Skip to main content
2025年5月12日23時09分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 文化
沈黙(映画)

『沈黙』のキリストは人間の悲しみを理解する 町田市民文学館開館10周年記念講演会

2017年3月23日12時01分
  • ツイート
印刷
関連タグ:沈黙(小説)沈黙(映画)遠藤周作
『沈黙』のキリストは人間の悲しみを理解する 町田市民文学館開館10周年記念講演会+
1971年に公開された篠田正浩監督作品「沈黙」のパンフレットに遠藤が寄せた「わが孫、映画『沈黙』」の直筆原稿=12日、町田市民文学館(東京都町田市)で

映画「沈黙」が1月下旬に公開され、多くの人々を魅了した。この作品の原作者、遠藤周作は1963年から24年間、東京都町田市に住み、96年に亡くなると、遺族は同市に多くの遺品、蔵書を寄贈。このことがきっかけとなり、2006年、町田市民文学館ことばらんどがオープンした。

同館では開館10周年を記念して12日、遠藤の弟子で作家の加藤宗哉氏による講演会「いま読みなおす『沈黙』」が開催された。加藤氏は慶應義塾大学在学中に同大ゆかりの文芸雑誌「三田文学」に参加し、遠藤に師事。1997年から2013年まで同誌の編集長も務めた。

講演の冒頭、加藤氏はこのように話した。

「映画『沈黙』を観て、遠藤先生にも観てもらいたいと痛切に思った。スコセッシ監督は、原作者の意図をほぼすべてくみ取ってくれたと思う。スコセッシ監督と遠藤先生の魂が同一、仲間、兄弟のような・・・そんな感覚さえ覚えた。きっと遠藤先生も喜んでいるに違いない」

『沈黙』を発表して数十年経ったころ、遠藤は同作の舞台となった長崎を旅した。その後、インタビューの中で、「私はこの作品を書くのに2つの間違いを犯した」と述べたという。

まず、タイトルを『沈黙』にしたこと。当初、遠藤は「日向の匂い」といった全く違うタイトルを付けていたが、出版元の新潮社の編集者からこの「沈黙」を打診され、承諾したという。「『沈黙』というタイトルによって、この小説があたかも『神の沈黙』であるかのような印象を読者に与えることになってしまった。もし私がまたこの小説を書いたとしても、絶対に『沈黙』とは付けないだろう」

2つ目は、この小説の巻末部分。物語が終わると、「切支丹屋敷役人日記」という文章が続くが、あまりにも古めかしい資料のような文章のため、多くの読者はここで読むのをやめるのだという。しかしこの部分に、1度転んだロドリゴのその後などが詳しく書かれている。ロドリゴは信仰を捨ててはいなかったのだ。遠藤は「あの日記の部分も小説に入れ込むべきだった」と述べたという。ちなみに、スコセッシ監督は映画でその最後の箇所まで表現している。

『沈黙』のキリストは人間の悲しみを理解する 町田市民文学館開館10周年記念講演会
講演をする加藤宗哉氏

同作は66年の単行本刊行時、約70万部を売り上げ、大ヒット作となったが、今もなお売れ続け、今年、文庫の発行部数が累計200万部を突破した。なぜ、「信仰」や「神」をテーマにしたこの作品が広く日本人読者の心をつかんだのだろうか。

当時の新聞は、「学生運動に挫折した人々がこの小説に共感し、多くの読者となった」と書いたが、加藤氏は次のように見ている。「これは暗くつらい話だが、それは『人間の悲しみ』とも言える。ロドリゴの悲しみ、何度も裏切りを繰り返すキチジローの悲しみもまた、人の心をつかむ要素だったのではないだろうか」

実は「悲しみ」は遠藤の大きなテーマの1つ。遠藤は晩年、大病を患い、特に『深い河』を書き上げてからの生活は、言葉も話さない、笑うこともないというつらいものだった。後に長男、龍之介氏は、「この頃の父親の顔は、まるであの人のような顔だった」と話したという。「あの人」とは、踏み絵の中のキリストである。

そのような中、見舞いに訪れた加藤氏に遠藤は次のように心情を吐露する。「俺が勉強ばかりしてきたことは、お前も知ってるよな。俺は『人間の悲しみ』が書きたいんだよ。まだ書きたいんだ」。これを聞いて加藤氏は胸を突かれたという。

『沈黙』に登場する人物は、ロドリゴやキチジローだけでなく、皆、悲しみを抱えている。そうした悲しみへの共感が遠藤文学の中にはあって、読者はその部分に感動を覚えるのではないかと加藤氏は分析する。

