愛による全面受容と心の癒やしへの道(52) 峯野龍弘牧師

2014年1月31日23時55分 コラムニスト : 峯野龍弘 印刷
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第4章 心病む子供たちの心の傷付くプロセスと諸症状
Ⅱ. 世俗的価値観に支配されている社会からの非受容と抑圧
―親類縁者、幼稚園、学校、職場、地域社会における世俗的価値観の強要と個性の否定―

さて、こうしたプロセスを辿りながらウルトラ良い子たちが徐々に心病み、傷ついて行くのですが、この場合決定的に病める症状が顕著に外的に露呈するのは、いつ頃どのようにしてでしょうか。

それは多くの場合、既に両親の愛の不受容若しくは非受容によって多くの抑圧を溜め込んで来た彼らが、遂に家庭以外の社会から彼らの個性や感性、またその尊厳性や自尊心を決定的に批判されたり、更には否定されるような出来事に遭遇した時、彼らはこの時から一気に病める症状を呈するようになり、異常心理、異常行動を顕著に顕すように至るのです。

しかし、このような同一症状が早くも社会に出る以前に家庭内で起こってしまうケースも、決して少なくはないのです。それは言うまでもなくお分かり頂けると思いますが、この社会から受けるはずの彼らの個性や感性、その尊厳性や自尊心に対する決定的な攻撃、つまり批判や否定を、何と社会に出る前に前倒しにして、強烈なまでに家庭内で両親や同居の親族から浴び掛けられてしまった時、彼らは早くも病んでしまうのです。

何という哀れなことでしょう。しかもそれがウルトラ良い子の感性に馴染まない世俗的価値観の情け容赦なき断罪によって批判されたり、否定されることによってなのですから、誠に悲しいことではありませんか。

しかし、今日このような子供たちが激増しています。あるいは親や社会からの世俗的価値観の強要によって、またその尊い個性や尊厳性を否定されることによって、本来ならば他の子供たちより遥かに献身的に社会貢献できる可能性を豊かに内に宿しているはずの、これらのウルトラ良い子たちを、その両親も家族も、そして社会も国家も、更には世界までが、この宝のような尊い特性や個性を持ったこの子たちを失ってしまっているのです。誠に残念でなりません。

しかし、ここで一つの模範的事例を御紹介しましょう。

今は立派に社会に出て社会貢献しておられる一流企業のA社長さんですが、勿論素敵な奥さんと子供さんたちもおられ、とても家族を大事にしておられます。この社長さんは、実はウルトラ良い子の典型でした。岐阜県の旧家に生まれ、御先祖は徳川幕府時代に功のあった名門で、その家系からは多くの医者や学者や政治家を生み出した家柄でした。それだけに常に世間体を気にし、他人から誹(そし)られるような汚点を残さないことこそ、この家の誉れであって、それゆえよくよく子弟の躾や教育には格別留意し、何と養育係まで配して礼儀作法を教え、勉学に精進させました。

ところがこのA社長さんには五人の兄弟がいて、A氏はその内の真ん中でした。一番上はお姉さんで、あとは皆男の子でしたから彼は次男坊でした。この次男坊のAさんこそウルトラ良い子そのもので、小さい内からしばしば突飛なことをしでかし、周囲の人々を困らせました。何度言って聞かせても、時には厳しく折檻(せっかん)してみても埒(らち)が明きませんでした。頭は極めて聡明で記憶も抜群なのですが、他人から規制されるのが嫌(いや)で、学校に行くのが大嫌いでした。家柄や世間体を気にする周囲の親類縁者からは将来を案じて、やれアスペルガーだとか、どこかに異常があるのではないかとか言って、何かと問題視されました。何とか小学校と中学校は、最低出席日数だけはかろうじて確保し卒業しましたが、とうとう高校には行かず、自分の好きなコンピューターばかりをいじくりまわしていました。

こんな彼を小さい内からじっと見守り続けて来た彼の両親は、一時は非常に悩み誰よりも彼の行く末を心配しましたが、自分の家には厳格な子女教育の家風と伝統があり、人間には個性と特性があり、人間の知恵や力では到底如何(いかん)ともし難い特有の天性があるのだから、この子をいじけさせたり辱めたりしないで、できるだけ他者の干渉からこの子を守り、この子がやりたいことを何でものびのびとやれるように、愛と忍耐をもって見守って行こうと決心したのでした。これをAFCCでは「アガペー(愛)による全面受容」と言いますが、これこそが遂に功を奏し、A氏は独学で英語や数学、物理をマスターし、自力でコンピューターを開発するまでになりました。その内に米国のコンピューター会社から声がかかり研究者となり、遂には今日の一流企業の社長に就任することとなったのです。

これは典型的な「ウルトラ良い子」が、世俗的価値観の抑圧から両親の「アガペーによる全面受容」によって完全に守られ、その卓越した天性を存分発揮することができた最良のモデルの一つでした。(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。

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