1980年代以降、ベトナムに139万人いるモン族のうち、たった40年で、およそ3割がキリスト教に改宗した。ところが、モン族の中にキリスト教徒が増えるに従って、ベトナム政府は彼らに対して圧力を強めていったのだ。(第1回から読む)
人権監視団体は、キリスト教徒が地元当局からの脅迫、逮捕、罰金、暴行、財産没収にさらされ、信仰の放棄を強要されていると報告している。多くのモン族は迫害から逃れ、ラオス、タイ、そしてベトナムの他地域に移住した。
近年、国家による宗教弾圧は緩和されつつあるものの、新しい教会が公認されるのは非常に困難だ。キリスト教徒は、大学の奨学金や公務員の職に就くことを拒まれ、依然として深刻な差別を受けている。
モン族はベトナムの民族階層の最下層に位置し、貧困率と教育水準は最も低い。孤立した地理的条件のため、彼らはベトナムの経済成長の恩恵を受けておらず、民族的偏見や文化的誤解のために、政府の開発計画からも除外されている。
しかし、彼らの中のキリスト教徒たちには、宣教団体などのネットワークを通じて機会を得ている者もいる。ハノイとホーチミン市にある複数の聖書学校では、少数民族の学生が最低限の授業料で学び、生活することを認めているのだ。
モン族の学生たちは、神学だけでなく、新しい考え方や生計の立て方など、都会の環境に触れることで多くのことを学んでいる。そして、卒業後はそれを郷里に持ち帰るのだ。教会の指導者たちは、宣教会議を通じて宣教師や宣教団体とネットワークを作り、教会の建設や貧困救済に取り組む者もいる。
1992年に村で最初の改宗者となったバン氏は、今では村の教会の正式な牧師となっている。現在、なんと村人の80%近くがキリスト教徒だという。中国とハノイで長年にわたって神学を学んだ後、バン氏は強力な外部ネットワークを築き、村の長老よりも大きな影響力を持つようになった。
過去数年、バン氏は村人たちを説得し、貧しい田舎町だった村を活気ある観光地へと変貌させる事業に乗り出した。具体的な事業の内容は、例えば、主要道路まで5キロに及ぶコンクリート道路を建設したり、週1回開催の市場をゼロから立ち上げたり、村からゴミを撤去する責任も引き受けた。
そして毎週土曜日には、教会で村の寄り合い集会を開き、村人たちは換金作物の栽培や家畜の飼育について最善の方法を話し合う。広範囲に出かけ、人脈も豊富なバン氏だが、全てのインスピレーションは聖書から得たものだという。(続く)
■ ベトナムの宗教人口
仏教 52・5%
プロテスタント 2・0%
カトリック 7・7%
無神論 23・3%
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