『沈黙』のキリストは人間の悲しみを理解する 町田市民文学館開館10周年記念講演会
遠藤が『沈黙』を書いた机=12日、町田市民文学館で

「遠藤周作を一言で表現するなら、『真面目な人』。一方で、それだけでは相手を苦しくさせることもよく知っていたので、おどけるようなサービス精神も持ち合わせていた」

狐狸庵先生としてのユーモアエッセイやさまざまなタイプの作品を書き続けてきた遠藤だが、『沈黙』や『深い河』などの書き下ろし長編こそ自分の本職だったと自己分析している。そのどれもが非常に暗くて、真面目で、悲しみを題材にしたものだった。マスコミなどではおどけた一面が取り上げられることも多かったが、本質は真面目で悲しみを背負った人だったのだ。

最後に加藤氏は、『沈黙』の大きなテーマとして、「弱い者の強さ」と「弱い者を包み込む母のような神の存在」について話した。

遠藤は母親に大きなコンプレックスを持っていた。小説家としてデビューしたのは、母親が亡くなって2年後。何の親孝行もできないままだったと、生涯悔いていたという。その遠藤が初めて母の愛と神の愛を重ねて描いたのが『沈黙』だった。加藤氏によると、『沈黙』以降、このような傾向は徐々に強くなる。遠藤にとって母なる愛を持つキリストは、弱い者を抱きしめ、赦(ゆる)してくれる存在だったのだ。

西洋から伝わったキリスト教を日本人である自分が信仰することを「だぶだぶの洋服を和服に仕立て直す作業」と表現し、生涯、それを問い続けた遠藤周作。没後21年経った今年、日本で生まれた『沈黙』が、西洋人であるマーティン・スコセッシによって映画化された。小さな和服が世界に向けて仕立て直されたのを観て、遠藤は照れ隠しにおどけながらも、何と語っただろうか。

関連タグ:沈黙(小説)沈黙(映画)遠藤周作
  • ツイート

関連記事

  • 映画「沈黙」 ロドリゴ神父の実在モデルとなったキアラ神父の信仰

  • 在日外国人や若者が見た「沈黙」 「沈黙―サイレンス」映画deディスカッション

  • 映画「沈黙」はノンクリスチャンにとってどんな意味を持つのか

  • 映画「沈黙」はクリスチャンにとってどんな意味を持つのか

  • 牧師の小窓(54)遠藤周作 福江等

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 21世紀の神学(27)プロテスタント教会側から見るローマ教皇 山崎純二

  • 主キリストの最大限の恵み 万代栄嗣

  • 四半世紀ぶりに欧州で大規模伝道会議、今月末にベルリンで 牧師ら約千人が参加

  • シリア語の世界(23)辞書3・ヨハネ黙示録の賛美歌6―11章17節― 川口一彦

  • 新教皇を選ぶコンクラーベ、いつ、何回目の投票で決まる? 181日間に及んだケースも

  • ワールドミッションレポート(5月11日):フィリピン 実を結ぶ価値観教育ミニストリー

  • ヨハネの黙示録(2)主は雲に乗って来られる 岡田昌弘

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(5)「苦しみ」の構図 三谷和司

  • 新教皇を選ぶコンクラーベ、いつ、何回目の投票で決まる? 181日間に及んだケースも

  • 次期ローマ教皇の有力候補4人

  • 聖墳墓教会の床下発掘調査で貴重な発見、ヨハネ福音書の記述を裏付ける証拠に

  • 新ローマ教皇にプレボスト枢機卿、教皇名は「レオ14世」 初の米国出身者

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(5)「苦しみ」の構図 三谷和司

  • 四半世紀ぶりに欧州で大規模伝道会議、今月末にベルリンで 牧師ら約千人が参加

  • 自分を愛する生き方 菅野直基

  • 21世紀の神学(27)プロテスタント教会側から見るローマ教皇 山崎純二

  • ローマ教皇フランシスコの死去に対する日本国内の他教派の反応

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 新教皇を選ぶコンクラーベ、いつ、何回目の投票で決まる? 181日間に及んだケースも

  • 次期ローマ教皇の有力候補4人

  • 新ローマ教皇にプレボスト枢機卿、教皇名は「レオ14世」 初の米国出身者

  • ローマ教皇フランシスコの死去に対する日本国内の他教派の反応

  • 聖墳墓教会の床下発掘調査で貴重な発見、ヨハネ福音書の記述を裏付ける証拠に

  • フランスのカトリック教会、復活祭に成人1万人以上が受洗 昨年比45%増

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(5)「苦しみ」の構図 三谷和司

  • 米ジョージア州で「信教の自由回復法」成立、全米30番目の州に 9年前には不成立

編集部のおすすめ

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 後藤健二さん没後10年、追悼イベントで長女が映像メッセージ 「誇りに思っている」

  • ロシアの軍事侵攻から3年、在日ウクライナ正教会が祈りの集会 片脚失った負傷兵も参加

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.