
「日本イスラエル・クリスチャン交流会」の発足式が16日、参議院議員会館で開催された。駐日米国大使や駐日イスラエル大使らが出席し、5月からパレスチナ自治区のガザ地区で食料配布を行っている米主導の人道支援団体「ガザ人道財団」(GHF)の活動報告などが行われた。
日本イスラエル・クリスチャン交流会は、「信仰に基づく外交」を掲げる親イスラエルの国際アドボカシー団体「イスラエル同盟財団」(IAF)が、世界62カ国で展開するイスラエル友好議員連盟(Parliamentary Israel Allies Caucus)の日本支部。英語名は Japanese Parliamentary Israel Allies Caucus で、日本では既に存在する「日本イスラエル友好議員連盟」の下部組織として活動する。
クリスチャンの国会議員を中心に、聖書の価値観を土台として、政策課題の解決や国際交流の推進を目的とした活動を行う。一方、参加議員はクリスチャンに限定せず、垣根を越えた交流を目指すとしている。

発足式には、駐日米国大使のジョージ・グラス、駐日イスラエル大使のギラッド・コーヘン両氏の他、イスラエルからIAF会長のジョシュ・ラインスタイン氏が来日して出席。日本の国会議員では、参院議員でグッド・サマリタン・チャーチ牧師の金子道仁、衆院議員の阿部弘樹両氏が出席し、日本のクリスチャン政治家のネットワーク「オリーブの会」監事の五十嵐義隆氏も出席した。
この他、日本会議会長で筑波大学特命教授の谷口智彦、北朝鮮による日本人拉致被害者支援団体「救う会」会長で麗澤大学特任教授の西岡力、ビズテリア・クラブ代表の勝山牧生、ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機構)総主事の近藤高史、東吉住キリスト集会責任者の高原剛一郎、東北中央教会牧師の永井信義、カルバリーチャペル・ロゴス東京牧師の明石清正各氏らが出席した。

グラス氏は冒頭のあいさつで、米国はイスラエルの自衛権への支持を堅持する立場にあることを強調。ガザ地区の貧困と絶望の連鎖の責任は、同地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」にあると語った。
続いてあいさつを述べたコーヘン氏は、日本のクリスチャンは少数ではあるものの、2023年のハマスよる急襲後、イスラエルに対し深い支持を示してくれた人々がいたとして敬意を表明。日本政府に対しても、ハマスに拉致された人質の無条件解放を求め続けていることに感謝を示した。
GHFの活動報告は、6月から会長を務めている福音派指導者のジョニー・ムーア氏が事前収録の映像で行った。ムーア氏は当初、来日する予定だったが、GHFの活動を巡り殺害予告などがあったため、安全上の理由で取りやめたという。収録映像による報告の後には、オンライン会議システム「ZOOM(ズーム)」を通じて質疑に応じた。
ムーア氏は初め、GHFが米政府主導のプロジェクトであることを説明。ドナルド・トランプ米大統領とは就任前から親交があり、GHFが始動したのも第2次トランプ政権下だが、計画自体は現政権以前からのもので、約1年前から具体的な準備が進められていたと話した。

ムーア氏によると、GHFはガザ地区内に4カ所の配給所を設置し、これまでに1億6千万食以上の食料を配布してきたという。ムーア氏は、国連などによるガザ地区に対する食料支援はこれまで、ハマスが略奪したり、権力維持のために利用したりしてきたと指摘。GHFは、こうしたハマスによる影響を排除した形で現地の人々に無償で食料を届けていると強調した。
一方、GHFの活動に対しては、複数の国連機関やNGOが懸念を示している。GHFの配給所付近で銃撃があり、多くの犠牲者が出ているとして、GHFの配給所を「死のわな」とする声もある。
GHFを巡る批判について、ムーア氏は「偽情報あるいは誤情報」に基づくものだとし、「私たちは政治的な目的を持った組織ではなく、軍事的な道具でもありません。目的はガザの人々に食料を与えること」だと語った。米国際開発局(USAID)や国連児童基金(ユニセフ)などで活動してきた人道支援のベテランたちがチームに加わっているとし、「人道性、独立性、公平性、中立性の維持は、私たちにとって譲れないものです。これらは、私たちのシステムに組み込まれており、援助の軍事化はあり得ません」と話した。
また、GHFは国連の活動を否定するものではなく、「むしろ補完するために存在しています。国連と共存して働きたいのです」とも述べた。23年のハマスによるイスラエル急襲以前、ガザ地区には国連主導の配給所が約400カ所あったが、GHFの配給所は4カ所に過ぎず、それらに取って代わるものではないとした。「この問題は一団体が負うには大き過ぎ、GHFや国連だけでは担えません」と言い、各国の協力が必要だとする考えを示した。
ただし、職員にハマスの幹部がいたことなどが報じられている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は「唯一の例外」だとし、否定的な見方を示した。現在は、国連側がGHFの解体を求めていることはないとし、幾つかの国連機関からは、共存について肯定的な姿勢を得られていると報告した。

質疑の後、IAF理事長で元米下院議員のデーブ・ウェルドン氏が映像でメッセージを寄せ、IAF会長で、イスラエルのクネセト・クリスチャン議員連盟(KCAC)の事務局長でもあるラインスタイン氏があいさつを述べた。
ラインスタイン氏は、IAFのネットワークに連なるイスラエル友好議員連盟は現在、6大陸62カ国に及び、参加議員は1500人を超えると説明。聖書的な視点によるイスラエルに対する支持を基に、具体的な政治活動を展開しているとし、こうした「信仰に基づく外交」が、イスラエルにとって非常に大きな力になっていると話した。