持った新世代の育成。蔓延(まんえん)する暴力、差別と不正義の文化に代わる和解と奉仕と正義の精神の涵養(かんよう)。キリストの教会として和解と癒しをもたらす共同体となることを召命として認識する。再び繰り返してはならない過去の過ちを学び、歴史の現実に対面する。④ 人種差別、マイノリティの抑圧状況は監視されなければならないし、取り組まれなければならない。そのための国際的な連帯関係、エキュメニカルなネットワークを構築する」と記されている。

金性済牧師はこの会議の初日に行った開会のあいさつで、この会議の目的について、「① まず、問題提起したこの日本において何が起きているか、ヘイトスピーチの実態と背景を認識すること、② 世界において起こりつつあるヘイトクライムの現実を知り、この問題についての対話を深めること、③ 教会の宣教課題としてこの問題をどう扱うかを話し合うこと、④ このために今後どのように世界的ネットワークを教会は形成できるか検討すること」という四つの点を挙げていた。

この会議の主催を呼び掛けた金性済牧師は、21日、会議終了後の記者会見で、この会議の背景を説明した。「私たち在日大韓基督教会の宣教活動は1908年から始まり、1934年に一つの独立した教団となり、戦争の苦難の時代をくぐった後、戦後あらためて再建され、そして今日に至っている。私たちは日本に残された民族少数者としての在日コリアンの福音宣教のために戦後再出発したが、その後、やがて1960年代の後半に至って、民族差別という苦難の中にある在日コリアンの解放、そして日本と韓国の間にあって和解と平和のために働くということを明確に宣教の使命として自覚するという道を歩んで来た」と、金性済牧師はまず同教会の歴史を振り返った。

金性済牧師は次にこの会議の歴史的背景について、次のように説明した。「とりわけこのたびの国際会議が第3回目と数えられるが、第1回目が1974年。この時期とは、1970年に民族差別のゆえにある会社を解雇された一人の在日韓国人青年の人権の闘いを在日韓国教会が全面的に取り上げて、世界のキリスト教会の連帯の下に、ついに裁判に勝利した後、世界の教会を招待して、民族的少数者(に対する)レイシズムと闘い、人権の確立、そのための連帯をしていこうという第1回目の国際会議となった。そして第2回目は1994年になるが、この第2回目の国際会議は、1980年代の10年間にわたる在日コリアンから始まっていった指紋押捺拒否、外国人登録法改正運動が、日本だけでなく世界の連帯・協力の下に、ついに指紋押捺制度が撤廃されていったことを背景に(行われた)。そしてこのたび、20年後と数えられる本年のこの時期において第3回目の会議となった」

「ヘイトスピーチをのりこえ、共生の天幕をひろげよう!」第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議、共同声明を発表
最終日の全体会で共同声明について議論し、その最終版を起草委員会に委託することを決定した参加者たち

金性済牧師はまた、「この会議の契機となったのは、2009年より急激にこの日本に広がっていったヘイトスピーチの問題であるが、とりわけ直接この会議が決意されていったのは、昨年の8月末、国連人種差別撤廃委員会が日本政府の問題、ヘイトスピーチなどの問題に関して最終見解を発表したことを踏まえて、昨年の秋より私たちキリスト者が、在日コリアンが呼び掛け人となり、日本の諸教会に呼び掛け、さらに世界の諸教会に呼び掛けてこのヘイトスピーチの問題、それにまつわる歴史修正主義などさまざまな問題を含めてこのことを取り上げ、これを乗り越えていくためのキリスト者の課題、そして世界的ネットワークを作るための会議を準備していこうということになった。また、期せずしてこのように在日コリアンに対するヘイトスピーチが契機となって国際会議が準備されたが、このテーマがヨーロッパにおける移民、あるいは難民・イスラム教徒に対する人種差別の高まり、そしてアメリカにおけるアフリカン・アメリカンに対する人種差別の悲劇的な銃撃事件といったようなことが準備の過程の中でどんどん起こって広がっていったことが、さらに一層、この国際会議に関する関心を諸教会に高めていく弾みとなって、今日の会議に至ったということが言える」と述べた。

さらに金性済牧師は、「このたびは、青年のプログラムが18日に先立ち、15日(日)の夕方から17日にかけて行われ、これから未来を担っていく青年たちの問題意識を高める、特に関東大震災の跡地などを訪ねたり、被差別部落の方たちの証言を聞いたり、そのような形で青年たちのプログラムが大変盛り上がり、有益な成果を収めながら、そして18日のプログラムに連動していく形で展開された」と付け加えた。

金性済牧師は、会議の題名にある「共生の天幕」について、21日の記者会見の後、本紙に対し、「旧約聖書に出てくるアブラハム、イサク、ヤコブが神様の祝福の約束を受けてカナンの地に寄留者という立場で入って行ったが、神様が願われたことは、カナンの地の人々に排除され、抑圧される存在としてではなく、祝福そのものとなって歓迎される存在になっていくこと」と語った。

「しかし、それはたやすい道ではなかったけれども、絶えず天幕の中でアブラハムたちが礼拝を続ける中で、最後には平和の契約が取り結ばれるところにたどり着く。その象徴的な話が創世記26章のイサクの井戸掘りの話ですが、そういう意味で、まさに最後まで忍耐強く平和の契約が締結されるところまでたどり着いて祝福そのものとなっていった」と金性済牧師は述べ、「この力の源泉は、神様を礼拝するために広げた天幕にあったという意味で、天幕を共生のシンボルとしてタイトルの中に取り入れた」と説明した。

