西アフリカに位置するベナン共和国は、かつて奴隷貿易の拠点として知られた歴史を持つ国である。旧ダホメ王国を前身とし、1960年にフランスから独立を果たしたが、その後も長らく政治的不安定と経済の低迷に苦しんできた。
現在もベナンは、国際的に「最貧国」の一つに数えられており、その経済の約75%が「地下経済」すなわち非合法もしくは非公式な取引に依存している。この非公式経済は、隣国ナイジェリアとの複雑な関係の中で深く根付いており、腐敗や密輸、人身売買といった深刻な問題を引き起こしている。
特に深刻なのは、児童労働の問題である。一部の報告では、毎年何万人もの子どもがベナンから国外へと密かに連れ出され、劣悪な環境下で労働を強いられているとされる。このような現状に対して、国内外のNGOや教会、宣教団体が声を上げ、正義と人間の尊厳を守るための働きを続けているのだ。
一方で、ベナンの福音宣教は、希望の兆しが見えている。同国は、西アフリカの中でも比較的信教の自由が保障されており、イスラム教徒に対しても比較的開かれた社会環境が存在している。福音派の教会や宣教師たちは、ベナンの地で苦労しながらも福音の種をまき、多くの実を結びつつある。感謝なことに、イスラム教の背景を持つ人々がキリストに心を開き、地域教会が少しずつ成長しているのである。
ベナンの将来にとって、経済的安定や政治的正義の確立も重要であるが、同時に、人間を内側から変えることのできる福音の力が欠かせない。ナイジェリアなど周辺諸国との関係においても、腐敗ではなく神の正義が堅く立つ必要がある。
この国が、歴史の重荷や地政学的な制約を乗り越え、霊的にも社会的にも刷新と祝福を受け取ることができるようになるために、祈りが必要だ。同国のために祈っていただきたい。
■ ベナンの宗教人口
プロテスタント 10・9%
カトリック 21・5%
イスラム 23・5%
土着の宗教 35・9%
儒教 0・9%
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