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牧師の小窓

牧師の小窓(139)強盗冤罪事件 福江等

2018年7月8日22時55分 コラムニスト : 福江等
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関連タグ:福江等冤罪

先日、NHKの「逆転人生」というドキュメンタリー番組で、強盗冤罪(えんざい)事件の男性のことが取り上げられていましたが、ご覧になりましたか。あまりのひどさに言葉を失いました。

その事件というのは2012年6月16日、大阪府泉大津市でコンビニ強盗が起こったことに端を発しました。白いレインコートを着た男が犯人ですが、まさかの冤罪被害者となったのは土井佑輔さん27歳。日本の刑事裁判では、被告人が有罪になる確率は99パーセント以上ということですが、土井さんは絶体絶命の奇跡から大逆転を果たしたのでした。

土井さんは今から6年前に逮捕され、何と302日間拘束され、裁判の結果が出るまで2年もかかったのです。そのために土井さんはバンドを組んで歌手になるという将来の夢が壊され、地獄のような日々を余儀なくされたのでした。

狭い取調室で警察が自供を迫る暴言はあまりにもひどいものでした。代わる代わる警察官が大声でどなりちらし、睡眠を取らせず精神的に追い詰めていくのです。そして、うそでも自分がやったと言えば楽になると思って自白する心境にまで徹底的に追い詰められたのです。

誰がそのような脅迫に耐えられるでしょうか。しかし、彼の弁護士が賢明に努力し、彼の家族も支えて、彼にはアリバイがあることを証明しました。しかし、それでも十分ではなく、コンビニのガラス戸に彼の指紋があったことが決定的証拠として挙げられていたのです。

ところが、彼はその事件があった数日前にそのコンビニへ行ったことがあり、その時、何気なくガラス戸に手が触っていたのです。しかも、犯人の指紋は右手であるはずなのに、彼の指紋は左手の指紋だったのです。それが決定的証拠となって、ついに土井さんは無罪を勝ち取ったのでした。

無罪を勝ち取るまでにどれほどの苦悩を通らされたか、そのことを考えると、土井さんが警察と検察を冤罪で逆に訴えたいと考えた気持ちは十分過ぎるほど分かります。それで民事で訴えました。

ところが何と、彼が敗訴したのです。その上、警察も検察も一言の謝罪もないのです。日本の警察も検察も中世の暗黒時代が続いているという批判が出ています。冤罪の犠牲になって人生の夢や仕事、家族までも奪われた人がどれほどいることでしょう。

番組の最後で、土井さんがその後、良き女性と結婚し、子どもも授かり、幸せになっている姿が映し出されていたことが、何よりもの慰めでした。

この世は矛盾に満ちています。ただその中で、キリストを信じて神の永遠に変わらない絶対的な恵みと愛を頂いているという信仰に生きる以外に、この矛盾に満ちた世界で強く正しく明るく生きていく道はないと深く思わされたことでした。

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◇

福江等

福江等

(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001~07年、フィリピンのアジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)、『天のふるさとに近づきつつ―人生・信仰・終活―』(ビリー・グラハム著、訳書)など。

■ 福江等牧師フェイスブックページ
■ 高知加賀野井キリスト教会ホームページ
■ 高知加賀野井キリスト教会フェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:福江等冤罪
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