刑務所伝道シリーズ(23)自分の居場所を探し求めて

2017年10月3日07時03分 記者 : 守田早生里 印刷
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進藤龍也牧師(左)とKさん。少しずつだが、教会のメンバーとも話をするようになった。

「罪人の友」主イエス・キリスト教会(罪友教会、埼玉県川口市、進藤龍也牧師)に異色の若者が集うようになった。マジックが得意なKさん(25)。彼のマジックは、目の前で見ていても仕掛けが分からず、「超能力ではないか」と思わせるほど完成度が高い。Kさんがマジックを始めたきっかけは、「人と話したいから」。彼の人生に何があったのだろうか。Kさんに話を聞いた。

Kさんが生まれ育ったのは四国の香川県。幼い頃から人付き合いがとにかく苦手。小学生の頃は、いつも1人でいたという思い出しか残っていないという。友達がほしいと思っていても、どうしたらよいか分からない。大好きな動物図鑑を見て過ごす時間が唯一の楽しみだった。

中学生になっても、友だちができることはなかった。そればかりか、壮絶ないじめに遭うようになった。仲間はずれにされ、ばい菌扱いもされた。給食に消しゴムのカスを入れられ、しまいには担任の先生までもが自分のことをバカにするようになった。

一方、家庭では、両親は共働き。父親は家庭を顧みず、家に寄り付かなかった。たまに帰ってきたかと思えば、母親に暴力を振るう。ストレスがたまった母親の怒りの矛先は、優等生だった姉ではなく、いつもKさんに向けられた。こんな言葉を浴びせられたこともあったという。

「お姉ちゃんは私の子だけど、あんたは私の子ではない」

Kさんに居場所はなかった。母親が家にいる時は外に出て、公園などで時間をつぶした。母親が仕事などで1日家にいない時は家に戻り、部屋に引きこもった。

定時制の高校に進んだが、学校に対するトラウマはKさんを苦しめた。「先生も、友達も信用できない・・・」。入学して1年もたたないうちに退学。両親の家を離れ、祖父母の家に身を寄せることにした。

高校を退学したKさんは、アルバイトを始めるものの、長続きはしなかった。人と顔を合わせるのは苦痛でたまらなかった。

しかし心の奥底で、中学時代、自分をバカにしていじめた相手への怒りを忘れることはなかった。いつか仕返ししてやる・・・。

卒業アルバムをもとにそれを実行に移すことにした。いじめていた相手の家の壁に落書きをしたり、物を壊したりして、鬱憤(うっぷん)を晴らしたのだ。

Kさんは20歳の時に脅迫および器物損壊の罪で逮捕される。執行猶予3年、懲役1年4カ月の刑が下った。

留置所にいる時に、同室だった受刑者に借りた本の中に見つけたのが、進藤牧師の著書『人はかならず、やり直せる』(中経出版)だった。

留置所を出て、しばらくはマジックバーで働いた。マジックは、小学生の時から大好きだった。Kさんは言う。

「人が驚く顔を見るのは面白い。マジックを自分がやることで、友だちができるかもしれない。コミュニケーションのきっかけになればと思っていた」

執行猶予が明けた今年春、埼玉県にある罪友教会を初めて訪れた。

とにかく今までの自分を変えたかった。それまでは自分が嫌で嫌で仕方なかった。自殺未遂は3回。「自分なんか死んでしまえばいい」。いつもそう思っていた。

進藤牧師の本を読んで、「本当に今までの自分を変えられるなら・・・」と一縷(いちる)の望みをかけて川口市までやって来たのだった。

罪友教会の雰囲気は今までに味わったことのないものだった。

「ここでやり直してみよう」

今までためたお金で川口市内にアパートを借りた。現在は飲食業界で働きながら、休日は教会で奉仕する日々を送る。

「どうしてそんなに自分のことが嫌いだったのですか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「どうしてでしょうね。でも、ずっと小さい時から、母親にかまってもらえない寂しさはどこかにあったように思います。やっぱり寂しかった。教会に来るようになって、まだまだ両親を『赦(ゆる)す』と心から言うことはできないけれど、その努力を今しているところです。教会の人からは、来た当初より顔が明るくなったと言われます。今後は、大きなことはできませんが、ごく平凡な人生が送れたらいいなと思っています」

今年夏、Kさんは埼玉県の名栗川で受洗した。

「悲しむ者は幸いです。その人たちは慰められる」(マタイ5:4)

Kさんの好きな聖句だ。壮絶な過去を生き抜き、やっと光に出会ったKさん。「悲しむ者」から「喜ぶ人」へ変えられるよう祈りたい。

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