日本聖書協会クリスマス礼拝 聖書事業功労者・村岡崇光氏の講演も

2014年12月19日12時02分 記者 : 新庄れい麻 印刷
聖書協会クリスマス礼拝 聖書事業功労者・村岡崇光氏の講演も
日本聖書協会主催のクリスマス礼拝の様子

日本聖書協会主催のクリスマス礼拝および聖書事業功労者表彰式が11日、日本基督教団富士見町教会(東京都千代田区)で開催された。同協会では2014年度の聖書事業功労者として、ライデン大学(オランダ)名誉教授の村岡崇光(たかみつ)氏(76)を日本に招き、この日に聖書事業功労者賞を授与する運びとなった。礼拝前には村岡氏の受賞記念講演会も行われた。

広島県出身の村岡氏は、世界的に著名なセム語学者。東京教育大学(現筑波大学)博士課程中退後、1970年ヘブライ大学(イスラエル)で博士号を取得。ライデン大学、マンチェスター大学(英国)、メルボルン大学(オーストラリア)で10年ずつ教鞭を取った。著書の『A Grammar of Biblical Hebrew』(聖書ヘブライ語文法)、『Emphatic Words and Structures in Biblical Hebrew』(聖書ヘブライ語における強調語と構文)などは聖書ヘブライ語を学ぶ者にとっての必読書である。

旧約学における村岡氏の優れた功績に対しては、1975年に同協会から既に「都留・スミス賞」が贈られている。今回の聖書事業功労者賞は、同氏がライデン大学退官後から続けているアジア諸国でのボランティア講義を賞するものである。

聖書協会クリスマス礼拝 聖書事業功労者・村岡崇光氏の講演も
2014年度聖書事業功労者に選ばれた村岡崇光氏。オランダから来日し、「私のヴィア・ドロローサ-太平洋戦争の爪痕をアジアに訪ねて-」と題して講演した。

今回の受賞が「晴天の霹靂(へきれき)」だったと語る村岡氏。なぜなら、2003年の定年退職以後、村岡氏がアジア諸国で行ってきた大学や神学校でのヘブライ語・ギリシャ語の講義は、決して教会、団体などの依頼による公的業績ではなく、村岡氏個人の発意で、旅費・経費は全て自前で賄うボランティア活動だったからだ。

1964年にイスラエルへ旅立って以来、半世紀にわたり海外に在住した村岡氏。イスラエル、英国、オーストラリア、オランダ、生活したどの国においても、いまだ癒えることのない太平洋戦争の傷跡を見、日本と諸外国の関係修復とその和解の難しさを体験し続けてきた。

海外生活が半世紀を迎えても日本国籍を捨てるつもりはないと言う村岡氏にとって、祖国の歴史は自身の一部だという。大学在職中から太平洋戦争に関する調査を進め、タイとミャンマーを結ぶ泰緬(たいめん)鉄道建設、従軍慰安婦問題などの負の歴史と向き合いながら、その癒やしと和解の業として、定年退職を機にアジア諸国でのボランティアを始めた。

「退職後も、研究への探求心は変わらない。特に人文科学は、研究に大きな器具も必要なく、本さえあれば仕事はできる。ただしその研究は、利己的であってはならない」。まずその第一歩として、近くて遠い国、韓国を訪問することから始めた。各国でのボランティア期間は年に約5週間。収入の十分の一は本来神の物であるように、神に与えられた時間の十分の一を奉仕に返したいという思いからだ。

今回の講演会には、「私のヴィア・ドロローサ―太平洋戦争の爪痕をアジアに訪ねて―」という題が付けられた。「ヴィア・ドロローサ」とは、ラテン語で「悲しみの道」、すなわち主イエスが十字架を背負ってゴルゴタに向かった道を意味する。全人類の罪を背負ってその道を歩んだキリストに倣い、キリスト者として自分自身の罪だけでなく、国の罪も真剣に受けとめ、償いと和解へ心を砕く村岡氏の思いが溢れる題である。

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特別賛美をするオペラ歌手のありめせつこ氏

2003年から始まった村岡氏の活動、すなわちアジア10カ国を訪れ、講義をし、戦争体験を持つ現地の人々と心を通わせた体験は、『私のヴィア・ドロローサ―「大東亜戦争」の爪痕をアジアに訪ねて―』と題する一冊の本にまとめられ、今月14日に受賞記念として教文館から出版された。

今夏、同協会総主事の渡部信氏がシンガポール聖書協会を訪問した際、「村岡先生がまとめた原稿が、経費の問題で上梓が頓挫している」という話を耳にしたことが発端となり、日本聖書協会が全面的に費用を引き受け、出版に漕ぎ着けた。

講演会では、村岡氏の指導のもと、「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び」(詩篇133:1)を、参加者一同、ヘブライ語で歌った。「兄弟とは、血によるつながりだけでなく、信仰の父アブラハムの子孫である私たちのことであり、神の家族のことなのです」と村岡氏。表彰式では「神様が許してくださる限り、今後もアジア太平洋諸国において働きを続けたい」と、働きの継続に意欲を見せた。

クリスマス礼拝では、オペラ歌手ありめせつこ氏による「O Holy Night」と「アヴェ・マリア」が特別賛美としてささげられ、マタイによる福音書2章1〜12節から「希望の星を仰ぐ」と題して同協会理事長の大宮溥氏がメッセージを取り次いだ。

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聖書事業功労者の表彰状を授与する日本聖書協会の大宮溥理事長(左)と村岡崇光氏

1970年代後半にニューヨークを訪れた大宮氏は、クリスマスマーケットで「Footprints in the Sand」(砂の上の足跡)という詩が記された便箋を見つけ、それを日本の友人にプレゼントをしたエピソードを紹介。クリスマスの度ごとに、その「神の導きと守り」の詩を思い出すという。今年一年も、さまざまな災害や困難があったが、東方の学者たちが見た輝く星は今も輝き続けている。その星に導かれ、幼子イエスと出会った学者たちは、喜びに溢れ、占星術ではなく、神の御告げに従い、別の道を選んで帰って行った。「2千年前にベツレヘムでお生まれになった主イエスが、過去の出来事としてではなく、今を生きる一人ひとりの心の内に宿り、一体となってくださるように」と締めくくり、祝福のクリスマスメッセージを語った。

同協会によれば、日本はキリスト教人口が少ないにもかかわらず、諸外国に比べると聖書の頒布数が多いという。神の言葉を熱心に慕い求める日本人クリスチャンの姿、心の糧として聖書を読むノンクリスチャンの姿が見て取れるのではないだろうか。2010年から、カトリックとプロテスタントが2度目の共同訳として聖書の新翻訳事業にあたっていることを報告し、新しい年へのさらなる希望を抱きつつ、2014年度のクリスマス礼拝は閉会した。

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