金性済牧師は21日に行われた閉会礼拝の締めくくりに、参加者に対し、会議への参加と協力に謝意を表すとともに、「私たちが最後の日に主の前に立つ時に、『あの時、お前はどこにいたか? 何をしていたか』と聞かれた時に、今日の国際会議の話をしたいと思います。今日はこれで終わるのではなく、これから私たちは力を合わせて世界中にネットワークを広げて、共に虐げられるマイノリティに寄り添いながら、キリストに従って歩んでいきましょう」と呼び掛けた。

1976年から81年まで在日大韓基督教会への宣教師として東京・川崎・横浜で働いていたロン・ウォレス氏(カナダ長老教会隠退牧師)は、21日の記者会見で、「日本政府がヘイトスピーチを違法化し、マイノリティの権利を守る法律を可決させるよう望む」と語った。

続いて、ウォレス氏の後任者であるグリニス・ウィリアムス氏(カナダ長老教会国際宣教奉仕委員会幹事補)は、金性済牧師がカナダに来た時に日本におけるヘイトスピーチの録画を見て「本当にぞっとした」と述べるとともに、「教会では、見知らぬ人たちを歓迎するよう、常に促されている。なぜなら見知らぬ人たち、異なる人を歓迎することで、私たちはイエス・キリストを歓迎するのだから」などと述べた。

そして在日大韓基督教会も加盟している改革教会世界共同体(WCRC)の総幹事であるクリストファー・ファーガソン牧師は、「日本の軍事化を防ぐ法の変更を非常に憂慮している」と述べ、「それはすでに軍事化の増大に苦しんでいる世界において、世界平和に向けた動きとの関連において一歩後退を表すものだ」と述べた。また同牧師は、「この会議の焦点が、在日大韓基督教会が自らの教会員を守ろうとするだけでなく、差別や憎悪の被害者である全ての人々の権利を守るべく奉仕することでもあることに、非常に賛同し、誇りに思っている」と語った。

カナダ合同教会グローバル・パートナーシップスのチームリーダーであるパトリシア・キャサリン・タルボット氏はこの記者会見で、「日本でもまた他のところでも、恐れや憎悪が経済的・政治的な目的のために操られることがあり得るというのは、この会議の体験で明らかだ。それが起きる時、最も苦しんでいるのは、マイノリティ、移民、先住民族といった、周辺に押しやられている人たちだ」と指摘した。

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最終日の記者会見で発言するWCC宣教伝道委員会ディレクターのクム・ジュソプ牧師・博士

世界教会協議会・世界宣教と伝道委員会(WCC-CWME)ディレクターのクム・ジュソプ牧師・博士は、記者団に対し、「奇妙なことに、21世紀の初めにある私たちの世界は、不安定な場所になりつつある。人々が不安を感じているのは、宗教によって動機づけられた暴力のせいであったり、また経済的な景気後退のためであったりする。彼らは社会福祉制度の崩壊ないし民営化のために不安を感じている。だから、この文脈において、人々は他者を社会の隅に押し退けることによって自らを守るという、ある種の誘惑に直面しているのだ」と述べた。

同牧師・博士はまた、「キリスト教の信仰において、私たちは、神が人類を神の姿に似せて創られたと信じている。従って、全ての人々の尊厳を認めることは、キリスト教の信仰の中心にある」と語った。そして、「私は、ヘイトスピーチは今日の世界における人種差別では最悪の形のうちの一つであると思う。殺せとかレイプしろなどとあからさまに言うことを容認する社会ないし国は他にはない。これは、日本の文明が持つ質の誤ったイメージを示すものだ」と同牧師・博士は述べるとともに、「日本人はこのような非常に危険な主張に対してはっきりと『ノー』と言わなければならない。なぜなら、彼らがもはや敵を見つけることができなくなった時、彼らはあなた自身を狙うかもしれないからだ。あなたが次の標的かもしれないのだ」とクム・ジュソプ牧師・博士は警告した。

クム・ジュソプ牧師・博士はまた、昨年にWCCが衝撃を受けたことの理由として、米国のファーガソンで起きた黒人襲撃事件や、南アフリカ共和国で起きたソマリア人襲撃、そして日本におけるヘイトスピーチを挙げ、「それは1960年代にWCCが人種主義と闘うプログラムを開始した時とほぼ似た状況である」と指摘。

その上で同博士は、「従って、来年の6月に会合を開くWCC中央委員会は、『人種主義と闘うプログラム』を再び開始する必要があるかどうか議論するだろう。この会議の成果である声明は、WCCが人種主義に関する私たちの方針を考え直す上で主要な励ましないし貢献となるだろう」と語った。

なお、この会議は、在日大韓基督教会が主催し、日本キリスト教協議会、日本基督教団、日本キリスト教会、日本バプテスト連盟、日本バプテスト同盟、日本カトリック難民移住移動者委員会、公益財団法人ウェスレー財団が共催し、世界教会協議会・世界宣教と伝道委員会(WCC-CWME)、世界教会協議会・国際関係教会委員会(WCC-CCIA)、日本聖公会、新教出版社が後援した。

■ 第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議: (1)(2)(3)(4)(5)(6)

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<出典> 日本:厚労省、世界:WHOJohn Hopkins CSSE

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