ギャンブル依存症の治療に「ニーバーの祈り」 作家・精神科医の帚木蓬生さんが語る

2014年3月4日22時04分 記者 : 佐藤憲一 印刷
+ギャンブル依存症の治療に「ニーバーの祈り」 作家・精神科医の帚木蓬生さんが語る
作家・帚木蓬生さんは、ギャンブル依存について警鐘を鳴らす本も著してきた。写真は帚木さんの著書『ギャンブル依存とたたかう』と『やめられない―ギャンブル地獄からの生還』。

NHK『こころの時代~宗教・人生~“平安の祈り”を求めて』の中で、ギャンブル依存症の治療に力を尽くす作家・精神科医の帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)さんが「ニーバーの祈り」を紹介した。

自らのがん闘病を通して、この祈りの意義を再発見した。ギャンブル依存症患者のために立ち上げた自助会、GA(Gamblers Anonymous)では毎回、集いの最後に参加者全員で「ニーバーの祈り」を唱和する。

この「ニーバーの祈り(Serenity Prayer)」は、アメリカの神学者・ラインホルド・ニーバーによるものとされ、日本では「平静の祈り」「静穏の祈り」とも呼ばれる。アルコール依存症克服のための集い、AA(Alcoholics Anonymous)、薬物依存症や神経症の克服を支援するプログラムにおいても用いられている。

ニーバーの祈り(Serenity Prayer)

神よ
変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、
変えることの できないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。
(大木英夫訳)

O GOD, GIVE US
SERENITY TO ACCEPT WHAT CANNOT BE CHANGED,
COURAGE TO CHANGE WHAT SHOULD BE CHANGED,
AND WISDOM TO DISTINGUISH THE ONE FROM THE OTHER.
(英語原文)

アメリカのAAやGAでこの祈りが唱えられているのを耳にした帚木さんは、当初はいまひとつ理解しにくかったと言う。しかし、2008年に自らが急性骨髄性白血病と診断され、闘病を続ける中で、この祈りの力を実感できるようになった。

今では日本のGAにも「ニーバーの祈り」を取り入れ、ギャンブル依存に苦しむ人たちが体験と治療の決意を語り合った後に、皆で必ず唱和するようにした。『こころの時代』は、GAの集いの様子や祈りの姿も紹介。「平安の祈り」の意味を、帚木さんが女優・檀ふみさんを聞き手に語っている。

ギャンブル依存症については、社会的理解がまったく足りないと警鐘を鳴らす。正式な病名は「病的賭博」で、200万人ものギャンブル依存者がいると考えられている。パチンコにのめり込む人が多く、金ほしさに日常的に嘘をつくなどパチンコが生活の中心となって、家族や周囲の人を巻き込んでいく。

「要するにギャンブルのことしか考えられなくなってしまうのです」と、帚木さんはその危険性を説く。

「意志や性格の問題ではありません。これはまさに病気なのです。どんなに立派な人格の人だったとしても、そこに陥れば自分では抜けられません。家族がいくら説教をしても何の役にも立ちません。重要なのは一刻も早く治療のコースに乗せることです」

入院治療が勧められることもあるという。全国に広がりつつある自助会、GAでは、小グループで「家族に迷惑をかけたこと」「自分の意志が働かなかった時のこと」など、心の痛みを率直に語り合う。「自分はギャンブルに対して無力だ、自分では止められない病気にかかっているのだ、という認識を持つことがまず必要なのです」

病気としての認識の薄さは医療関係者にさえいまだ根強く残っており、多くの精神科医が治療対象として扱っていないという。ちなみに、韓国ではパチンコ依存症が厳しく問題視され、法規制で2006年にパチンコ店が全廃されている。

帚木蓬生さんは福岡県で心療内科クリニックを開業していて、医師として診察を続けながら人間の心と社会倫理を見据えた小説を世に送り出してきた。医療分野の『閉鎖病棟』『安楽病棟』『風花病棟』のほか、キリスト教歴史ミステリー『聖灰の暗号』なども。さらに、医師の立場でのレポート『ギャンブル依存とたたかう』『やめられない―ギャンブル地獄からの生還』がある。

『“平安の祈り”を求めて』は3月8日に再放送される。

■ 『“平安の祈り”を求めて』再放送予定
NHK-Eテレ 3月8日(土)午後1時~2時
http://www4.nhk.or.jp/kokoro/2/

■ NHK『こころの時代~宗教・人生~』番組サイト
http://www4.nhk.or.jp/kokoro/

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