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今年のアカデミー賞のキーワードは「アウトサイダー」? 「ミナリ」「ノマドランド」に見る米国アイデンティティーの力強さ(2)

2021年4月20日16時44分 執筆者 : 青木保憲
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関連タグ:アカデミー賞アメリカ
今年のアカデミー賞のキーワードは「アウトサイダー」? 「ミナリ」「ノマドランド」に見る米国アイデンティティーの力強さ(2)+
映画「ノマドランド」、3月26日(金)全国公開、配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

新型コロナウイルスの影響で、米国の映画館が完全に閉鎖されるという異常な時期を経験した2020年。それでもしぶとく世界最高峰の映画の祭典「アカデミー賞」は開催される。今年も「当確間近」といわれている2作が、他の作品群から頭一つ分ほど抜きんで始めている。現在日本でも公開中であり、どちらかが映画史に名を刻むことを約束された(と評論家から目されている)「ミナリ」と「ノマドランド」を取り上げ、これらをキリスト教的観点からひもといてみたい。前回取り上げた「ミナリ」に続き、今回は後編として「ノマドランド」を取り上げる。

「ノマドランド」(クロエ・ジャオ監督、配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)

「ミナリ」との一騎打ちは間違いないが、日米の評論家に「どっち?」と尋ねるとおそらく「ノマドランド」に軍配が上がるだろうといわれている。それくらい米国の「今」を活写した作品となっている。原作は、ジャーナリストのジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』。「ノマド」とは、「遊牧民」という意味である。前回、聖書から引用したヘブル人への手紙の概念ともこれは合致する。近年、IT機器を用いてオフィスではなく、喫茶店などさまざまな場所で仕事をするワークスタイルを指す言葉としても定着しつつある。

本作の主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、2008年以後のリーマン・ショックで住居を失い、その後夫にも先立たれてしまう。臨時教員の働き口も失い、手元に残ったキャンピングカーに家財道具を詰め込み、日雇いの仕事を求めて全米各地を旅することになる。これが「ノマド=遊牧民」のメタファーと重なることになる。

今年のアカデミー賞のキーワードは「アウトサイダー」? 「ミナリ」「ノマドランド」に見る米国アイデンティティーの力強さ(2)
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

物語の冒頭、彼女はクリスマスソングを歌いながらアマゾンの倉庫へと向かう。年末年始の配達業務は多忙を極め、臨時労働者によって仕事は回っているのだ。季節ごとに再開するノマド仲間との交流を通して、ファーンがさまざまな体験を積み上げていく。その様が半ばドキュメンタリーのような作風で語られていくのである。それもそのはず、劇中でファーンと会話し、共に時間を過ごす(設定となっている)友人たちは、実際にノマドとして生活している人々だったのである! マクドーマンドは本作の撮影前に、彼らと寝食を共にし、ノマドの体験を積み上げていったというから、これも驚きだ。

彼らこそ「アウトサイダー」である。社会からはじき出され、交わりを持つ人々は皆同じような境遇の者ばかり。だが、その精神はアウトサイダーとしての矜持(きょうじ)をしっかりと保っている。劇中、実際にノマドの互助会的サークルを運営している男性が登場し、ノマドの在り方とその将来を語るシーンがある。彼はこんなことを言う。「私たちには『さよなら』がない。死に際に立ち会うこともないだろう。だからこそ、また会えるという希望を持ち続けることができるのだ」。これは米国こそ新天地であると期待し、メイフラワー号乗船にすべてを賭けた人々の心情に一致するものである。キリスト者が抱く「天国での再会」をこの地でも果たせると信じる思い、これにも通じる。

ノマドたちは、経済破綻によってこのような生活を強いられることになってしまった。しかしその精神は「物質的なもの」から解放されることで昇華され、より深く「生きる意味」を探求する旅人となったのである。そしてその姿は、米国建国の祖と目される「ピルグリム・ファーザーズ」の心情、そしてフロンティア開拓が神の意志であると信じ、未知の世界へほろ馬車一つで旅立って行った「西部開拓」時代の人々のそれとも重なるものである。そういった意味で、アウトサイダーでありつつ、マジョリティーのアイデンティティーにも深く刺さる「古くて新しい」心情を体現しているともいえよう。

今年のアカデミー賞のキーワードは「アウトサイダー」? 「ミナリ」「ノマドランド」に見る米国アイデンティティーの力強さ(2)
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

物語の後半で、ノマドをやめ、家族の元へ帰っていく男性の姿が描かれている。それはファーンがかつて営んでいた世界へのカムバックであり、この男性から求愛されたファーンにもそのチャンスが与えられる。しかし彼女はこの誘いを断る。あくまでも「アウトサイダー」としての自分を本来の姿と捉えることにしたのだ。

考えてみると、彼女たち世代は常にアウトサイダーであり得た。若き日にはカウンターカルチャーを体験し、既存のキリスト教的価値観を受け入れることを拒否し、新たな価値(と当時思われていたもの)に傾倒していった。だがそれは1980年代の物質主義の前にいとも簡単に蹴散らされていった。だが2010年代になり、彼らのアウトサイダー精神は、決して死に絶えたわけではないことが明らかになった。単なる既存の価値観への抵抗ではなく、キリスト教的価値観をも包み込んで、名実ともに「アウトサイダー」としての世界観を体現したのだ。その姿が既存の価値観で塗り固められた世界(ハリウッド映画界)でも認められるほどの影響力を持つようになっていることは、誰も否定し得ないだろう。キリスト教的価値観で動いてきた米国が、今後もしかしたら大きく変わることになるかもしれない。その転機がこの作品である、と後世の人々は言うことになるのかもしれない。

第93回アカデミー賞は日本時間の4月26日(月)朝に放送される。果たしてどちらが(またはこれらに代わる作品が)最高の栄誉を手にするのだろうか。どちらが勝っても、コロナ禍で祝われた歴史的な一作となることであろう。そして、米国の米国たるアイデンティティーを見事に表した作品として、人々の心にいつまでも残ることになるだろう。今年のアカデミー賞、やはりキーワードはアウトサイダー! これに尽きると思われる。

■ 映画「ノマドランド」予告編

■ 映画「ノマドランド」公式サイト

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◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:アカデミー賞アメリカ
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