原発事故から4年、自主避難者招き講演会 「一緒に考えてほしい」

2015年5月19日14時58分 記者 : 坂本直子 印刷
+原発事故から4年、自主避難者招き講演会 「一緒に考えてほしい」
参加者を前にあいさつをするカトリック東京ボランティアセンター(CTVC)事務局長の漆原比呂志氏。自主避難者への支援を訴えた=15日、聖イグナチオ教会岐部ホール(東京都千代田区)で

東日本大震災の発生直後から被災地を支援し続けているカトリック東京ボランティアセンター(CTVC)は15日、ハートウェッジ福島代表の湯野川政弘さんを招き、「自主避難者の秘めた思い」と題した講演会を、聖イグナチオ教会岐部ホール(東京都千代田区)で行った。ハートウェッジ福島は、福島県内から山形県米沢市へ自主避難した人々が集まり立ち上げた避難者グループ。会場に集まった人たちは、大手メディアではあまり伝えられてない自主避難者の生の声を聞き、今も原発事故と闘う福島の人々の「忘れないで」という思いを共に受け止めた。

湯野川さんは、故郷の福島に残りたいと言い、高齢で避難が難しい母を福島市内の自宅に残しているが、妻と子ども3人(高1、中2、小5)を連れて米沢市に自主避難している。湯野川さんの自宅がある地域は、福島第一原子力発電所の事故によって計画的避難区域に指定された飯舘村とは10キロほど離れたところにあり、放射線の問題はないとされている。しかし、飯舘村が車で30分もかからないところだったため、湯野川さんは、自分の住むところも放射線量が高いのではないかと恐怖感を抱き、米沢市が提供する雇用促進住宅に自主避難することを決めた。以来4年間にわたり福島市内で営む酒店と家族が住む米沢市を往復する二重生活を続けている。

現在は特例で借りることができた一戸建ての賃貸住宅で生活しているが、子どもたちの被ばくは常に心配がつきまとうと話す。福島県では原発事故後、外部被ばく線量の推計を行うための全県民を対象とした基本調査、内部被ばく検査(ホールボディカウンター)、放射線個人線量計(ガラスバッジ)測定、甲状腺がん検査などが行われている。特に甲状腺がん検査は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害である小児の甲状腺がんに関するもので、当時18歳以下だった子どもたちの健康を長期的に見守るために実施されている。

甲状腺がん検査は、2011~13年に1巡目の検査が行われ、現在は2巡目が行われている。湯野川さんはこの検査で昨年、子どもの1人が2次検査を必要とするB判定となり、そのため病院へ2次検査を受けに行くことになった。まず病院に行って驚いたのは、20~30人の小中高生が検査や結果を聞くために集まっていたことだという。

湯野川さんの子どもは2次検査の結果「問題なし」だったが、「これで終わりというわけではない」と湯野川さんは言う。「甲状腺がん検査は、20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに継続して検査が行われる。そんな状態で避難を続けなければならない」と今後の不安を隠しきれない様子だった。

福島県が18日までに発表したところによると、1巡目の検査は対象者約37万人のうち約30万人が受診し、今年3月末までに、112人ががんやその疑いと診断された。2巡目でがんやその疑いとされたのは15人で、合計127人となった。また、手術をしてがんであることが確定したのは、1巡目98人、2巡目5人の計103人となった。県民健康調査検討委員会は、これまでの調査結果からはがんが放射線の影響によるものとは考えにくいとする見解を示す一方、現時点では「結論づけることはできない」としている。

原発事故から4年、福島の自主避難者招き講演会 「一緒に考えてほしい」
講演者の湯野川政弘さん。自主避難者に対する行政の対応は、「福島市は安全ですから」ということで、計画的避難区域である浪江町や双葉町のような支援は受けられないという。それでも子どもの健康を考えると心配で福島市には帰れないと話す。

湯野川さんによると、米沢市にいる福島県からの避難者は3月の時点で1051人。このうち自主避難者については、福島と行き来する二重生活を余儀なくされる家族も多く、湯野川さんは「自分は自営業だから毎日米沢に帰って家族と過ごすことができるが、サラリーマンだとそうはいかない」と話す。仕事の関係で、週末しか家族の元に帰って来れない父親や、母子だけで避難してきた人たちなど、二重生活が及ぼす家族への影響を心配した。さらに、「延々と続く除染作業を見ると、今すぐには戻れないという思いでいっぱいになる」と心の内を明かした。

湯野川さんは、国から「認められる避難」と「認められない避難」があると言い、「福島県内の全員が国から保障されるべき」と訴える。特に「子どもの甲状腺がんへの心配を考えればどうして安全と言えるのか」と、湯野川さんは病院に検査を受けに来る子どもの数の多さから問題視する。「子どもたちに何ができるのか、私たちはいつも考えている。こういったことを私たちと一緒に考えてほしい」と、集まった人たちに呼び掛けた。

この日は、CTVCの活動をホームページなどで知ったカトリックの信者を中心におよそ30人が集まり、湯野川さんの話に熱心に耳を傾けた。仙台での仕事を終え駆け付けたという50代の女性は、「福島の被害は目に見えない原発であり、今後も続くこの問題は宮城県などの被災地とは違う問題であることがよく分かった」と感想を述べた。

CTVCはシリーズで、福島から被災者を招いて話してもらう講演会「福島から語る」を続けており、今回は12回目。次回については決まり次第、ホームページで告知される。また、カトリック教会によるこれまでの支援活動を記録したDVD「Always be with you(復興支援活動の歩み)」(非売品)を制作。希望者には無料で配布している。DVDについての問い合わせは、CTVC(電話:03・6721・1421、FAX:03・6721・1422、メール:tokyo@ctvc.jp)まで。

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