牧師の小窓(11) 福江等

2016年1月17日07時23分 コラムニスト : 福江等 印刷
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フィリピンの北の島をルソン島と言いますが、その北部の山間部にフィリピンの夏の首都と言われるバギオという都市があります。そこは緯度が高いので一年中気候も快適で、寒いときは霜が降りることもあります。バギオといえばバギオ野菜というほど、そこの地方で採れる野菜は新鮮でおいしいという評判が定着しています。バギオ野菜はマニラなどの首都圏に大量に売り出されていて、バギオの経済はそれによるところが大きいようです。

もともとバギオ野菜がどうして始まったかという興味深い話があります。これは史実に即しているようです。

第二次世界大戦が終結したとき、フィリピンで戦っていた日本兵の多くはルソン島の北部に逃れ、山奥深く入り込んでひっそりと隠れて生活していたのだそうです。出てくると、反日感情が激しい当時のことですから、命を失う危険がありました。それで隠遁生活を余儀なくされました。

牧師の小窓(11) 福江等
バギオ市のあるベンゲット州出身の神学生、民族衣装を身に付けて賛美しています。(2004年ごろ)

1970年のこと、フィリピンで働いていた日本人のカトリックのシスター海野という方が、それを聞いて山奥の旧日本兵を訪ね歩いて行ったのでした。一軒一軒訪ねてみると、それらの日本人はひどい貧困生活をしていたのでした。食べるのにも困り果てていたようです。

それを知ったシスター海野は、なんとかしなくてはと考えて、日本から野菜の種をたくさん持ってきて、その人たちに野菜を作ることを勧めたのだそうです。バギオは気候が温暖ですから、日本で育つ野菜はほとんどそこでも育つことが分かったのです。

その時から日本人が野菜をたくさん育てるようになり、それをバギオの市場に卸すようになっていきました。すると、その野菜の品質の良さに評判が広がっていき、市場も拡大し、バギオ野菜としてしっかり定着したのでした。そのことで旧日本兵の生活も向上し、やがてバギオの街を立派な町にするのに日本人が活躍するようになったようです。

一人の女性がなされた小さな愛のわざが、数十年後に計り知れない影響を社会にもたらしたことを証しする実例です。「愛の小さきわざ」に私たちも目を留めていきたいものです。

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福江等

福江等(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001年(フィリピン)アジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)など。

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